豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

登山相談は楽しい

2008年12月23日 | 遭難と救助について考える
白馬方面で夏山パトロールしている時は、早朝相談と言って山小屋の受付あたりに店を構えて朝の5時ぐらいから座っていることがあります。天気が良いとほとんど誰も来なかったりするわけですが、雨だったりすると途端にお天気相談所になるわけですね。

で、単純にお天気を聞いてくるだけなら普通に回答すればいいのですが、白馬から不帰キレットを越えて唐松方面へ向かう人だったりすると、ほとんどと言っていいほど、



「大丈夫ですかねえ・・・・・・」







と聞いてくるわけです。



「はーい、大丈夫大丈夫」なんて答えて何かあったらマズいので、もちろん「不安ならやめたほうがいいですよ」とアドバイスするのですが、中にはね、




「やっぱり危険ですか?」



とたたみかけるように質問してくる人もいるわけです。本当は行きたくて行きたくてしょうがないのだけど、パトロールの人が背中を押してくれないのが不満なのでしょうかね。中にはしつこく2~3回同じコトを聞いてくる人もいます。


何度も質問してくるほどの積極性があるなら、質問なんかしないで特攻すればいいと思っています。不帰キレットがいくら難所だとはいえ、風雨が強い日に突っ込んだら100%死ぬわけではありません。1%も死なないどころか、1万人通っても落ちる人が出てくるかどうか、でしょう。逆に天気が良い時の方が何でもない箇所で落ちるから、事故率は高いかもしれません。



かといって、立場上、


「これぐらい風雨が強い時の方が転落事故は少ないんだよおおおおお」



なんて狂ったコトは言えませんからねえ・・・・・




というわけで、「やめた方がいいんではないですかねえ」とアドバイスするけれど、かといって「危険だ危険だ!!絶対に行くな!」とは言いません。で、相談してくるようなレベルの登山者だと、この辺の微妙なアレをわかるわけがないので、


ムダに禅問答




が繰り広げられるわけです。



以前にもしつこく「危険か危険か危険か」と聞いてくる中高年女性登山者がいて、「相談するぐらいならやめた方がいいですよ」をこちらもしつこく連呼していたら根負けしたようで、結局、


「やっぱり行きます」


となりました。その決断は尊重するのですが、あんまりしつこく質問してくる態度がなんつーか不安だったので、

「くれぐれも注意してください。今日はヘリコプターが飛べませんよ」

と忠告したら、



「はい!自己責任で行きます!!」


と気合いの入った声で言うものだから、ますます不安になったことがあります。いくら自己責任と言ったところで、救助したり遺体を回収するのはコチラだったりするので、何の慰めにもならんです。

というわけで、登山初心者の方にアドバイスしましょう。山小屋の人に相談する際、「危険ですか」「私でも行けますか」は禁句です。答えようがありません。



↑この記事が参考になる、面白い!と思ったらクリックしてください。ランキングサイトです。

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (hayto)
2008-12-24 00:21:19
逆にアドバイスのしやすい質問の仕方ってどんなのでしょうか?
僕は「~ってどんな状況のコースですか?」って聞いてるんですが。
返信する
Unknown (bongo-pete)
2008-12-24 13:01:14
haytoさま

まあ、ごく普通の質問なら何でもいいと思いますよ。

要するに、こちらとしては出会ったばかりの相談者の登山能力なんてわからないわけです。だから「行けるかどうか」とか聞かれても答えようがない、というごく常識的なことをいくら初心者とはいえわきまえてくださいよ、ってなことなんです。
返信する
あなたのことは知らない (ニシ)
2008-12-24 21:06:18
「私でもいけますか?」懐かしいフレーズです。

むかし、ネット系山岳会で山行を仕切っていたとき、
「はじめて参加するんですけど、そのコースは私にも行けますか?」と聞いてくる人が、少なからずいました。
「私はあなたと御一緒したことがないし、山岳ガイドでもありませんから、あなたが大丈夫かの判断はできませんし、何かあっても責任持てません」と、正直にお答えしていました。
自分で大丈夫かの判断ができないようなところには、行くべきではないと思っています。でも、「大丈夫」って言ってもらいたい人が多いんですね。
返信する
なつかしぃ。 (サニー)
2008-12-24 22:04:17
小屋で働いてた時に「私でもそこに行けますか?」って電話が何回かかかってきましたね。
長老が「おらはあんたに会ったこともねぇのに、んなことはわからんずら。」って素晴らしい返事されてました。

返信する
Unknown (bongo-pete)
2008-12-25 16:16:48
ニシ様

初心者が不安なのはわかるんですけどね。

私は思いますけど、そのコースに不安があるならガイドブックや地図、それにネットを活用して一生懸命自分で情報収集すべきだし、それでも不安がぬぐえないのなら、もっと低いレベルの山を登り込んでいくべきです。

って書いたところで、正論過ぎってヤツですかね。


サニー

ま、定番の質問だからねえ。あんまり言い過ぎるとお客さんが来なくなってしまうから、責任逃れしつつ登れると思わせるのがテクニック(無責任)
返信する