今年は不帰周辺でよく作業していたもんで、不帰キレットの岩場鎖場を何度も通過しました。で、ある日のこと。不帰北峰から鎖場を降り始めてまもない地点に、ひとりの若い男性が休憩していました。
変なところで休憩しているなあ、と思い、「ほんのちょっと登れば、不帰キレットは終わりですよ。そこで休んだら?」と声をかけたところ、その男性は「実は・・・・滑落したんです」と言い出したのです。それでドキドキが収まるまで、休憩していたところなのだとか。
彼によると、鎖を伝っていくうちにかなり急な斜面が出てきたので「これを下るのかな?」と思い、下を覗いてみるとずっと下の方に登山道が見えたとか。そこで思い切って斜面を降りていったらプチ滑落してしまい、必死になって登り返したそうです。で、今休憩しているところまで登ったら、反対側の斜面に鎖が垂れているのが見えて、ようやく正しいルートがわかったというわけらしいのです。
そこの鎖は末端が岩の陰まで伸びているので、鎖の通りに行くと危険な斜面に出てしまいます。しかしそこにはバツマークがある上に、普通だったら怖さを感じるような斜度です。またちょっと周囲を見渡せば、鎖場の終点直下5mぐらいから次の鎖が垂れているのが見えるはずなんですよね。
彼が通り過ぎてから試しに、その鎖にしがみつくようにして歩いてみました。なるべく周りを見ないようにしてです。するとペンキのバツマークがやや見にくい感じでした。これだと鎖に集中していたら気づかないかもなあ、というわけで、後日そこにグリーンのロープを張っておきました。
パトロールもそろそろ終わり、という頃、唐松山荘に富山県警から電話が入りました。不帰に残置ロープがあって、それを間違って登ってしまったお客さんが、かなり難儀しながら登山道に戻り、富山県警にご注進したらしいのです。
ちょっと見づらいのですが、クリックで拡大します。↓
冬の間に張られたらしい残置ロープがあるのは知ってましたけど、まさか登るヤツはいねーだろ、と、仲間の隊員と話していたので、回収するつもりはありませんでした。それにこの残置ロープはちょっと岩陰にあるので、普通に登っていたら気づかない人が大半だと思います。唐松方面から下ってきていたらまずわからないでしょうし、白馬方面からでもよくよく見ている人でないとわからんでしょう。私も最初、気づきませんでした。
そしてちゃんとした登山道が、もちろんあるのです。そのお客さんはおそらく白馬方面から縦走してきたのでしょうけど、それなら左手に登山道がしっかり見えるはずです。
立ち入り禁止のバツマークも足下を含めて3~4個ありますし、ロープが垂れている地点まではけっこう足元が悪いので、普通は「これ、ちょっとおかしい」と気づくはずなんです。さらに、このロープを登る場合、途中のフットホールドが乏しいので体重をフルにかけないと登れないのです。
ですから電話を受け取った時には「いったい、どうすればあのロープを登ろうと思うんだ?」と、小屋の人と首をかしげたものです。
そんなわけで「いざ回収!」となりましたが、問題があります。富山県警に電話してきたお客さんは平気でロープにぶら下がっていたようですが、ウチらはそういうわけにはいきません。支点の状態がわかりませんし、ロープも老朽化している可能性があります。ロープにたよらずに、なんとかしないといけないのです。
というわけで、仲間の隊員が奮闘して無事に回収してきました。優秀な部下を持つと、とてもラクです。と、ここで褒めておきましょう。
それにしてもねえ、電話を受け取った富山県警の人はかなり強い調子で抗議を喰らっていたようで、かわいそうですね。状況がわからないですから、言われるままになっていたのでしょう。ロープを張ったのは富山県警でも長野県警でもないでしょうから、怒られる理由がないです。
岩場や鎖場を通る時、「あれ、こんなに怖いところを通るのかな?」と思うことがあるでしょう。そんな時は落ち着いて周囲を見渡し、ラクに行けるラインがあるかどうかをじっくり確かめるべきです。また常に足元を注意しつつ、遠くも見る余裕が必要です。それができなくて、勢いで突っ込んでしまうような人が単独で不帰キレットとか大キレットなどの難所へ向かうのは、行方不明になりたがっているとしか思えません。
変なところで休憩しているなあ、と思い、「ほんのちょっと登れば、不帰キレットは終わりですよ。そこで休んだら?」と声をかけたところ、その男性は「実は・・・・滑落したんです」と言い出したのです。それでドキドキが収まるまで、休憩していたところなのだとか。
彼によると、鎖を伝っていくうちにかなり急な斜面が出てきたので「これを下るのかな?」と思い、下を覗いてみるとずっと下の方に登山道が見えたとか。そこで思い切って斜面を降りていったらプチ滑落してしまい、必死になって登り返したそうです。で、今休憩しているところまで登ったら、反対側の斜面に鎖が垂れているのが見えて、ようやく正しいルートがわかったというわけらしいのです。
そこの鎖は末端が岩の陰まで伸びているので、鎖の通りに行くと危険な斜面に出てしまいます。しかしそこにはバツマークがある上に、普通だったら怖さを感じるような斜度です。またちょっと周囲を見渡せば、鎖場の終点直下5mぐらいから次の鎖が垂れているのが見えるはずなんですよね。
彼が通り過ぎてから試しに、その鎖にしがみつくようにして歩いてみました。なるべく周りを見ないようにしてです。するとペンキのバツマークがやや見にくい感じでした。これだと鎖に集中していたら気づかないかもなあ、というわけで、後日そこにグリーンのロープを張っておきました。
パトロールもそろそろ終わり、という頃、唐松山荘に富山県警から電話が入りました。不帰に残置ロープがあって、それを間違って登ってしまったお客さんが、かなり難儀しながら登山道に戻り、富山県警にご注進したらしいのです。
ちょっと見づらいのですが、クリックで拡大します。↓
冬の間に張られたらしい残置ロープがあるのは知ってましたけど、まさか登るヤツはいねーだろ、と、仲間の隊員と話していたので、回収するつもりはありませんでした。それにこの残置ロープはちょっと岩陰にあるので、普通に登っていたら気づかない人が大半だと思います。唐松方面から下ってきていたらまずわからないでしょうし、白馬方面からでもよくよく見ている人でないとわからんでしょう。私も最初、気づきませんでした。
そしてちゃんとした登山道が、もちろんあるのです。そのお客さんはおそらく白馬方面から縦走してきたのでしょうけど、それなら左手に登山道がしっかり見えるはずです。
立ち入り禁止のバツマークも足下を含めて3~4個ありますし、ロープが垂れている地点まではけっこう足元が悪いので、普通は「これ、ちょっとおかしい」と気づくはずなんです。さらに、このロープを登る場合、途中のフットホールドが乏しいので体重をフルにかけないと登れないのです。
ですから電話を受け取った時には「いったい、どうすればあのロープを登ろうと思うんだ?」と、小屋の人と首をかしげたものです。
そんなわけで「いざ回収!」となりましたが、問題があります。富山県警に電話してきたお客さんは平気でロープにぶら下がっていたようですが、ウチらはそういうわけにはいきません。支点の状態がわかりませんし、ロープも老朽化している可能性があります。ロープにたよらずに、なんとかしないといけないのです。
というわけで、仲間の隊員が奮闘して無事に回収してきました。優秀な部下を持つと、とてもラクです。と、ここで褒めておきましょう。
それにしてもねえ、電話を受け取った富山県警の人はかなり強い調子で抗議を喰らっていたようで、かわいそうですね。状況がわからないですから、言われるままになっていたのでしょう。ロープを張ったのは富山県警でも長野県警でもないでしょうから、怒られる理由がないです。
岩場や鎖場を通る時、「あれ、こんなに怖いところを通るのかな?」と思うことがあるでしょう。そんな時は落ち着いて周囲を見渡し、ラクに行けるラインがあるかどうかをじっくり確かめるべきです。また常に足元を注意しつつ、遠くも見る余裕が必要です。それができなくて、勢いで突っ込んでしまうような人が単独で不帰キレットとか大キレットなどの難所へ向かうのは、行方不明になりたがっているとしか思えません。
結び目がスタックしてただけとか 錆びた細い針金だったとか いろいろヤバいのを見ました(笑)
最初のうちは誰にでもある失敗だとは思います。が、小さな失敗で終わるのか、大きな失敗になるのかはわからないものです。
ons様
残置ロープを誰が設置したのかはわからんですけど、なるべくなら回収してほしいものです。
ただ残置した理由がわからないので、このエントリーでは特にあれこれ書かなかったですけどね。設置した本人がこの世にいないケースもありましたし。
まあ、夏山コースの近くにこういうものがあると、こういうことが起きるんだなあ、と勉強になりました。
こちらは山屋より 写真屋が多く、マイナーな道を通ると
ことごとく展望の良い小ピークへ誘われます(笑)
確かに へばっている初心者に前を歩かせると 微妙なリッジや獣道へ突入してくれます。
残置ロープしかり 余計な踏み跡もしかり 山には何も置いて帰らないで欲しいものですね
某ルートの雪渓トラバースで、雪渓をトラバースするのか、残置ロープで高巻きするのかわからず、支点の状況がわからないロープに全体重をかけて5mくらい登ったことが・・・
遠くから見ると「なんであそこを登るの?」と思えるんですが、間近になって足元ばかり見ていると、踏み跡があると誘導されそうになりますよね・・・
まあそんなのをいちいち県警に連絡なんかしようとは思いませんけど・・・