猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

午前4時にパリの夜は明ける

2023-05-14 19:50:09 | 日記
2022年のフランス映画「午前4時にパリの夜は明ける」を観に行った。

1981年、パリの街はミッテラン大統領の誕生で祝賀ムードに包まれ、
希望と変革の雰囲気に沸いていた。そんな中、エリザベート(シャルロ
ット・ゲンズブール)は夫と離婚し、大学生の娘ジュディット(メーガン
・ノータム)と高校生の息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)を
1人で養うことに。深夜放送のラジオ番組の受付の仕事に就いたエリザ
ベートは、そこで出会った家出少女のタルラ(ノエ・アビタ)を自宅へ招
き入れる。そしてタルラとの交流を通して、エリザベートや子供たちの
心は徐々に変化していく。

ミカエル・アース監督による1980年代のパリを舞台にした人間ドラマ。
エリザベートは夫が不倫をして家を出ていき、離婚することになった。
1人で2人の子供を育てなければならなくなったが、ずっと専業主婦で
ほとんど働いた経験のない彼女は仕事を見つけても失敗ばかりですぐに
解雇されてしまった。やがて彼女はヴァンダ(エマニュエル・べアール)
という人気DJの深夜ラジオ番組の仕事に就くことになった。それはリ
スナー参加型の番組で、その電話の受付をすることになったのだ。エリ
ザベートはヴァンダに気に入られ、仕事は順調にできるようになる。
エリザベートの大学生の娘・ジュディットは政治に関心があり、デモに
参加したりしており、高校生の息子・マチアスはちょっと反抗的だ。そ
れでも母子は仲が良く、絆は強かった。エリザベートの父親が娘に「養
育費はもらえないのか?」「私が援助するよ」と語りかけるシーンはい
い。年老いた父親に迷惑はかけられないと思いながらも、そう言われて
嬉しいエリザベートは泣く。最初の方はエリザベートが泣くシーンが多
い。彼女は決して強い女ではなく、夫の不倫と離婚に傷つき、困惑して
いる普通の女性なのだ。シャルロット・ゲンズブールのささやくような
声がエリザベートのキャラクターに合っていると思った。
ある日エリザベートはラジオ番組で家出少女のタルラと出会い、外で寝
泊まりしているというタルラを寒空の下に放っておけず、アパートに連
れて帰り、上の階の小部屋に泊まらせる。ジュディットとマチアスはい
きなりやって来たタルラに驚くも、すぐに仲良くなる。やがてマチアス
にとってタルラは気になる存在になる。エリザベートは昼間に図書館の
パートの仕事を見つけ、そこで出会った男性と恋愛関係になる。夫の不
倫と離婚で落ち込んでいたのにすぐに次の相手を見つける辺り、フラン
ス人だなあ、と思う。
タルラは数年エリザベートのアパートで暮らすが、ある日突然姿を消す。
そしてその後また戻ってくる。まるで野良猫のようだ。それでもエリザ
ベートたちはタルラを温かく迎え入れる。しかしタルラの腕に注射の跡
を見つけたエリザベートは、「今度あれを手にしたり使ったりしたら、
叩き出す」と厳しく叱る。「私には普通の人生は無理」と言って泣くタ
ルラにエリザベートは優しく寄り添う。自分の境遇を悲観していたエリ
ザベートだったが、タルラとの出会いや子供たちの成長や、新しい恋人
との出会いや引っ越しなどによってこれまでの自分を見つめなおしてい
く。その過程が繊細に描かれていて感動的だ。1歩ずつ前へと進んでい
くエリザベートの姿がとてもいい。フランス映画らしい映画だった。久
しぶりに見たエマニュエル・べアールが年をとって太っていてびっくり
した。




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コメント (2)
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