始まりに向かって

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レヴィ・ストロースが100歳に

2009-02-12 | その他先住民族
先日新聞を見て、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ・ストロース氏がご健在で昨年11月に100歳になられたと知り、思わずうれしくなりました。

大学なんてやめてやる、と息巻いていた私でしたが、この人の著作はすばらしかった。。
この人の本を読めるなら、勉強したいと心底思いました。

「野生の思考」への敬意と熱意と謙虚さを教わったと思っています。

当時流行っていた、既成文化を打破したいというカウンターカルチャーの底堅いバックボーンであり、日本人では北沢方邦(まさくに)さんなど、切れ味よくかっこ良いと思って何度も読み返したものです。

奇しくもその北沢方邦さんは1971年、日本で最初にホピの地に行かれた方で、わたしにとっては、カウンターカルチャーとアメリカ・インディアンはより一層ワンセットになって刷り込まれたのだと回想します。

もう30年近く読んでいないことになりますが、今読み返したらどんな気持ちがするだろうかと、もう一度読む日が楽しみでたまりません。



新聞のレヴィ・ストロースに関する書評欄から少し転載します。


      *****



「人間を理解しようと思うならば、まずは遠くから見つめなければならない」というルソーの至言に導かれ、アマゾンの密林に暮らす先住民族の調査を始めたのは1935年。

以来、婚姻、トーテム信仰、神話と続く膨大かつ壮大な研究を支えたのは「人間科学の究極目標は人間を構築することではなく、分解することにある」という信念だった。

人間の意識の深層で働く思考のコード(構造)を解析しようとする彼の姿勢は人間の自由意思の力をうたい上げた旧友サルトルとの対立を決定的にし、「反人間主義」と糾弾された。

しかし普遍的な「構造」の抽出を通してレヴィ・ストロースが打ち出したのは、先住民族を偏見なく眺める視座であり、西洋近代を相対化し、人類の文化の多様性を尊重する世界観に他ならない。

初期の論考集である本書は普遍主義と文化相対主義の対立をみごとに昇華しながらそうした器の大きい「人間主義」を説いている。

文化の差異を尊重するどころか、むしろ恐れ排する思いに駆られがちな現代世界にあって、私たちは半世紀以上前に示された著者の卓見に少しでも近づくことができただろうか。

「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」。世界は人間の存在や知性など介せずとも、自ら考え、歩み続けていく。

真の人間主義とは、こうした厳粛なる諦念と自戒からしか生まれ得ないのではないか。

著作をひも解くたびに引き込まれる崇高で美しい、誰にも模倣できない全く異質な知の次元。そんな不思議な感覚に私を包み込んでくれる思想家は彼しかいない。これまでも、そして、きっとこれからも。

1月11日読売新聞 渡辺靖・書評レヴィ・ストロース「人種と歴史・復刻版」


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AFPbbNewsレヴィ・ストロース100歳に
http://www.afpbb.com/article/life-culture/culture-arts/2543895/3565325



Wikiレヴィ・ストロース
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%83%B4%E3%82%A3%EF%BC%9D%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%B9
クロード・ギュスタヴ・レヴィ=ストロース(Claude Gustave Lévi-Strauss, 1908年11月28日 - )はフランスの社会人類学者、思想家である。コレージュ・ド・フランスの社会人類学講座を1984年まで担当し、アメリカ先住民の神話研究を中心に研究を行った。アカデミー・フランセーズ会員。

専門分野である人類学、神話学における評価もさることながら、一般的な意味における構造主義の祖とされ、彼の影響を受けた人類学以外の一連の研究者たち、ジャック・ラカン、ミシェル・フーコー、ロラン・バルト、ルイ・アルチュセールらとともに、1960年代から1980年代にかけて、現代思想としての構造主義を担った中心人物のひとりとしてよく知られている。

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