豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

派遣添乗員がちょっとかわいそう、という話

2008年07月09日 | ツアー登山、ガイド山行
ちょっとタイトルが刺激的ですが・・・・・

スカート指定?全裸で廊下に?ツアコン残酷物語
イザ!  07/08 02:46


ツアー旅行に同行する派遣添乗員が「みなし労働」のおかげでひどいサービス残業の状態であり、なおかつ日当も安いということに関連して、様々な話題が掲載されています。

山岳ガイドをやっていた当時は添乗員さんとのつきあいがありましたし、また山小屋を辞めた後でツアー登山の添乗員になろうとした過去を持つので、他人事とは思えません。





山小屋を辞めて東京で暮らそうと考えた時、まず問題となったのは仕事探しです。不動産の経験はちょっとだけありましたが「絶対に戻りたくない!」と思っていましたし、他の職業経験は山小屋しかありません。この状況で「経験を活かして人生ステップアップ!」なんてことを考えた時、やれる仕事は非常に少ないわけで、結局某山岳雑誌に掲載されていた「ツアー登山の添乗員募集」に特攻するしかありませんでした。

書類選考を通過し、面接に呼ばれてその会社へ行くと、まじめそうな学生さんがたくさん会議場らしい部屋に集まっていました。山のツアー専門の人ばかりが来ると思いこんでいたのですが、実は普通の添乗員志望がほとんどであり、山希望なのは私だけでした。

早速説明会が始まりますが、人事部の人がヤケに横柄です。まあ山小屋で数年間「お山の大将」をやっていたために自分の性格が少々アレになっていたのもありますが、この時点で既に、ここに就職したいという気が失せてしまいました。

やがて面接が始まります。

一度に数人ずつ志願者が呼ばれるのですが、他の志願者に対して面接官はけっこうきつい感じで、志願者のみなさんは真剣に受け答えしています。で、やる気の無い私に対しては、なぜか親切です。

面接官は他の志願者に対して志願理由だとかあれこれ質問を浴びせるのですが、私には「どう?入らない?」てな感じでやけに優しいのです。

面接を続けているうちに、山の添乗員希望者がすごく少ないことがわかりました。山登ったことのないような人に無理矢理行かせているような状況なので、登山経験者なら誰でも欲しい状況だというのが、だんだん解ってきました。


仕事で山に登れ、なおかつ東京で暮らせるのなら文句はありません。が、問題は待遇です。そのあたりを面接官に突いてみると、




日給で¥8000




という回答を得られました。しかも、








仕事は毎日あるわけではない






ということです。週に2~3日働いて、なおかつ日給8000円では、文化的最低限の生活を維持するのが難しそうです。私が山に数年間こもっている間に、日本の労働環境はえらいことになっていたようです。



私があからさまにイヤそうな顔をすると面接官は、





空いている日にはもちろん、アルバイトOKだよ






と言い出しました。こっちは山小屋稼業から足を洗い、まっとうな社会人として生きていこうとしているのに、アルバイトやり放題な正社員になっても意味がありません。

というわけで、「この話は無かったことにしてください」とお願いして、会場を去りました。それにしても、こんな条件でツアー登山の添乗員がそうそう集まるわけがありません。

また会場に集まっていた若い人を見ていて、なんだかかわいそうになりました。派遣という不安定な身分でなおかつ給料が安くて、しかも会社側に高飛車な態度を取られても素直に従うしかないのです。当時はもちろん不況の真っ最中であり、正社員になれただけで幸せと言える状況でしたが、それにしてもひどいものです。






その後、山岳ガイドの仕事を始めた時、ツアー登山の添乗員と一緒に山へ登るようになりました。ほとんどの人が山に詳しく、ヘタな山岳ガイドより頼りになる人ばかりでした。で、何度も顔を合わせているうちにいろいろ話を聞くわけですが、そのたびに「あのとき、就職しないで良かったな」と思ったモノです。



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