猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

キュア~禁断の隔離病棟~

2020-12-12 22:11:00 | 日記
2016年のアメリカ・ドイツ合作映画「キュア~禁断の隔離病棟~」。

ウォールストリートの金融会社で働くロックハート(デイン・デハーン)は、社長の
ペンブローク(ハリー・グローナー)がスイスの療養所に行ったまま帰ってこないた
め、連れ戻すよう命じられる。現地に到着した彼はすぐに社長との面会を求めるが、
面会時間が過ぎているらしく会わせてもらえない。仕方なく一旦ホテルに戻ること
にしたロックハートは、その途中で事故に遭って大ケガを負い、療養所に運び込ま
れる。しかし治療を受ける中で彼はこの施設や院長のヴォルマー医師(ジェイソン
・アイザックス)に不信感を抱き始める。

ゴア・ヴァービンスキー監督によるサスペンス・ホラー。何だか変わった映画だっ
た。ウォールストリートの金融会社で働くロックハートは若いがエリートで野心家。
彼はアルプスの療養所に出かけたまま戻らない社長を連れ戻すよう会社から命じら
れる。道中、彼はタクシーの運転手から療養所についての話を聞く。その昔、療養
所が建っていた場所には館があり、血を絶やさぬため、村人たちを使って実験をし
ていた男爵が村人の怒りを買い、妹と共に館ごと燃やされてしまったという話だっ
た。その後療養所から社長との面会を断られたため、ホテルへ帰って出直すことに
したロックハートだったが、途中で事故に遭い、目を覚ますと、療養所のベッドに
横たわっていた。
脚を骨折したロックハートは療養所に留まることを余儀なくされるが、この施設何
だか変な雰囲気なのだ。普通の病院とは違う、変わった治療をされる。社長には会
うことができたロックハートだが、社長は帰る気はないなどと言う。広くてきれい
な庭があり、患者たちは皆楽しそうだ。ロックハートは松葉杖をつきながら散歩を
していると、ハンナ(ミア・ゴス)という謎めいた少女に出会う。ハンナは患者だが、
他の患者のような病院衣ではなく白いワンピースを着ていた。そして「私は特別な
の」と言うが、ロックハートには意味がわからない。
時間が146分と長くて、前半はちょっと退屈する。デイン・デハーンの演技がうま
いので次第に惹き込まれていくが、もう少し短くしても良かったのではと思った。
療養所では実験のために鰻を使っていて、大量の鰻が出てくるのが印象的だ。とに
かく鰻、鰻、鰻。何故鰻なのだろう。ロックハートは施設内をうろつくうちにおか
しな光景を目にするようになるが、それが幻覚なのか現実なのかわからない。医師
たちも皆様子が変だし、社長も変だし、ロックハートは精神的に追い詰められてい
く。
ロックハートの神経がまいっていく様子はうまく描かれていて、デイン・デハーン
は本当に熱演だった。グロテスクなシーンもあるが、奇妙な世界に連れて行かれる
感じで見応えがあったが、おもしろかったかというと微妙である。ヴォルマー院長
やハンナの正体は意外さがあったが、ホラー要素を入れずにサスペンス映画として
作った方がおもしろかったのでは、と思った。デイン・デハーン(グレーの瞳が印
象的)の演技がいいので観られたという感じ。ラストでロックハートが何故笑った
のかもよくわからなかったし、やっぱりちょっと変な映画だった。


良かったらこちらもどうぞ。ゴア・ヴァービンスキー監督作品です。
ローン・レンジャー


キム・ギドク監督が12月11日、新型コロナウイルス感染症でラトビアで亡くなっ
たと知って大変驚きました。外国に行って感染して亡くなるなんて…ショックです。
嘆きのピエタ」を観て、こんなすごい映画を作る人がいるんだ、と衝撃を受け、
その後キム監督の映画は何作か観ました。今年映画館で観た「人間の時間」が遺作
になったのでしょうか。もっと彼の映画を観たかった。ご冥福をお祈りします。




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ビタルとアリックス

2020-12-08 22:26:01 | 日記
2015年のフランス映画「ビタルとアリックス」。

田舎の繊維工場に勤めるビタル(オリヴィエ・ルスト-)は妻と娘と暮らして
いるが、妻との仲は冷え切っていた。社会人ラグビーチームに所属しており
キャプテンでもあるビタルだが、ラグビーリーグで準決勝に進出が決まり、
会社の皆はバレッティ社長(パトリック・デカン)からお祝いの言葉をもらう。
そんな時バレッティ社長は労働条件の改善のため、人間工学が専門のアリッ
クス(クリスタ・テレ)を呼び入れる。アリックスはビタルに協力を求めるが、
26歳で美人のアリックスの協力をすることになったビタルを皆は羨む。と
ころがある日アリックスが社長の娘だとわかり、ビタルも他の社員たちも彼
女をスパイではないかと考え怒るが、文句を言いに行ったビタルに対してア
リックスは、自分は真摯に仕事をしているだけだと答え、アリックスの優秀
さを理解したビタルは彼女を認める。そして一緒に仕事をするうち、ビタル
とアリックスは恋に落ちていくが、2人の関係は職場に不協和音をもたらし
てしまう。

中年の既婚男性と若い女性の不倫の映画だが、それ程おもしろくはなかった。
ビタルは毎朝バイクに娘を乗せて小学校へ送っている。彼は娘を愛している
が、妻との仲は冷え切っていた。勤務先の工場の社員たちと社会人ラグビー
チームに所属しており、仕事はそれなりに充実していた。ある日社長が労働
条件の改善のため人間工学の専門家を呼ぶが、それはアリックスというまだ
若い女性だった。社員たちの関心はアリックスに集まるが、彼女は自分の仕
事の協力者としてビタルを選ぶ。その後彼女が社長の娘だとわかり、社員た
ちは彼女をスパイではないかと考える。ビタルはアリックスに「クビにする
気か」と怒りをぶつけるが、誤解は解け、2人は次第に惹かれ合うようにな
る。
ビタルは妻と不仲なので、不倫をしても非難しようとは思わないが、かとい
って応援する気にもなれない。ビタル役とアリックス役の俳優に魅力を感じ
られないのだ。アリックスは物語の中で美人扱いされていたが私はそうは思
わなかったし。だから何だか共感が持てない。やがて「もう夫婦関係は終わ
った」と判断したビタルは荷物をまとめて家を出ていく。妻は「後戻りはで
きないのよ」と言うが、ビタルは答えなかった。
ラグビーのシーンが多くてちょっと退屈した。おじさんたちのラグビーの試
合を家族が応援しにきていて、盛り上がっている。田舎ってこんな感じなん
だなと思った。やがてビタルとアリックスの不倫関係はビタルの妻の知ると
ころとなるが、それは工場の社員たちがそれぞれの妻に話し、それを妻たち
がビタルの妻に話したからだった。余計なことをするなあ。ビタルは不倫に
よる妻子遺棄で妻から訴えられてしまう。更にアリックスは近々仕事でカナ
ダへ行くことが決まっていたのだ。「後から追いかける」と言うビタルにア
リックスは「来ないでしょ」と言う。
ビタルの娘(9~10歳くらい)が、ビタルに「パパ離婚するの?」とか「愛人
のとこに行くの?」などと普通に聞くのがおかしかった。いかにもフランス
の子供という感じだ。ビタルもアリックスも真剣に愛し合っているので、ま
あいいのだろう、と思った。ラストシーンの後が気になる映画だった。もう
1つ気になることが。「アリックス」なの?「アレックス」ではないの?細
かいことだが気になった。




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眺望良好

2020-12-03 22:26:54 | 日記
2019年の香港映画「眺望良好」。

ロー・ワイ・マン(フランシス・ン)は海が眺望できるアパートを購入し、妻サク・
イン(アニタ・ユン)と息子、娘、父親の5人家族で暮らしている。アパートのロー
ンはあと20年残っており、一家は倹約生活に勤しんでいる。しかしアパートの住
人は変な人たちばかりで悩まされている。上階の住人は肉加工業者で、毎晩豚肉
を細切れにする包丁の音が大きく響いてきてうるさい。階下の住人はヘビースモ
ーカーで、いつもベランダでタバコを吸うので煙たい。隣人は家賃を滞納し、役
所から執行官が退去を求めて訪れるが自殺騒ぎを起こす。また別の隣人は大音量
で音楽を流す。こんな環境に一家はうんざりしているが、夜に窓から見える美し
い海の風景で心を癒されていた。ところがある日突然、向かいのビルの屋上に巨
大な広告看板が設置され、夜景が見えなくなってしまう。一家は看板を設置した
男ウォン(ルイス・クー)に違法建造物であると抗議に行くが、ウォンに芸術だと
言われ相手にされない。困ったワイ・マンは政府の民事局に勤める友人チェン(
アンソニー・ウォン)に相談する。

香港の住宅事情を題材にしたブラック・コメディ。笑って泣ける(?)おもしろい
映画だった。香港の住宅事情は日本に似ているようで、国土が狭いのに人口が多
いため住宅が狭く、ひしめき合っている。主人公のワイ・マンのアパートは3LD
Kだと推測されるが、家族5人で住むには狭すぎる。それにこの家、すごく物が多
いのだ。私は家にあまり物を置かない方なので、ああいうゴチャゴチャした家を
見ると「何を置いているの?」と思ってしまう。それに香港は物価がとても高い
らしく、日本より環境は厳しいのかもしれない。
ワイ・マンのアパートの住人たちもヘンテコな人たちばかり。特に上階の肉加工
業者(すごいデブ)は毎晩のように豚肉をミンチにしていて、大きな中華包丁でま
な板を叩く音がとても響くのだ。サク・インは何度も苦情を言いに行っているが、
「俺は機械じゃなく包丁でミンチにするのが好きなんだ」と取り合ってもらえな
い。肉の種類は色々あるだろうに、何故いつも豚肉のミンチなのかが笑える。そ
してワイ・マン一家の心の安らぎだった海の夜景が、ある日突然巨大な看板によ
って塞がれてしまったのでさあ大変。ワイ・マンは看板を立てた男ウォンに抗議
に行ったり役所に相談に行ったりと奔走するがどうにもならない。一家の神経は
追い詰められていく。
キャストがフランシス・ン、アニタ・ユン、ルイス・クー、アンソニー・ウォン
とスター揃い。アニタ・ユンは年をとってもかわいい。フランシス・ンとアニタ
・ユンのやり取りは笑える。香港映画を観ているとよく思うのだが、登場人物た
ちのテンションがとても高い。あれは映画上の演出なのか、それとも香港の人は
本当にあんなに普段からテンションが高いのだろうか。画面から人々の熱気が伝
わってくるようだ。
物語は終盤意外な方向へ向かう。まさかあんな展開になろうとは…。ある意味と
ても怖い結末なのだが、ワイ・マン一家が満足しているのならバッド・エンドで
はないのだろう。キャラクターが皆おもしろかった。あー広東語を聞くと安心す
るなあ。




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