自由が丘を歩いていたら
突然、バサッバサッという音
「ほにゃ？」と思った瞬間
背後からカラスが襲ってきて
僕の頭を爪で攻撃してきた！
「！？」
心底驚き動揺した
こんなことは初めてだった
恐怖もあったが
カラスごときに馬鹿にされた怒りで
頭の中が真っ白になった
カラスは二羽いた
一羽が攻撃担当で
もう一羽がそれを楽しんでみている
という感じだった
情けなく屈みながら頭を抱え
後ろを振り返りながら小走りで進む僕を
カラスは電線をピョンピョンと伝いながらついて来る
完全に小馬鹿にした態度だ
その憎いカラスは 再び襲ってきた
「コノーッ！」
僕は声を張り上げて
手にしたバッグを思い切り振り回した
飛んでくるカラスを倒そうとしたのだ
が…奴の方が一枚上手
簡単にバッグをすり抜け
次の攻撃に身構えている
もー許せない
殺意が湧き上がる
僕は石ころを探した
けれども、自由が丘の道に石ころはない
ここが北海道なら
武器には困らなかったはず
けれども、髪をクルクル巻いた
自由が丘マダムが闊歩するこの道には
何も落ちていないのだ
悔しい～！
仕方なく、僕は身を屈め
情けなく小走りで退散したのだ
実はこの時
カミサンも一緒だった
僕がカラスに襲われているとき
彼女は「攻撃しちゃダメよ」
「よけい襲ってくるわよ」と
アドバイスらしき事を言っていたのだが
ケラケラ笑っていたのだ！
なんということ！
旦那が襲われているのに
笑ったのだ
カラスへの怒りがカミサンに向いた
僕はカラスの攻撃から避難しながら
カミサンを非難した
「笑うとこと違うだろっ！」
カミサンは ハッとしたように
笑顔を消したが 後の祭りだ
勘弁ならない
「離婚」という言葉が脳裏をよぎる
絶対に許すものか、と決意する
で…
その夜
無口にビールを飲み
カミサンの作ったツマミを
「マズイ、心底マズイ」と思いつつも
ムシャムシャ食べていると
「まだ怒っているの？」とカミサン
「当たり前だろっ！」と僕は声を荒げた
「でもね…逆だったらどうする？」
「当然、助けるに決まっている！」
と言った瞬間、憎いカミサンの頭に
ふてぶてしいカラスが乗っているのを想像した
なんともマヌケである
その図が見えたとたん
僕は吹き出した
「ブーッ ワハハハハ！」
笑ってしまっては格好がつかない
仕方なく「全く…」と誤魔化した
しばらくしてカミサンが言う
「何人も人が歩いていて 私もいるのに
何故にカラスはウチの亭主だけ狙うのか」
「この人は ついているのかいないのか
普通はかかわりあわない変わった人と遭遇し
変な事件が向こうから寄ってくる
つくづく変わった人だ」
そう思ったら
なんだか可笑しくなったらしい
それを聞いて僕も可笑しくなった
ナンダカなぁ～
カァ～！
