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キリストはなにを食べていたのか?(1)・・ユダヤ教徒としてのイエス

2014-11-08 | 古代キリスト教


「キリストはなにを食べていたか?」という本を読んでみました。

なんと、図書館の「健康」の区域に並んでいたのです。

つまり「健康法」の一つとして、キリストの食生活を調べるという意図で書かれたものです。

なので最初に、翻訳者による「後書き」の説明を見てみたいと思います。

リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。


*****

( 引用ここから)



「後書き」

この本はイエス・キリストの食生活を「聖書」から掘り起し、それを医師としての立場から、現代の乱れた食生活と比べてどんなに理にかなっているかを説いたものです。

本書の面白さは、まずキリスト教がユダヤ教やイスラム教に比べて、霊と肉体を極端に切り離し、肉体をおとしめているのに対して、本書では「キリストが普段何を食べていたか?」という、キリストが肉体の次元に属することに照明を当てていることです。

すると、キリストがとても身近な存在に思えてきませんか?


イエスが普段何を食べていたのか?

こう問い直すと、お堅いキリスト教徒は、何という不謹慎な、と眉を吊り上げることでしょう。

それはイエスの肉体を強調するからです。

彼らにとって地上のキリストは、天上のキリストの幻影だからです。

しかしわたし達がジャンクフードでめちゃくちゃになった肉体から回復するために、イエスと彼の同時代人(=ユダヤ教徒とイエスの弟子たち)が食べていた食べ物にならうことは、新しいイエスの福音だと言えるのではないでしょうか?


肉体をおとしめるキリスト教の極端な傾向が、ジャンクフードというジャンク(がらくた)を平気で食らう傾向の原因になってきたとさえ言えます。

地上のキリストが幻影なら、肉体で生かされている地上の私たちも幻影と言えるでしょう。

私たちは、肉体を持つがゆえに死を逃れない存在です。

だからこそキリスト教は、この肉体を粗略に扱う傾向に歯止めをかけられなかったのかもしれません。


その最たるものが、今日の消費主義です。

おそろしいことに、ジャンクフードを含めた今日の悲惨な消費主義は、ユダヤ教の「旧約聖書」、その「創世記第3章~第4章」で予告されていました。

アダムとイブは蛇にそそのかされて禁断の木の実を食べた結果、神によってエデンの園を追放されました。

二人には息子が二人いました。

小麦などを栽培する長男のカインと、大地の自然の成り物を食べ、羊などを放牧するだけの弟のアベルですが、なんとカインはアベルを殺害しました。

原因は神がアベルの生き方をよしとし、カインの生き方を喜ばなかったので、カインが嫉妬したためです。

つまり自然の成り物で生きるアベルは「狩猟採集経済」のシンボルだったのに対して、小麦を栽培するカインは、「栽培農業経済」、ひいては後の「産業経済」のシンボルでした。

「産業経済」(=カイン)が「狩猟採取経済」(=アベル)を殺したのです。

地球の資源をどんどん加工して人工製品に変えていくのが「産業経済」です。

今や、人類は石油資源を使い果たし、大気を汚染し、オゾン層を破壊しました。

そしてジャンクフードという人工の加工食品で自らの肉体を汚染しているのです。

「禁断の木の実」とは、この「産業経済」の引き金を引かせる悪しき知恵のことだったのです。


人間は地球資源を加工して、高性能製品を開発しては、神の全能の領域に迫ろうとしてきました。

この神を恐れない傲慢さ。。

この恐ろしい「聖書」の予告に、私たちはどう対処すればいいのでしょうか?

本書の著者が言うように、まずは、出来るところから始めましょう。

私たちは死を逃れない存在だからこそ、自らの肉体を大切に扱うべきなのです。

正しい食べ物を規定したユダヤ教、特に「旧約聖書」の「レビ記」に従って、短い人生を深刻な使命と緊張の中に生きた地上のキリスト。

その「ひそみ」に倣うことが、一番分かりやすい「まっとうな生き方」ではないでしょうか?


「レビ記」その他のユダヤ教の食物規定は、この世が始まった時から存在したように語られていますが、その多くは、モーゼに率いられてエジプトを脱出し、40年間砂漠をさまよった時期に生まれたものと考えられます。

昔、ヨーロッパにペストが流行をきわめた時、ユダヤ教徒だけが罹患率が極端に低かったのも、日頃の食物規定で食べ物の扱いに細心の注意を払っていたせいだったと言われています。

もっとも、そのためにキリスト教徒たちは「やつらは魔術を使って生き延びた。いやこのペスト自体、奴らが俺たちを滅ぼすために引き起こしたんだ」と勘違いして、一層ユダヤ教徒らを迫害したのでしたが。


「聖書」の物語はあくまで伝説ですが、考古学の成果で少しずつ、歴史との接続がなされてきました。

わたしはアメリカ人の精神的中枢に食い込んだ「キリスト教右派」の研究者でもありますが、

なにしろブッシュ政権の車の両輪が、「ネオコン」と「キリスト教右派」である以上、良くも悪くも、この信仰集団(全米で4000万人)は無視できない勢力なのです。

しかし昨今、この勢力は単なる無知蒙昧な人々ではなくなり、大学院出の信徒らが続出する事態です。

2006年秋の中間選挙では、彼らの28パーセントが共和党を離れて民主党に票を入れ、民主党の上下両院制覇をもたらしたと言われています。

本書の著者の人気も、「キリスト教右派」の良い方向への脱皮の現れもしれませんね。


博士が「ユダヤ教徒としてのイエス」を強調し、ユダヤ教の食物規定を重視したことは、本来のキリスト教徒の一部の反感もかいました。

しかし「キリスト教右派」の斬新さは、「終末到来の現場としてのイスラエル」の重要性にかんがみて、従来のキリスト教のように、ユダヤ教徒を「イエス殺しの元凶」呼ばわりせず、積極的にユダヤ教徒と連携し始めたことです。

ともかく産業主義の弊害に目覚め始めたアメリカ人の多くは今、懸命に自分の方向修正を図りつつあります。

同じ弊害は、日本をも襲いつつあります。

本書が、そのための解決法の一つになることを祈りたいと思います。


             (引用ここまで)


               *****


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