現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

夏目漱石「吾輩は猫である」

2020-06-20 10:43:47 | ツイッター
 言わずと知れた明治の文豪による古典です。
 読み直してみると、改めて漱石の教養、知識の深さと広さに驚嘆させられます。
 文学はもとより、芸術や科学や外国の事物に対しても、当時としては先進の知見を有していたようです。
 それを、漱石の分身であろう苦沙弥先生を始めとして、迷亭、寒月、東風、独仙などの個性的な登場人物の口を借りて自在に操り、当時の社会、特に拝金主義や個人主義に対して、鋭い批判を浴びせています。
 その一方で、主人公の猫の目を通して、彼ら文化人たちに対しても、痛烈な批判を展開しています。
 時代的な制約があって、軍国主義やジェンダー観にはさすがに古さも感じられますが、拝金主義の増大、個人主義の増大、教育の陳腐化、芸術の衰退、離婚の増大、非婚化、などに関する先見性には、今でも十分に納得させられます。
 処女作とあって、現代人にとっては文体がややかたく感じられますが、やがては「こころ」や「坊っちゃん」のような、より平明な文体を獲得していくわけです。
 こうした古典的な作品を読むと、「文学」というジャンルが、少なくとも日本では、明治から大正時代にかけてピークを迎えていたことがよく分かります。


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