この墓石の紋は今まで投稿してきた「丸に頭合せ三つ松」の紋入れの、最初に来た見本の写真です。松の左右に枝(荒枝ーあらし)付いているのが「丸に頭合せ三つ松」との大きな違いですが、私共紋やにとって頭を痛めるのは、<松の中の線の数>です。(見本は結局これでなく、先の刺繍額の紋になりました)
普通松の中に入る線の数は片側だけで7~8本(前ページの松を参考にしてください)ですが、見本の墓石の紋は4本しか入っていません。この通りに紋を描くと、線(しべ)と線との間隔が空いて見栄えが悪くなり、間延びしてしまいます。
墓石に紋を彫るのは大変な仕事です。今は型を置いて圧搾空気か何かではつって紋を彫ります。昔の手彫りと比べると精巧に彫れる様になりましたが、墓石屋に聞いても「細かい柄は彫れなく、数を略して彫る」と言っています。ましてや手彫りの方法では何をか言わんやです。
精巧な墓石の見本だといいんですが、この様な又下に紹介する様な<略した墓石の見本>を持ちこんで、「これがうちの紋でこの通りの紋を入れてくれ」と言われても、私共紋やにとって、紋の形を知っているだけに困ってしまいます。
その時は、見本と似たような紋を紋帖から捜して、「この形の紋が正式な紋です」と、お客さん又は呉服屋さんを説得する訳です。紋帖にない場合は、今まで私が作ってきた紋の中で似た様な紋を見せます。時には頑固な人がいて、その通りに紋を入れた事もあります。(私共紋やにとって不完全な紋でも、ひょっとしてその紋が代々伝えられて来たかも知れない)
上が多分手彫りの紋。下が最近のはつりの紋です。両方とも「丸に日の丸7本骨扇」です。同じ墓地にありました(他にも同じ様な紋が多くありました)
上がうちの代々の墓石の紋で、下が今の墓石の紋です。これは私が紋の版下を持ち込んで彫ってもらった物です。
現在、墓石の紋は殆ど紋帖を題材にして彫っていますので、結構正確に彫られていますが、前に書きました様に<細かい所は略す場合がある>と云う事を忘れないで欲しいと思う次第です。
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