現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

くらもちふさこ「性格の良(字が逆さま)い大沢くん」

2019-11-16 14:48:52 | コミックス
 1993年にコーラスに掲載された、作者の代表作のひとつ(映画化もされました)「天然コケッコー」の元となった短編です(別冊マーガレットで活躍していた作者が、初めて年齢層がやや高いコーラスに発表するので、おそらくプロトタイプとして描かれたのでしょう)。
 山あい(この作品には描かれていませんが、海も近い)の過疎地域の分校(小学校と中学校が併設されています)に、東京からの転校生がやってきたことから、互いのカルチャーの違いから起こる騒動が描かれています。
 背が高くかっこいいが、性格に難のある大沢くんと、主人公の右田そよとの出会い(この時は中二ですが、その後高校時代まで続きます)が中心ですが、それ以外の個性的な登場人物たちの紹介や少人数なために兄弟姉妹同然で育った子どもたちの結び付きが巧みに描かれ、一年後の1994年からの「天然コケッコー」の連載へと繋がります。
 この作品の魅力は、なんといっても、美人だが訛りがバリバリある右田そよのキャラクターでしょう。
 作者は、リアルな女の子の主人公(「いろはにこんぺいとう」のチャコや「おしゃべり階段」の花菜など)の描写で定評がありますが、この右田そよ(映画では夏帆が演じました)が最大の成功例でしょう。
 かなり美人なのに自分では全く自覚がなく、子どもたちのお姉さん役として、みんなの面倒を見ている優しいがしっかりしていて、それでいてどこか抜けているそのキャラクターは秀逸で、この作品の成功に繋がりました。
 また、作者の描く男性主人公は、女の子たちに比べると、理想化されたイケメンタイプが多いのですが、その中では、この作品の大沢広海(映画では岡田将生が演じました)はおっちょこちょいで三枚目的要素があるので、比較的魅力があります。

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