場面は会話のみ、登場人物は基本二人のみ。長話のみ。>
小さめの警察用テントの下、将棋を打つ二人。
少し遠目のテレビを見る。
古めのブラウン管の画面には、レイバー犯罪の増加を告げるニュースが流れている。
榊「物騒だねえ」
後藤「そうですねえ」
榊「今見たいな平和な時もありゃあ、出ずっぱりな時もある。」
後藤「運用体制の見直ししなきゃいかんですな。」
榊「ヒマだったらヒマで報道陣がうるさいからな。ヘリまで出してくる。」
後藤「あのビーチパラソルはいい具合だったんですけどね。出し入れに手間がない。」
榊「ところで後藤さんよ。また難しい話ししていいかい」
後藤「え? いいですよ? 」
榊「技術ってなどこまで進むんかな、ってな」
後藤「どうでしょうね。どこまでも行きますよ。」
榊「どこまでもっつっても無理な話しもあるだろう。」
後藤「? 例えば? 」
榊「タイムマシンとかだな」
後藤「うーん。」
榊「どうした」
後藤「いやあ、あれは擬似的に可能なんじゃないかと思うんですよ。」
榊「! 」
榊「冗談だろう、おい。」
後藤「いや、言うと人に笑われるんで話せないんですよ。」
榊「待て、俺は笑わねえ。それよりもその話しが聞きてえ。」
後藤「例えば、の話しですよ。」
後藤「理論的に無理でも、擬似的にそれを成し遂げてきたことは沢山あります。熱力学第二法則では必ず熱い物から冷たいものへと温度が流れ、その逆は無い。というと、ここからは冷蔵庫やクーラーエアコンはできませんが、擬似的にそれを迂回する形で実現しています。飛行機だって、鳥の模倣をしようとすれば、本当はフラップター形式でなければいけなかったが、固定翼で実現している。食べ物を温めるには火が無ければいけなかったけれども、現在は電子レンジがある・・・」
榊「タイムマシンもそんな感じで可能ってわけかい」
後藤「いや厳密には違うんですけれども、タイムマシンには、単純に時間移動するものと、時間はそのままだけれども、過去や未来を改編するもので分かれると思うんです。」
榊「うん? 」
後藤「ここからですが、コンピュータのAI深度学習のディープラーニングによって、未来結果が予測できるのであれば、そのバタフライエフェクトとなる現在における拮抗点や、いずれ到来するだろう未来の拮抗点を見出し、未来をコントロールすることができるのではないか・・・とね。」
榊「・・・」
榊「後藤さん、あんたどういう人なんだい。」
後藤「例えば、テロを未然に防いだり、その原因となる社会不安の原因そのものを防いだり、あるいは戦争での勝利拮抗点を事前に掴むことができるかもしれない。無論、現在はアメリカとロシアがやっていて、日本はそれをやる度胸はない。防衛ならまだしも攻勢に至るまでの地政学的発想は、この国の根幹からそがれてしまっている。」
後藤「対テロ用のビッグデータの解析は既に2014年以前で採用しています。NSAはもっと前かな。」
榊「公安とかはもうやっていそうな気はするがな。」
後藤「どうでしょうね。」
後藤「榊さん、これオフレコね。公安が仮にやっていたとしても、政府決定にならなきゃ意味が無いんですよ。その意味で機能はしていない。今、国家安全保障会議(日本版NSA)って登場したでしょう。」
榊「したな。」
後藤「それと国家の官僚組織ってどことどこが仲悪いか分かります? 」
榊「いや、お上のことは分からねえ。」
後藤「仲いいところはいいんですが、基本的に軍と警察と外交はどの国でも仲悪いらしいです。」
榊「おい、後藤さん、あまりキモが冷える話しは御免だぜ。」
後藤「いや、日本特有の事情じゃないから大丈夫。」
後藤「どこの国でもそうですが、国家の一番上に統合するような情報組織が無かったのが問題です。それを統合しようとした時に、警視庁と外務省が走った。」
榊「自衛隊は? 」
後藤「自衛隊はそれなりに展望はあるが、先日庁から省に上がったばかりです。今目に見えて動いているのが今言った二つです。」
榊「そんなに激突しているもんかね。全然分からねえが・・・」
後藤「以前まで統合する情報組織として存在していたのが、内調のCIROだった。でもこれは実質的な機能をしていなかった。色んな省庁から派遣でくるけれども、重要な情報は警察には持って来なかったりする、らしい。」
後藤「でも最近は外務省主導で、そういうのが新しく出来た。国家安全保障会議です。」
榊「素人考えなんだが、じゃあ外務省に任せりゃ・・・という訳にもいかんか。」
後藤「警察のメンツもありますし、あと警察の上は外務省を信用してませんよ。あれらは半分スパイだと思ってる。」
榊「後藤さんはどう思っているよ。」
後藤「いやあ、どうとも。」
榊「」
後藤「」
榊「まあいいや、擬似的に可能ということか。」
後藤「飽くまで私の仮説ですよ。」
榊「あとは不老不死とか、物質転送か。」
後藤「そうですな。」
榊「もしかしてこれも可能か? 」
後藤「これもちょっと解説が要ります。」
後藤「不老不死研究は現在実現していません。ただ老化を遅らせてこれもまた擬似的に健康な体を延命させる処置は進んでいて、恐らく2032年前後に実現予定です。2012年での英ケンブリッジ大学研究員で老年医学研究を進めている報告からではあと20年後に実現するだろうと。」
榊「まるでSFだな。」
後藤「ライト兄弟もさんざんバカにされましたが、でも今の世界はそれを当然として使用している。」
後藤「それと、物質転送はある程度実現しています。」
榊「!? 教えてくれないか。」
後藤「スタートレックって観ました? 」
榊「いや、見てない。」
後藤「その映画の中でのアイテムがあるんですが、「レプリケーター」というやつです。紙のコピーを取るように、物質のコピーが取れるという未来のアイテムです。」
榊「それが実現しているのか。」
後藤「完全ではないです。3Dプリンターってありますよね? 」
榊「ある。でもあれは転送として微妙じゃないか。」
後藤「あれを応用したんです。2012年に英グラスゴー大学で、実際の分子を分子レベルでプリントすることで、薬品の製造に成功しています。」
榊「何でもありだな・・・」
後藤「でも高分子化合物や有機物、あるいは生物は当然ながら難しい。動かない薬品ならまだしも、生きている対象や組成が複雑なものは基本的に時間がかかりますから。」
小さめの警察用テントの下、将棋を打つ二人。
少し遠目のテレビを見る。
古めのブラウン管の画面には、レイバー犯罪の増加を告げるニュースが流れている。
榊「物騒だねえ」
後藤「そうですねえ」
榊「今見たいな平和な時もありゃあ、出ずっぱりな時もある。」
後藤「運用体制の見直ししなきゃいかんですな。」
榊「ヒマだったらヒマで報道陣がうるさいからな。ヘリまで出してくる。」
後藤「あのビーチパラソルはいい具合だったんですけどね。出し入れに手間がない。」
榊「ところで後藤さんよ。また難しい話ししていいかい」
後藤「え? いいですよ? 」
榊「技術ってなどこまで進むんかな、ってな」
後藤「どうでしょうね。どこまでも行きますよ。」
榊「どこまでもっつっても無理な話しもあるだろう。」
後藤「? 例えば? 」
榊「タイムマシンとかだな」
後藤「うーん。」
榊「どうした」
後藤「いやあ、あれは擬似的に可能なんじゃないかと思うんですよ。」
榊「! 」
榊「冗談だろう、おい。」
後藤「いや、言うと人に笑われるんで話せないんですよ。」
榊「待て、俺は笑わねえ。それよりもその話しが聞きてえ。」
後藤「例えば、の話しですよ。」
後藤「理論的に無理でも、擬似的にそれを成し遂げてきたことは沢山あります。熱力学第二法則では必ず熱い物から冷たいものへと温度が流れ、その逆は無い。というと、ここからは冷蔵庫やクーラーエアコンはできませんが、擬似的にそれを迂回する形で実現しています。飛行機だって、鳥の模倣をしようとすれば、本当はフラップター形式でなければいけなかったが、固定翼で実現している。食べ物を温めるには火が無ければいけなかったけれども、現在は電子レンジがある・・・」
榊「タイムマシンもそんな感じで可能ってわけかい」
後藤「いや厳密には違うんですけれども、タイムマシンには、単純に時間移動するものと、時間はそのままだけれども、過去や未来を改編するもので分かれると思うんです。」
榊「うん? 」
後藤「ここからですが、コンピュータのAI深度学習のディープラーニングによって、未来結果が予測できるのであれば、そのバタフライエフェクトとなる現在における拮抗点や、いずれ到来するだろう未来の拮抗点を見出し、未来をコントロールすることができるのではないか・・・とね。」
榊「・・・」
榊「後藤さん、あんたどういう人なんだい。」
後藤「例えば、テロを未然に防いだり、その原因となる社会不安の原因そのものを防いだり、あるいは戦争での勝利拮抗点を事前に掴むことができるかもしれない。無論、現在はアメリカとロシアがやっていて、日本はそれをやる度胸はない。防衛ならまだしも攻勢に至るまでの地政学的発想は、この国の根幹からそがれてしまっている。」
後藤「対テロ用のビッグデータの解析は既に2014年以前で採用しています。NSAはもっと前かな。」
榊「公安とかはもうやっていそうな気はするがな。」
後藤「どうでしょうね。」
後藤「榊さん、これオフレコね。公安が仮にやっていたとしても、政府決定にならなきゃ意味が無いんですよ。その意味で機能はしていない。今、国家安全保障会議(日本版NSA)って登場したでしょう。」
榊「したな。」
後藤「それと国家の官僚組織ってどことどこが仲悪いか分かります? 」
榊「いや、お上のことは分からねえ。」
後藤「仲いいところはいいんですが、基本的に軍と警察と外交はどの国でも仲悪いらしいです。」
榊「おい、後藤さん、あまりキモが冷える話しは御免だぜ。」
後藤「いや、日本特有の事情じゃないから大丈夫。」
後藤「どこの国でもそうですが、国家の一番上に統合するような情報組織が無かったのが問題です。それを統合しようとした時に、警視庁と外務省が走った。」
榊「自衛隊は? 」
後藤「自衛隊はそれなりに展望はあるが、先日庁から省に上がったばかりです。今目に見えて動いているのが今言った二つです。」
榊「そんなに激突しているもんかね。全然分からねえが・・・」
後藤「以前まで統合する情報組織として存在していたのが、内調のCIROだった。でもこれは実質的な機能をしていなかった。色んな省庁から派遣でくるけれども、重要な情報は警察には持って来なかったりする、らしい。」
後藤「でも最近は外務省主導で、そういうのが新しく出来た。国家安全保障会議です。」
榊「素人考えなんだが、じゃあ外務省に任せりゃ・・・という訳にもいかんか。」
後藤「警察のメンツもありますし、あと警察の上は外務省を信用してませんよ。あれらは半分スパイだと思ってる。」
榊「後藤さんはどう思っているよ。」
後藤「いやあ、どうとも。」
榊「」
後藤「」
榊「まあいいや、擬似的に可能ということか。」
後藤「飽くまで私の仮説ですよ。」
榊「あとは不老不死とか、物質転送か。」
後藤「そうですな。」
榊「もしかしてこれも可能か? 」
後藤「これもちょっと解説が要ります。」
後藤「不老不死研究は現在実現していません。ただ老化を遅らせてこれもまた擬似的に健康な体を延命させる処置は進んでいて、恐らく2032年前後に実現予定です。2012年での英ケンブリッジ大学研究員で老年医学研究を進めている報告からではあと20年後に実現するだろうと。」
榊「まるでSFだな。」
後藤「ライト兄弟もさんざんバカにされましたが、でも今の世界はそれを当然として使用している。」
後藤「それと、物質転送はある程度実現しています。」
榊「!? 教えてくれないか。」
後藤「スタートレックって観ました? 」
榊「いや、見てない。」
後藤「その映画の中でのアイテムがあるんですが、「レプリケーター」というやつです。紙のコピーを取るように、物質のコピーが取れるという未来のアイテムです。」
榊「それが実現しているのか。」
後藤「完全ではないです。3Dプリンターってありますよね? 」
榊「ある。でもあれは転送として微妙じゃないか。」
後藤「あれを応用したんです。2012年に英グラスゴー大学で、実際の分子を分子レベルでプリントすることで、薬品の製造に成功しています。」
榊「何でもありだな・・・」
後藤「でも高分子化合物や有機物、あるいは生物は当然ながら難しい。動かない薬品ならまだしも、生きている対象や組成が複雑なものは基本的に時間がかかりますから。」