ここで、サリンジャーは「若い男が若い女と出会う」物語(いわゆるA boy meets a girl的物語ですね)で、二人の出会いをどのように書くかで悩む作家を描いています。
三文ドラマ的なくだらない出会いのパターンをいくつか紹介しながら、だんだん現実的な出会いを描いていきますが、最後は実際にはそんな理想の女の子に出会っても一瞬の心の動きだけで行動にはつながらず、しばらくの間はその女の子は心の中に残っているが、やがて日常の中に埋没してしまうと述べています。
まさに、現実(自分の経験も含めて)はサリンジャーの言う通りなのですが、それだからこそ「若い男が若い女と出会う」物語(最近はその逆の「若い女が若い男に出会う」物語の方が多いかもしれません)は、今でも小説やマンガや映画やテレビドラマやアニメやゲームなど(その大半は三文ドラマだとしても)でたくさん描かれているのでしょう。
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サリンジャー選集(2) 若者たち〈短編集1〉 |
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荒地出版社 |