みずけん戦記

せめてもう少しだけ、走らせてくれ。

無理矢理6輪旅行記in広島3「タカタニヤマノボレ」

2010-08-01 23:47:11 | 自転車
 広島二日目、朝の栄養補給を軽く?済ませた俺は、早々にホテルをチェックアウトし、再びデミオに乗り込み市街地を後に。

 ちゃっちゃっと広島高速、広島自動車道と乗り継ぎ、山陽の山あいを抜ける中国自動車道を走り、広島県三次市へ向かった。


 まず、読みが分からない人の方が多いと思うが、三次と書いて「みよし」と読む。

 正直、俺も今まで知らない街だったんだが、広島に田舎を持つ友人から話を聞き、是非一遍行ってみようと思っていたところである。


 三次インターチェンジで降り、軽くルートミスをして市内をくるっと回り道し、思ったよりは都会と見えた街をドライブ。

 市内めぐりは自転車でやろうと思っていたので、まず駐車場探しだ。
 市の中心にある三次駅。ここのド駅前の駐車場もそこそこ安かったが、「えっとできれば無料かそれに近いお値段が宜しいかと…」と貧乏人根性炸裂の俺様、引き続きクルクル市内を巡り、尾関山公園に到着した。

 ここはとりあえず駐車場がフリー(桜の時期はまた違うのかも知れないが)だったので、本当は公園利用者以外の利用はアレなんだがデミオを停めさせて頂き、駐車場近くの庭を見、ご不浄をお借りし、「では公園利用者となったところで…」デミオの後ろからチャッチャッと取り出したるは残りの2輪、シャウラ君。

 苛烈なお天道様の光に焼かれるまま、ドリンクの入ったボトルをケージにセットし、イザ三次サイクリングに出発。


 三次という街の特色の一つは、川が多いことである。
 メインの川である江の川(ごうのかわ)と、その支流である馬洗川、西城川等が絡み合い、混ざり合うこの地はその川の水温の差からか霧が出やすいらしい。
 その、江の川のほとりを自転車で走っているうち、高谷山(たかたにやま)という山へ登る道の入り口が見えてきた。

 これも友人から聞いていたのだが、三次市は四方を山に囲まれており、三次市内を一望できるスポットが幾つかある。
 事前に友人から拝借したガイドマップには、高谷山に霧の海展望所と書いてあった。

 「うーむ…折角三次に来て自転車に乗っているんだから、ここは一つ展望所まで登ってみるか!」とそらもう軽~い気持ちでシャウラのハンドルを山に向け、ペダルを回した。


 「あっ…俺の脚オワタ?」とフト思ったのは、山道に入って実に60秒後位のことであったな

 とにかく斜面が急なんである。
 しかも、急激に上がってきた心拍数に応えんと深く息をすれば、まるで喉が焼けるかのような熱気が辺りに漲っていた。

 すぐに出てきた看板には、展望所まであと4.何キロと書いてあった。
 こ、これは厳しいなんてもんじゃあない。

 とりあえず行ける所まで行ってみよう、ぐらいの気持ちで登り続けるが、ここんとこ登りは怠け切っていたためかギアを一番軽くしてもペダルが重い重い。

 この頃この地域を襲った大雨の影響か、一部通行止めになっていた道を迂回しつつ坂を登るが、道のりは果てしなく遠く感じられた。


 この感覚、久しぶりだ。

 真上に太陽があるせいで、日陰がほとんど無い山道を登るうち、身体全体が熱を発するような感覚が襲ってきた。
 だるいという状態を通り越して、意識が脳から逃げ出しそうになるギリギリのタイミングで、日陰を見つけ一旦休憩。

 マズイな。

 一応保温(保冷)仕様のボトルであるものの、すっかりヌルくなったスポーツドリンク、しかしそもそもその量が少なくなってきた。

 どうにも自販機が無さそうな山奥の道の中、完全に水がなくなったら流石にアウトだろう。

 だが、ここで引き返してはどうにも詰らん。折角ダウンヒルをやるなら一番上からが楽しかろう?というもっと詰らん理由から、再びヨレヨレと山の上に向かってペダルを踏ん張った。

 照りつける日差しの下、ペダルを回せばあっという間に心拍計は160台後半の数字を刻む。
 ひと漕ぎ、ふた漕ぎ。目の前をイタチか何かが通り過ぎ、脇の草むらに消えた。
 さらに漕ぎ、トカゲが鈍い光を放ちつつ走っていった。
 右、左、ペダルを回し、こんな時にフト、何故か足元の蟻ン子に目が行く。踏まないように。
 漕ぐ度に、身体がストーブにでもなったみたいに熱を放つ。少なくとも俺にはそう感じられた。
 汗と一緒に、意識が蒸発しそうになる、ギリギリ一杯のところ。

 この旅の前後、俺は自宅で衛星放送のツール・ド・フランスを観ていた。
 あれに出る選手達は、見た感じスンナリとどんな坂も登っていくように見えるが、やはり自分で登ってみるとその辛さが身に沁みる。

 喉が焼けるような、心臓が弾みすぎてハジケそうな、この強烈な感覚を味わえば、ツールの見方も変わるんじゃないか?

 アンディ・シュレックも、アルベルト・コンタドールも、こんな感覚といつも戦っているんだろうなあ。もちろんアイツらと俺とは次元が違い過ぎるんだろうが。

 そんなことを考えるような考えないような状態で、意識が飛ぶギリギリのところを保ちつつ、ひと段落。
 坂がなだらかになったところに、民家と、草刈機を操る地元の人、そして飲み物の自動販売機。

 九死に一生を得たような心持で、冷えたペットボトルを一本購入し、一口二口飲みつつボトルにも補充した。

 この先はあと少し…でも無かったりはしたんだが、にわかに日が翳り、一方山の木々は一層と生い茂りその結果日陰の多い道を走ることとなった。

 これでなんとかイケる。

 幾分気持ちが楽になりつつ、心拍数は相変わらず170手前を保ちつつ、ついに車が何台か止まっている場所が見えてきた。

 や、やっと展望台だ…

 そう思って自転車を降りると、高谷山ガイドマップかなんかの看板の近くに、展望台はこの先徒歩3分とあった。

 うっ…ここでもうちっとだけ歩かせるというのは…かなりプレイの仕方を心得ているなコンチクショウと思ったが、さりとて再び目の前の坂道を自転車で登るのは勘弁だったため、ヒイヒイ言いながら歩いた。


 展望台への坂を登り切ると、木々が立つ空地の奥にまるで古代の神殿のように、展望台が姿を現した。


 …てなところで、展望台からの景色は次回に回すことにして今回は高谷山の神殿ならぬ展望台の写真を載せておこう。