紋やのつぶやき

職人?たる上絵師のグチリ・知られざる失敗談・紋のウンチクを気の赴くまま語ろうと思いますが、どうなりますやら?

「貼り紋」 新たな方法

2009年04月11日 21時22分57秒 | 
貼り紋、又は張り紋・江戸付けは、本来紋付の着物が古くなって生地が弱くなり、「紋洗い」「紋替」が出来なくなった場合に施す「紋入れ」の方法です。

  「張り紋」  

近年接着の技術が発展し、両面テープが登場するようになって、それを白生地に貼って紋を描き、切り取って着物に貼るようになりました。
この方法は、緊急に紋が必要な場合とか貸衣装に貼る時には非常に便利です。又手軽に作る事が出来るので、この方法で一般的な紋付にも使って来ました。

しかし難点もありました。
水・溶剤に弱く、汗を沢山かいたり丸洗いに出されると、その張り紋は取れます。
昔の方法での貼り紋は、洗い張りにでも出さない限り取れる心配はなかった。
一応お客様にはこの難点は説明しているのですが、不完全な方法での貼り紋をして来た事に恥じ入るばかりです。

最近切絵作家の「路鬼」さんから貼り紋の注文を受けました。

  路鬼さんのHP 

接着剤は先方で付けるので、生地に紋だけ描いて送ってほしいとの事。それと同時に、接着剤の種類を教えて頂き、更にサンプルも送って頂きました。フィルム状、繊維状・・・と加熱して接着する方法です。このなかで「裾上げテープ」を採用してみました。
こんな接着方法もあるのか、と改めて自分の勉強不足、視野の狭さを感じる次第です(汗)


黒留袖の貼り紋が来ましたので、早速試しに作ってみました。

用意するのは、ガラス板(これは年代物です)、生地、はけと糊。和紙の薄紙もありますが、これは後の段階で剥がれる危険性があるので使いませんでした。
  

  
ガラス板に溶いた糊を刷毛で伸ばしながら刷り込んでいきます。

  
乾いてからガラス板からはがします(この時は薄和紙を使っていました)

ここまでは昔からの「貼り紋」製作の方法です。

  
生地に「澤潟」紋をプリント。
 
  
裏から仮止めにスプレー糊を吹きつけて、「裾上げテープ」を貼り付けます。

  
澤潟紋の形に切り抜きます。これで貼り紋は完成。

  
黒留袖にも澤潟紋が付いていますが、汚れているのでこの上に貼り紋をします。

  
元紋が透けないように軽く黒をかけます。

  
貼り紋を貼りましたが、切り込みの部分が白く残っています。この部分を縁くくり(墨の糊っ気を少なくしたような物)で塗りつぶして完成です。

  

「路鬼」さんに感謝・感謝!!!!