今年の山岳遭難件数5割増に 山梨
産経新聞 2008.12.2 02:50
山梨県内の遭難事故も、昨年から5割増しなようです。
事故が1.5倍ってことは、普通に考えると入山者が1.5倍ということになるのですが、おそらくはそんなに増えていないでしょう。ここ数年、入山者が増えた以上に事故が増えるのが、よく見られるパターンです。
もうちょっと詳しい情報が欲しいな、と思って山梨県警のサイトを覗いたのですが、現時点ではこの統計について掲載されていないようです。
それにしても、この産経の記事は省略が多く、知りたいところが書かれていなくて欲求不満になります。少し引用してみましょう。
遭難者は前年同期より38人多く、内訳は死者14人(前年同期比1人増)▽負傷者35人(同2人増)▽行方不明3人(同2人増)。山岳別では南アルプスが28件で最も多かったほか、秩父山系19件▽富士山と御坂山系各11件と続いた。
見出しでは「1.5倍も事故が増えた!」と煽っていますが、遭難者の内訳を見る限り、どこが増えたのかがイマイチわかりません。死者が1人増え、負傷者が2人増え、行方不明が2人増え、ですから、たったの5人です。遭難者は38人増えたのですから、残りの33人はどこへ行ってしまったのでしょうか?
おそらくはここに書かれていない「無事救出」が大幅に増えていて、そこが報道のポイントだと思うのですが、これだけではサッパリわかりません。
「無事救出」という内訳は何が無事なのかよくわかりませんが、山岳事故の統計ではよく使われます。通常は道迷いの人を助けた場合にカウントされているようですね。そのほか、病気も含まれているかもしれません。ですから「無事救出」の人数が増えている、ということが分かれば「道迷いが増えているんだな」と想像がつくのです。
上記の記事では事故原因によるデータも掲載されていますが、これまたどの事故原因が増加している、といったことが省略されて報道されていますので、問題点がわかりにくいです。
私自身は山に関する報道について、はなから期待していません。この記事を書いているレベルの記者はおそらく入社して間もないか数年程度の駆け出しでしょう。いわゆるサツまわり、ですね。ですから山の知識なんてゼロに近いはずです。でもね、この記事は単純な統計ですから、前述した指摘程度のことは誰でもできると思うのですけどね。
↑この記事が参考になる、面白い!と思ったらクリックしてください。ランキングサイトです。
産経新聞 2008.12.2 02:50
山梨県内の遭難事故も、昨年から5割増しなようです。
事故が1.5倍ってことは、普通に考えると入山者が1.5倍ということになるのですが、おそらくはそんなに増えていないでしょう。ここ数年、入山者が増えた以上に事故が増えるのが、よく見られるパターンです。
もうちょっと詳しい情報が欲しいな、と思って山梨県警のサイトを覗いたのですが、現時点ではこの統計について掲載されていないようです。
それにしても、この産経の記事は省略が多く、知りたいところが書かれていなくて欲求不満になります。少し引用してみましょう。
遭難者は前年同期より38人多く、内訳は死者14人(前年同期比1人増)▽負傷者35人(同2人増)▽行方不明3人(同2人増)。山岳別では南アルプスが28件で最も多かったほか、秩父山系19件▽富士山と御坂山系各11件と続いた。
見出しでは「1.5倍も事故が増えた!」と煽っていますが、遭難者の内訳を見る限り、どこが増えたのかがイマイチわかりません。死者が1人増え、負傷者が2人増え、行方不明が2人増え、ですから、たったの5人です。遭難者は38人増えたのですから、残りの33人はどこへ行ってしまったのでしょうか?
おそらくはここに書かれていない「無事救出」が大幅に増えていて、そこが報道のポイントだと思うのですが、これだけではサッパリわかりません。
「無事救出」という内訳は何が無事なのかよくわかりませんが、山岳事故の統計ではよく使われます。通常は道迷いの人を助けた場合にカウントされているようですね。そのほか、病気も含まれているかもしれません。ですから「無事救出」の人数が増えている、ということが分かれば「道迷いが増えているんだな」と想像がつくのです。
上記の記事では事故原因によるデータも掲載されていますが、これまたどの事故原因が増加している、といったことが省略されて報道されていますので、問題点がわかりにくいです。
私自身は山に関する報道について、はなから期待していません。この記事を書いているレベルの記者はおそらく入社して間もないか数年程度の駆け出しでしょう。いわゆるサツまわり、ですね。ですから山の知識なんてゼロに近いはずです。でもね、この記事は単純な統計ですから、前述した指摘程度のことは誰でもできると思うのですけどね。
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このような記事があればこの文章を作文した人の意図を「山岳において中高年は極めて危険な世代」と読むのはかなり普通に思います。
実際山で「今時の中高年は怖い」という話をしている人はよく見かけます(僕もそう思うときがありますけど・・・)
でも本来ある世代を危険な世代と結論付けるのなら、分母を示しての確立で無いと意味がないはず。
山で会う登山者の80%は中高年の印象がありますから、別に80%以上でも何もおかしくは無いですよね。
(ちなみに警察統計における中高年とは40歳以上をさします・・・涙)
中高年が多いんだから、遭難者も中高年が多いのは確率論からは当然。問題は知識も経験も技術も乏しい人が増えていることでは。
>「山岳遭難の数は中高年が80%以上」
パターン化されてしまったコレのおかげで、中高年登山者が不当にいじめられている気がします。中高年としての問題があるのは確かなのですが、これではまるで中高年であることが問題みたいな書き方です。
山のオネーサンさま
>問題は知識も経験も技術も乏しい人が増えていることでは。
中高年登山ブーム自体は十数年前からのものですし、知識が足りないとか経験不足だとか体力が無い、というのは当時から指摘されてきました。
ただ、ここ数年における遭難事故の増加って、また別の要因があるように思えるんですよね。
最近、いわゆる「名山」とその1ランク落ちみたいな山で、「そういうのが嫌で」「そういうのが合わなくて」などと、単独・友人と・女房連れて・・といったような人にすごく会うような気がするんですよ。私の感覚なので、客観的でも何でもないですが。
なかなか客観的に見られるデータが無いもので難しいのですが・・・・
ここ2~3年における事故の特徴は、特定山域において登山者が増加すると、「それ以上に」事故が増加する、ということなんです。これだけは数字上でわかりますね。
で、事故の数を押し上げている要因がおそらく病気と転落であり、なんでコレが増えているのかなあ?と思っています。
で、病気はともかく、転落事故の大半はそれなりに山慣れた人が多いわけであり、知識や経験が乏しいことによるしょーもない事故ってのは、北アルプス北部で観察する限り、少ない感じです。
ま、結局のところ、よくわからないのですが・・・・
まずストックをつく場所を定めてから足を出す、ストックに力をかけすぎる。しかし言うまでもなく、山はそう都合よくストックに力をかけていい場所だらけではないのであり・・。
病気はね、「山の突然死」という本もありましたが、中高年ほどリスクが高いのは下界も同じで、山に行くたびに毎回いちいち心臓から血管まで検査してるわけにもいかないでしょうから、仕方ないかと。
夏に登山医学会と言うのがあり参加しましたが、その席で講師の脳外科医の方が仮説ではありますが、「転落死の多くは病気と因果関係があるのではないか?」と言っていました。つまり山における病気の多数を占める「脳」と「心臓」に異常をきたして、それが引き金での滑落であっても、滑落による脳挫傷などがあれば死因はまず病気とはならないだろうと・・・。
(CTやMRを遭難者に使うとは考えにくいです)
成人病は山だけ例外にはならないということで(山登りはそれらの病気を誘発もするし・・・)そう考えれば登山者の高齢化がすすめば事故は増えていくのも自然の摂理かと思います。
>「転落死の多くは病気と因果関係があるのではないか?」
この仮説でしたら、転落しても助かった事例において、病院収容後精密検査を実施できれば実証可能かもしれませんね。山で事故った場合、搬送先となる病院はそれほど多くないので、学者さんが動けば難しいことではないかもしれません。
山岳遭難、いかにも中高年が多く、道迷いが増えているようですが、本州中部に限っていえば、中高年の遭難率は、推定登山人口(レジャー白書という統計に年代別推定登山人口が出ている:統計としての精度はやや怪しいが)と大きくは異なりません。80%が中高年ということですが、中高年が登山者に占める割合は78%です(上記統計による)。また道迷いも35%以上を近年占めていますが、実は東北北海道における山菜採りの道迷い数が大きく影響しています。本州中部では、道迷い比率は26%くらいです(滑落よりやや多いくらい)。こんな基礎的なことが共有されないかぎり、まともな遭難対策など不可能だと感じます。
結局のところ、警察発表がパターン化したまま、今日まで来ているのがアレなんでしょうね。発表している人は決して遭難の専門家とは限りませんから、前任者が書いたものを参考に書いているうちにこのようになったのかもしれません。