ぶつぶつ地蔵

地蔵 呟く ひーの言葉を。ぶつぶつと…。

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春を告げる花を生み出す人たち

2017-02-01 14:28:23 | 奈良
薬師寺を好きでたまらない私ですが、中でも花会式の造花は、一度は間近で拝見致したい憧れの存在です。
もちろん、その花を生み出す人たちへの尊敬と羨望たるや。。。

そんなオイラに朗報が舞い込んだのである。

都跡公民館主催の「都跡で望む山焼き~薬師寺花会式のおはなし・しあわせの花造り~」という講座。
薬師寺で青年衆をされている方が、ネットで教えてくれたのです。
速攻申し込み致しました♪


薬師寺から松久保執事がお出で下さり、花会式とはなんであるか。どういった祈りが込められているのか。などのお話をしてくださいました。
薬師寺さんの法話で聞いたことのある話も含まれてましたが、オイラが一番印象に残ったのは、修二会という仏教で最も重要な法要の中に、神道の祈りが内包しているということ。
それだけ日本人にとって、神道と仏教というものが混ざり合い切っても切れない関係であったこと、今も有り続けていることの大切さを解かれていました。
そしてお寺だけでは燃えてなくなってしまっていたものも、地元方が守ってくれたからこそ今日に残されている、、そういった地元との繋がりも、祈りを継承し続けるのに非常に強い力であると。

時代とともにお寺や地域のあり方が変化しても、祈りの本質は変わらない。
「元気に新しい一年を過ごせますように」
これを願い、前の一年に犯した罪を私たちに代わり悔過してくれているのが修二会なのであります。


松久保執事のお話の次に、お待ちかねの薬師寺の修二会「花会式」の造花を作っていらっしゃる、橋本家と増田家のお話なのです。

両家のお話の進行役には、奈民研(奈良民俗文化研究所)の鹿谷先生が当たられました。

①造るに至ったいきさつ。
②どのように造られているのか。
③どんな思いを抱いているか。

以下、ほぼ自分の為の覚書です。


■橋本家■ 橋本眞智子さん

作っている花
・梅 赤、白 340本
・椿 赤、ピンク、しもふり(白地に赤の斑が入ったもの) 320本
・牡丹 赤、しもふり(白地に赤の斑が入ったもの)、ピンク 120本
・菊 黄、赤、ピンク、しもふり(白地に芯部を赤く染めたもの) 120本
・山吹 90本
・藤 6本

合計996本

薬師寺から遠い場所であることから、比較的形が崩れにくい6種類を担当したと考えらる。

元々は曾おじいさんが正暦寺の塔頭のひとつ、成身院の僧侶であった。
明治の廃仏毀釈でお寺は無くなったそう。
おじい様の橋本勝範さんは橋本凝胤和尚と兄弟弟子。
凝胤和尚が薬師寺に配属された際、花造りのお手伝いを始められたと考えられる。
還俗されてからも家に持ち帰って作ったのが始まりか。

現在は兼業農家をされているので、1,2,3月に短期集中型で造られている。

お父様はこの花造りが大嫌いで、絶対継がない宣言をされていたとか。
その理由として、村のほかの家は地元の国有林の下草刈をして収入を得ている時に、この花造りのために作業に加わることができなかったから。また、花造りのため二毛作もできなかった。
どんな花でも良いので納めて欲しいと凝胤和尚に諫められ、花造りを続けるに至った。
奥様がご縁を大事にされる方で、意欲的に花造りを支えられたことで、今日の花造りに繋がる。
眞智子さんは、小さい頃から花造りが当たり前として育ち、常に触れあっていたので継ぐのは当たり前と思ったそうです。旦那様も協力的で(ノロケ有り・笑)、現在お嫁ちゃんも含めてご家族総出で作っていらっしゃるとのこと。

材料集めから紙の染まで、作業の全てを橋本家でしている。
昔は薬草染めであったが、現在は一部化学染料も使用しているとのこと。


■増田家■ 増田茂世さん、夏海ちゃん

作っている花
・桜 紙が一番薄い 300本
・桃 白120本、赤180本
・杜若 紫、白 各30本
・百合 赤10本、白20本、ピンク10本、樺茶20本

合計720本

樺茶色を知らなかったので調べてみると、樺色を帯びた茶色のこと。樺色はバーントオレンジと言われ、焦げたオレンジの意味。樺桜の樹皮の色なんだそう。
江戸前期から使われている和色でした。
非常に不安定な色で、オレンジが強かったり茶が増したり、、、その年によって色合いが違うそうです。 

日中外に働きに出るので、一年を通して花造りをしている。
古地図では、薬師寺の境内に敷地があった。(現在は違いますよ!)
明治頃までは神主や笛吹などをしていた。
戦国時代には寺侍だったとも伝えられており、薬師寺と非常に深い関わりがある。
お寺に近いので、傷みやすい花を担当したと考えられる。
先代が9つの時に事故で他界したことや、おじい様が作業されていた部分などが伝えられる前に亡くなったことなどで、一時期作り方がわからない状態になったものの、橋本家との繋がりが復活(?)したことで現在の花造りに繋がる。
茂世さんはお嫁ちゃんなので、嫁入りしてから花造りを覚えられたそう。
娘の夏海ちゃんは、眞智子さん同様、花造りに触れて育ったものの、お兄様がいらっしゃったので自分が継ぐという意識はなかった。
しかしお兄様が他界したため、いろいろな葛藤を経て、現在、花造りを継ぐ決意を固められました。若いのに素晴らしい!!
現当主の旦那様(夏海ちゃんにはお父さん)は花造りに携わっていないので、現在はお二人で造られているようです。

木の切り出しなどは足場も不安定で大変。男手が欲しいとのことでした。
現在は染は京都の「染司よしおか」さんに頼んでいる。



両家ともにおっしゃっていたのは、タラの木や節の長い竹、程よい太さまで成長した漆の木など、手に入りにくいものが増えているそう。
木々に限らず、梅のずわえを作るときに使う正絹の布団の綴じ糸や、百合の雄しべに使う煤などは、生活形態の変化で手に入りにくくなったもの。
材料を揃えるのも一苦労なのだとか。


面白かったのは、糊。
橋本家では、ご飯をヘラで潰した「そくいい(続飯)」やもち米とうるち米をミキサーにかけて作ったものを使うそうです。
増田家では、もち米粉に水を加え、水の量で糊の緩さを調整するとのこと。
たかが糊、されど糊。。。それぞれ作るお花やアイデアの違いで、同じ糊でもこんなに違ってくるのですね。


眞智子さんは快活でその場をパッと明るくしてくれる大輪の花の様な方。
一方、茂世さんは小春日に咲くほんわりしたお花のイメージ。
次世代を担う夏海ちゃんは、スックとお日様に向かって伸びる凛とした花の様。

それを作るお店ではなく、一般には目に触れないところで試行錯誤を重ね守り続けてこられた造花の技術。
夏海ちゃんが言ってました。
「この形になるように、作り上げてきた昔の人は凄い」
オイラもそう思う。
両家に受け継がれている造花の技術は、立派な無形文化財だと思うのです。

途絶えることなく、花会式がある限り継承され続けて欲しい技術なのであります。


以下、写真とメモ書き



橋本家の紅梅の紙と型抜き。


タラの木と、その芯部分。
芯の部分でつぼみを作るのだそうです。


梅のずわえ。

ツンっと伸びたずわえは、布団の綴じ糸を使って作り上げるのだそう。
ずわえから枝の部分になると、紙テープで作り上げている。
生花でため損なってポッキリ折れた時にも、紙テープで補強しますが、それを思い出させる姿(笑)


増田家の桃の紙と型抜き道具。
下敷きの分厚い木に、たくさんの花びらを打ち出すための打ち出しの跡が、枚数の多さを物語ってますね。


かきつや百合さくら等等。葉っぱやガクなどの細やかなパーツの型紙。




花びらの丸みを出すのに使う棒や、カミソリ、糊付け用のヘラなど。


漆の木は小さく切って、花びらを乗せる台になるのであります。


ちなみに、花びらを一枚づつ手に乗せ棒でいためる(生花で言うところのためる)ことで、花びら独特の丸みを出します。
梅桃は内側をいため、桜は外側をいためるそうです。


この糊は増田家の。


こんな感じで出来上がるのであります。

こちらは橋本家の出来上がり。



橋本家の梅のガク。
梅桃桜と花の構成が似ておりますが、作る順序が両家で違うのであります。

橋本家は、ガクに花びらを二枚乗せる。
増田家は、組立棒に花びらを二枚刺して最後にガクをつける。
出来上がりは同じ様でも、順序が違ったりで面白い。



桃と桜。
雌しべと雄しべの部分が本物と見まごうばかりの出来栄えですが、さて、これは何で出来ているでしょうか?

【答え】
鹿のおしりの毛に、黄蘗(きはだ)の粉をつけたもの。
「におい」と呼ぶそうです。
いやはや、ホンマに匂ふところから採取された毛で作ってるんですね。
ふわふわに見えますが、触るとタワシみたいにゴワゴワしてました。
ちなみに、橋本さん担当の牡丹の中心部分のシベにも黄蘗が施されているのであります。


これが件の樺茶色。かぼちゃ色とちゃいますよ。か・ば・ちゃ!
花びらのシワも手作業で入れるのだそう。
無造作に入っているように見える点々も手作業で決められた通りに入ってます!
こんな点々ユリにあったかな?と思いゆりの画像を確認したら、ちゃんと入っております!自然の造形を忠実に再現しているのであります!


杜若は最新のものと古いものと。色が褪せているのが以前作ったものだそうで、褪せるのは自然染の証拠。
かきつ独特の凛とした花びらの中心に通る白い筋は、後から白い紙を貼るのだそう。


花会式のお話を聞き、造っていらっしゃる方の生のお声を聞き、あまつさえ、間近でお花を堪能させていただきました。
感無量!!!
(((o(*゚▽゚*)o)))


講演の後、松久保執事と眞智子さんと鹿谷先生ご夫妻は先に帰られましたが、残った茂世さんと夏海ちゃんと一緒にママさんフルートコンサートを聞いて山焼きを見ました。


毎年ニュースで見てたけど、生で見るのは初めて!
山焼き前の花火もめっちゃ綺麗でした。特に鹿さん花火は可愛かった~♪

この日は前日までの天気も良く、草もしっかり乾いてて、風も強くない好天だったとか。
近年稀に見る綺麗な山焼きだったそうです。



幸せすぎて、泣きそうな一日でした。
心がパンパンに満たされました。













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