豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

GWの白馬岳で6人が凍死 その3

2012年05月10日 | 山岳遭難
猪熊先生による、事故当日の気象に関する解説が出ています。


寒気の接近前に「疑似好天」 白馬岳の6人遭難死
信濃毎日新聞  05月08日



引用
3~4日の気象状態について山岳気象専門の予報会社を運営する気象予報士の猪熊(いのくま)隆之さん=茅野市=によると、悪天候をもたらした前線を伴う低気圧が3日夜に県内を含む日本の中部を通過。4日午後に日本の西側から高気圧が近づき西高東低の気圧配置になり、寒気が入り込んだ。
引用おわり


時期的にはすっかり春ですが、気圧配置は冬とまったく同じパターンということですね。


引用
猪熊さんは、低気圧が去って気圧の高低差が緩くなってからその後、寒気が入り込むまでに「疑似好天」になったと推測。しかも今回は低気圧が時速20キロと比較的ゆっくり進んだため「気圧の谷の発生までの間隔が通常より長く、疑似好天が比較的長かったのではないか」と分析する。
引用おわり


疑似好天って日本海に低気圧が発生した時に起きる現象だと思っていたのですが、低気圧が通過した後でも起きるなんて、恥ずかしながら知りませんでした。

この記事には他にも午前9時頃に栂池を出発して白馬岳の手前にある小蓮華山を目指したパーティの話が出ています。なんでも出発時は汗ばむ陽気で、Tシャツ姿のメンバーもいたとか。それが正午過ぎには急変して横殴りの雪となり、あわてて撤退したようです。




さらに、天候悪化で引き返す途中、小蓮華山の直下で遭難パーティとすれ違った人の話が出ています。


白馬岳6人死亡:「先生、どうしましょう」と相談 すれ違った登山者が証言
毎日新聞  2012年05月10日

引用
10人のグループは、遭難事故が起きた4日、白馬大池のベースから日帰りで白馬岳を目指したが、天候が悪くなってきたため三国境の先で引き返した。6人とすれ違ったのは小蓮華山を10分ほど下った午後1時半ごろだったという。
引用おわり


途中で引き返したパーティですけど、三国境から少し登ったところで撤退を決断してますね。見事です。ここからだと白馬の山頂は夏ならすぐですし、白馬山荘も近いです。ちょっと勢いがあれば突っ込んでも不思議ではない気がします。よほどヤバく感じたのですかねー。

で、遭難パーティは早朝に栂池を出ていますから、午後1時半で小蓮華の山頂付近というのは相当時間喰っています。雪の状態が悪かったのか、それとも単に体力的な問題なのかわかりませんけど、ちょっと無理がある感じでしょうか。

このコースは小蓮華を越えて三国境まで行ってしまうと、撤退する場合にはここが登りになってしまいます。ここで撤退を決断できず、ズルズルと進んでしまったのが悔やまれます。

テント泊装備が無かったことから、撤退するとなると栂池まで戻ることになり、それを嫌がったのかもしれません。











2 コメント

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擬似好天か… (元アミューズ社員k)
2012-05-22 02:29:30
寒冷前線の通過後、季節風の猛烈な吹き出しが始まるまでの数時間、あたかも天気が回復したかのように良くなるのは何度も経験しました。冬山の場合はパターンなので読みやすく、その時間に敢えて前進したり、逆に避難したこともあります。今回は春山なのでうららかになりすぎてかえって読めなかったのであれば、不運な面も大きかったのかもしれないですね。擬似好天とは普通ピートさんがおっしゃるような低気圧間の高圧部による一時的な好天を指すのであり、このパターンは少し違うのですが、他に適当な表現が無いのだと思います。実は猪熊は私の4学年下の後輩なのですが、すっかり山岳気象予報のカリスマになってしまいましたね。「山岳気象大全」オススメです。私は買いました(笑)。
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Unknown (bongo-pete)
2012-05-22 21:52:39
元アミューズ社員k様

>実は猪熊は私の4学年下の後輩

あら、そうなんですか。

「山岳気象大全」は買おう買おうと思いつつ、まだポチッってなかったりします。アマゾンのリストには入れているんですけどね。
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