帰宅したハルトくんが、言った。
今週、飲み会があると。
平日、1人でサキタの相手をするのは、正直しんどい。
1分1秒でもイイから、ハルトくんには帰宅して手伝って欲しい。
いや、何もしてくれなくてもイイから、私が頑張れるように、そばにいて欲しい。
泣き止まないサキタに不安になっても、1人でそれと闘わなければならないのは、ツライのだ。
しかし最近のハルトくんは、仕事が急に忙しくなってしまい、帰宅が0時を過ぎることが増えた。
そこまでいかない日にしても、決して早い時間とは言えない帰宅時間だ。
で、飲み会だと?
訪問先のお客様との飲み。
上司と参加予定の接待。
同期が「出産祝いに」と企画してくれた飲み会。
今週、この3つがあるのだという。
お客様との飲みや、接待は仕事なのだ、仕方ナイと思う。
けれど、最後の飲み会は何だ。
企画してくれた同期は、結婚しておらず、当然子供もいない。
そのお祝いの仕方は、間違っていると思うのだけど!
ちょっと考えて欲しいのだけど!
何度も会ったことのある人で、本当に好意でそうしてくれているのはわかるけど、誰かそのお祝いの方向が間違っていることを指摘してくれる人はイナイのか!
そこで、暴言を吐いてしまった。
「馬鹿じゃナイの!?」
ハルトくんは、やりきれない表情で「そんな風に言うなよ。好意で言ってくれてるんだから」と呟いて、着替えるために部屋を出て行った。
食事を済ませ、お風呂も済んで、さあサキタの様子を見ながら寝るとしようか、という時間。
ダイニングでお茶を飲みながら、うなだれているハルトくんがいた。
さっきの暴言を反省していた私は、そばによって謝った。
「ヒドイことを言って、ごめんね。付き合いもあるのに」
ハルトくんは顔を伏せたまま、私を責めずにポツリと言った。
「これでも、結構(飲みを)断ってるんだよ…。(職場での)居場所が、なくなっちゃう…」
私だって、つい最近まで社会人をやっていた。
ハルトくんの職場と違って、そう飲み会は多くなかったけれど。
それでも、付き合いも必要だということはわかってる。
まして、ハルトくんの会社では、「仕事帰りにちょっと1杯♪」というのが結構あるのだ。
ハルトくんは、無責任に私とサキタを放り出して飲んだくれる人じゃナイ。
サキタの夜中の授乳にも、おむつ替えにも協力してくれる。
私が育児に振り回されているのをきちんとわかった上で、話を聞いてくれたり、家事を手伝ってくれたりする。
仕事が忙しくて疲れているだろうに、よくやってくれる。
そんなこと、よくわかってるくせに、暴言を吐いた。
ごめんなさい。
ママとしても、奥さんとしても、まだまだ成長しなければならない私だった。