村松潔氏の「稲荷」についての考察を読んで、現代人が忘れかけている日本人の一側面を強く感じました。
そこで、つい最近まで生きておられた、三井シゲノさんという稲荷信仰の巫女の語りを集めた本アンヌ・ブッシィ著「神と人のはざまに生きる」という本を読んでみました。
伏見稲荷大社の稲荷山を中心に、京都、奈良、大阪の古層に迫る、人間の魂の命がけの冒険譚です。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。
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(引用ここから)
私は13で母を亡くし、22で目が見えなくなり、27で夫に先立たれましたが、昭和9年9月9日、そのような私に神様は「夢のお告げ」でこのように教えてくれました。
「神の御用を裏切るがために、苦の絶え間がない。
10という日をもって「玉姫大神」の膝元に来れば、幸せの道に入れる。
3年修行すれば子供と共に暮らすようにしてやるからおいで」。
そしてこの神様の地所を探し当てるためには、「今いるこの行場より十数里へだたった、繁華街の真ん中に鎮座まします「紀伊の国の玉姫大社」を求めればよい」と。
あとでその場にいた人から聞かされたこのお言葉は、私が、故郷・奈良の「滝寺」の滝に身を打たれ、普通の意識とはちがった状態におりました時に思わず知らず口にしたものでした。
当時私は31才で、その日は毎月9日にするのと同じように、10人ばかりの人たちといっしょにおばあさん(大叔母)の神様をお祀りしておりました。
おばあさん(大叔母)は私の幼い頃、神様にささげる祈祷や、山中にかくれた神々のお社やお滝に行く道すじを教えてくれたものでした。
「滝寺」というのは村の北にあります行場で、失明して以来、私は足しげくそこへ通っては、滝に打たれながら神様にお祈り申し上げておりました。
「お告げ」の言葉から考えれば、かの〝繁華街″とは大阪でしかありえないと思い、すぐさま明くる10日、発とうと決意いたしました。
とある神社に着いた時、私は目が見えませんけれど、門前に並ぶ石灯篭の一つのその支柱に指先をふれて、そこに刻まれた、「安居天神」の御名を読み取ろうとしました。
それから境内に入ったのですが、足を踏み入れた瞬間、その場の作りが、まさにこの「お告げ」に見えたものそのままだと感じました。
境内の小山の麓にやってきますと、そこでおのずと足が止まりました。
そこだったのです、私があちこち探し回っていたのは。
そこにはちゃんとささやかなお社がございました。
私は御前に額づきました。
持ってきたお供え物を差し上げようと思い、携えていた手ぬぐいで拭いて差し上げてから、おにぎりの包みを開いて燭台の上にお供えしました。
最後に、そこに祀られていらっしゃる神様に向かって精一杯、「あなた様が「夢のお告げ」に現れなさった神様でいらっしゃいますか?」と声をかけました。
私は心の奥の方で、「神さん」が「そのとおりだ」とお答えになったような気がいたしました。
その時です。
この見えない右目から白の「巳(みい)さん=蛇」がひょろりと流れ出て、スルスルと足を伝って降りたかと思うと、お供え物の箱の下に姿をくらましたのです。
その箱の下を手探りしますと、骨と垢に化した「巳(みい)さん」の抜け殻がございました。
私は「巳(みい)さん」の脱ぎ捨てた衣を手に取り、お供え物を包んでいた紙の上に乗せて、「これこそきっとわたしの守り神にちがいない」と心の内で言いながら、それをおにぎりの横に奉り、それからもう一度神様にお伺いを立てました。
私は喜びに感極まりながらも、同時にまた当惑しておりました。
といいますのも、不意に私の右目から現れて、この足を這った「巳(みい)さん」の〝お出まし″を何と心得てよいのやら、わからなかったものですから。
ただこれが「玉姫さん」だとしたら、すばらしいものだと思うばかりでした。
右目はまったく見えませんでしたけれども、左目の方は薄もやの中にたくさんの赤い斑点がぼんやり見えていましたので、お社の周りにぐるっと小さな吊り灯篭がたくさん並んでいるのだと察することができました。
そのうちの一つを取り外し、顔に目いっぱい近づけて、なんとか読み解くと「玉姫大明神」とありました。
このようにして私は、「夢のお告げ」に示されていたところに自分はちゃんと辿り着いたのだと、そしてこのお社こそ、まさしくこれから私が身を合わすことになるところなのだと心得たようなわけであります。
(引用ここまで・写真(中)(下)は東京新宿の花園神社稲荷社)
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またしても、ヘビが現れましたね。。
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