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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

災害にどう向かい合うか <九州北部豪雨 半年、爪痕深く>などを読みながら

2018-01-06 | 災害と事前・事後

180106 災害にどう向かい合うか <九州北部豪雨半年、爪痕深く>などを読みながら

 

半年前の九州北部を襲った異常で急激な豪雨による災害もまた甚大な災害をもたらしました。当時は、その原因についてめずらしく連続して書いたことを思い出します。災害列島日本は、いつの世にもどこでも災害が起こりますね。

 

明治維新の幻想を取り上げる論の中には江戸時代の循環社会や平和で安定的な社会を見直す議論も少なくないと思います。私もそのような見解に一定のシンパシーを持たないわけではありません。でも江戸時代はまだまだ自然の脅威に対して脆弱であったと思います。

 

日照り・飢饉・洪水氾濫・地震・噴火から人為的な火事も含め、頻繁に起こっていたのですから、忍耐強い人間性が形成されていたのではないかと思うぐらいです。こういった自然災害や火災などに対して江戸幕府や各藩がどのような対応を行ってきたかも興味深いテーマですが、それは別の機会にしたいと思います。

 

現代の状況に目を向けたいと思います。

上記記事では、<福岡、大分両県で関連死1人を含む40人が犠牲となり、2人が行方不明のままの九州北部豪雨は5日、発生から半年となった。被災地では、濁流が集落を襲った爪痕がいまだ生々しく残る中、犠牲者の冥福を祈って、花を手向けたり、手を合わせたりする遺族や被災者の姿があった。>

 

何よりも犠牲者の冥福を祈ることでしょう。身近な人を失った喪失感は容易に回復できないことは誰しも長く生けていれば経験の数も増えますが、それに加えて自宅や働く場所、親しんできた生活環境をも同時に失うことはさほど経験できることではないでしょう。

 

普通このような災害に備えることは一般論としては頭の隅にあることでしょうが、真剣に予防策も、万が一被災したときどう対処するかまで具体的に想定して生活している人はほとんどいないでしょう。それは行政側としてもさほど大きな違いがないかもしれません。

 

最近ようやく洪水や津波などを予期して対応する体制が少しずつ具体化してきましたが、まだそのシミュレーションも実践に対応できるまでのデータも制度設計もできていないと思います。

 

他方で、九州北部豪雨でも、これまでの気象庁予測システムの予想を超える異常事態が想定外のスピードで累積的大量豪雨が発生しているのですから、上記の既存データを活用したシミュレーション自体がまだ実効可能性が乏しい中、このような異常事態にはまったくお手上げ状態でしょう。

 

その意味では、江戸時代の災害状態と幕藩体制が対応したこととさほど大きな違いがないかもしれません。まだ江戸時代の人々の場合はいついかなるときに異常な自然災害が起こるかわからないと思いながら生きていた分、災害に対する対応力があったかもしれません。

 

火災があってもすぐに簡易な家をみんな建てていくことが当たり前であったかもしれません。洪水で家が流されることも覚悟していたので、簡易な家が多かったでしょうし、すぐに建て直して住み続けることもできたのかもしれません。氾濫原に住んでいることを、その土壌豊かさを享受しつつ、危険性を感知していたのではないかと思うのです。

 

ところがわが国は近代化して都市計画制度も西欧から形だけ導入しましたが、土地利用可能な都市計画区域の中で、重要なハザード地域を外す(あるいは制限する)ことまで思い至らなかったようです。

 

よく言われる所有権絶対思想が強かったのでしょうか。たしかにその側面はあったと思いますが、わが国の「民主主義」の出発点が地租を高額納める地主のみが選挙権を持つといういわゆる制限選挙制に問題がこの思想をわが国特有のいびつな形にした要因の一つだと思うのです。

 

所有権のあり方を学ぶ機会を社会生活や教育を通じて学び経験する機会もなかったように思うのです。江戸時代は、その意味では地域所有権的な形でそれぞれの形態を村社会を通じて形成し子どもの頃から体験して学んでいたのではないかと思うのです。

 

でこのようないびつな所有権思想は、氾濫原と指定すると、あるいは土砂崩壊危険地区などと指定されると、土地の評価が下がるとして、とても国会でそういった法案が通らない状態となっていたと思うのです。むろんこれらの制限立法をしようとする動きは戦後多くの災害を経て起こったわけですから、その時点では男性も女性も、大地主も小地主も、借家人も借地人も、だれでも選挙権をもつわけですから、さっきのような議論は通用しないともいえます。

 

しかし、戦前までに作られた法令は、制限選挙の基で、地主に有利な形で作られてきたものであり、多くの人は所有権のあり方について学ぶ機会をおそらく100年近くは失っていたように思うのです。農地改革で示された当時の国会(帝国議会でしたか)の偏向性は明白ではないかと思うのです。

 

前置きが長くなり申し訳ないと思いつつ、少し触れておきたくなって、脱線しました。

 

元に戻って、現在の復旧・復興についてどうなっているかについて、毎日記事大分版は<九州北部豪雨半年 「改良復旧」「創造的復興」を 日田市、5年間の計画案発表>と日田市の計画案を紹介しています。

 

朝倉市の被害が甚大だったと思うのですが、被害が大きいと復旧・復興計画も時間がかかることは予想できます。

 

さて計画案は<18年度を「復興元年」と位置づけ、被災者の速やかな生活再建に向けて施策を展開するとともに、「次の災害に備える」ことを基本に原形復旧にとどまらず防災機能を高める「改良復旧」「創造的復興」に取り組む。>

 

計画案の農業分野については<九州北部豪雨による農地・農業用施設の被害状況は、農地が1609件(被害額19億700万円)、農業用施設689件(18億4400万円)に上る。これを受け、被災農地の大区画化、水田の畑地化、新たな園芸リース団地の整備など生産基盤の強化を進める。その際、集落営農組織などに農地を集約することで、経営効率化や事業に伴う農家負担の軽減を図る方針だ。対象地区は大鶴、小野、朝日地区。>

 

効率化・生産性拡大がこの機会に本格化しようというのでしょうか。

 

被災者支援については<被災者支援では、みなし仮設住宅などへの避難者が今も66世帯、175人いることを重視。住み慣れた地域で引き続き暮らしたいという希望も多く、安価な家賃の市営住宅建設や住宅分譲地の造成による「地域内移転」を支援する方針だ。>

 

将来的な予防策としては<自主防災体制の強化と見直し、災害ボランティアのネットワーク化、流木をせき止めて水だけを流すスリットダム新設、>と、私が関心をもった流木への対処策を取り上げています。

 

この流木対策については、森林の荒廃状態についてはメスを入れていませんが、林野庁に対応を委ねているのでしょうか。あるいは日田市の場合は林業が盛んで、治山対策としての間伐も相当実施されていると言うことでしょうか。朝倉市の山林での土砂崩壊、流木流出が多かったような印象を受けたので、その当たり実際のデータを踏まえて計画案を示してほしいものです。

 

このほか重大な論点が指摘されていました。

毎日の別の記事<九州北部豪雨半年 柿農家の決意 その甘み守り抜く 自宅全壊、移住すれども>です。

 

日田市の計画案は「地域内移転」を支援する方針が基本のようでした。でも住民はそこで悩むでしょうね。

 

<昨年7月の九州北部豪雨では、大量の土砂や流木が集落に流れ込んだ。全半壊の家屋は自治体の調査が進むにつれて増え、福岡、大分両県で1400棟を超える。5日で豪雨から半年。自宅を流された被災者らは、地元に残るか、離れるかの岐路に立つ。福岡県朝倉市の柿農家の男性は移住を決断する一方、地元のブランド柿を続けていくと決めた。>

 

その男性は<同市杷木志波(はきしわ)の平榎(ひらえのき)集落に自宅があった日野博さん(53)。豪雨当日、自宅の裏を流れる川が増水し、敷地内に濁流が流れ込んできた。危険を感じ、近くの住民と高台の倉庫に避難。木造2階建ての自宅はあっという間に濁流にのみ込まれた。>

 

彼は悩んだ末、自然災害の怖さと、柿農家としての誇り、伝承を考え、行政の対応を待たず自分に合った計画を進めています。

 

<地元に残って柿づくりを続けたかったが、川沿いでは「またいつ何が起きるか分からない」と考える。みなし仮設の入居期限は2年で、その間に川の整備などが間に合うとも思えない。集落の37世帯約70人で集団移転する話も進んでいない。

 「復旧を待っていたら年をとってしまう」と、生まれ育った地元を離れる決断をした。柿づくりへの情熱は変わらず、柿畑に通えるように隣接するうきは市で中古住宅を購入することにした。>

 

彼の場合は自ら作り上げた柿の評価を信頼したのでしょう。

<柿畑の大部分は被災を免れ、豪雨後も東京の高級ホテルの発注に応じられた。杷木志波の中でも山あいに近い平榎集落の柿を「奥志波柿」と名付けて仲間とアピールしていく。>

 

自分が住み続けてきた小さな空間は、親しい人たち、あらゆる息づかい環境が身体になじんでいるでしょう。でもそこが、日本という災害列島にあり、温暖化の影響でいついかなる異常事態が生じるかわからない今日、絶対安全な場所はないと覚悟することも大事かなと思うのです。

 

彼の場合生産拠点が洪水に対して安全なところであったことから、住む場所を別に選んだという選択は勇気がいったと思いますが、有効な判断とも言えるように思います。

 

わが国の河川は、ほとんどが明治維新まで、いや戦後初期までは氾濫を繰り返してきたわけで、治水目的のダムや堰など多様な防御策で一定の洪水は抑制できる状態にきていると思いますが、自然の脅威はやはり人間の力を超え続けると思うのです。

 

その意味では今後の土地利用のあり方自体を大幅に変えるだけの意識の転換が必要ではないでしょうか。人工的手段で自然の猛威を封じ込めることは無理だと思います。ハザードの程度をデータを精密にして、何段階かに区分して、早期に危険を察知して回避する方策を優先することを検討してもらいたいと思うのです。

 

うまく整理できないまま、書いてしまいました。また別の機会にまとめてみたいと思います。また明日。


地震国日本 <地震調査委 四国M6.8確率 断層リスク、他と変わらず>などを読んで

2017-12-20 | 災害と事前・事後

171220 地震国日本 <地震調査委 四国M6.8確率 断層リスク、他と変わらず>などを読んで

 

関東で住んでいた頃、地震の脅威を日常的に感じていました。地震の揺れは頻繁だったと思います。さほど大きいわけではないのですが、それでも家財が揺れたりするだけで気持ちのいいものではなかったですね。とくに鎌倉に居住を構えたとき、関東大震災で多くの被害を受けたことを知り、余計不安になりましたが、それは関東一円ですから、どこに住んでも多かれ少なかれ地震被害のおそれはありますね。

 

カナダに滞在しているとき、ほとんどその地震の揺れを経験しませんでした。それだけで気持ちの余裕ができた思いがありました。それはもしかして縄文以来の日本人が常に意識してきたことで、DNAとしてきっちりと継承されているのかもしれないなんて思ったりします。

 

で、当地にやってきた後、わずかな揺れはなんどか経験しましたが、関東で経験するようなものと違い、不安を感じるものではありませんでした。高さ10m弱の古民家でリフォームの家に住んでいましたが、それでも全体が一瞬揺れてもしっかりしていました。建築士が古民家再生のプロで、耐震補強をしっかりやったためでしょうか。また、地震の規模が関東に比べ小さいからでしょうか。それにしても当地では不安を感じることはありませんでした。

 

ただ、いつも気になるのが、中央構造線が走っている点です。大きな断層が日本列島を横断しているわけですから、一体全体、形成過程も含め、どれだけの地震規模になるのか潜在的な不安はありました。

 

活火山をもじっていえば、休止断層なんでしょうか。表現はともかく、そのような評価をされているのを聞いた記憶があり、それでつい安心して、南海トラフ大地震や大津波は襲ってきて大災害を招く危険性は高いけど、和歌山の東北隅にあるこの地は安全地帯なんて勝手に思っている節がありました。

 

そんなとき昨日の毎日夕刊では<地震調査委四国M6.8以上9~15% 中央構造線・長尾断層帯、今後30年で>と<地震調査委四国M6.8確率 断層リスク、他と変わらず 別タイプも要警戒>という2つの記事がでました。前者は飯田和樹記者、後者は池田知広記者によるもので。

 

前者では<政府の地震調査委員会は19日、四国地方の活断層を対象にした地震の長期評価を公表した。対象とした5断層のうち、マグニチュード(M)6・8以上の地震を起こす可能性がある活断層は「中央構造線断層帯」と「長尾断層帯」の二つとし、30年以内に四国地方のどこかで同規模の直下型地震が発生する確率を「地域評価」した結果、9~15%と算定した。>と数値を上げています。

 

これが低い確率と考えるかどうかは、素人ではわかりかねますが、<昨年4月の熊本地震(M7・3)を引き起こした布田川(ふたがわ)断層帯で大きな地震が起きる確率は、ほぼ0~0・9%とされていた。>というのですから、まだまだこの確率を低いとか高いと安直に判断できませんね。

 

さて、問題の中央構造線については、<四国を東西に貫く中央構造線断層帯は6区間に分けていたが、活動周期の違いなどから10区間に再分割。区間別で発生確率が最も高いのは、ほぼ0~11%とした愛媛県の「石鎚山脈北縁西部区間」(M7・5程度)。四国電力伊方原発に近い同県の「伊予灘区間」(M8・0程度かそれ以上)はほぼ0%と評価した。同区間は徳島県と愛媛県にまたがる「讃岐山脈南縁西部区間」(発生確率ほぼ0~0・4%)と共に、地震の規模を最大としている。

 また今回、中央構造線断層帯に大分県の「別府-万年山(はねやま)断層帯」の東側を組み入れ、長さを約360キロから約444キロに延ばした。>

 

その危険性については気になる意見が委員長から発表されています。<平田直(なおし)委員長は「中央構造線断層帯は、全国の主要活断層114の中では地震発生確率が高い。震源が浅い地震が近くで起きれば甚大な被害が出る」と話した。>

 

とはいえ、この断層帯も詳細な区間に細分化してそれぞれ評価した結果だと、ま、私が居住している当地(五条谷区間に相当)では不明ということで、確率が低い位置付けでしょうか。それで安心してはいけませんが。

 

これは地図付きでしたが、ウェブ情報にはありませんでしたので、<地震本部地震調査研究推進本部の昨日発表したウェブサイトを見ると<四国地域の活断層の地域評価>に、詳細な報告と地図も掲載されていましたので、関心のある方は参照してください。報告書のダウンロードもできます。

 

後者の記事では、<調査委がこれまでに公表した中国地方(50%)や九州地方(30~42%)と比べて低い数値だ。ただ、これは大きな地震を起こす恐れのある活断層の数が中国や九州より少ないためで、各断層のリスクが他地域より低いわけではない。>とやはりこの数値だけで、リスクを過小評価しないことが指摘されています。

 

そして<これまで伊予灘が西端とされていた中央構造線断層帯は、連動する可能性のある範囲が西へ大きく延び、一部が九州地方にかかることになった。10区間に分けて算出した地震発生確率は区間ごとにばらつきがあるが、熊本地震のように隣り合う断層が連動する可能性もあり、確率が低い区間でも注意が必要だ。 >と近隣地域との連動、拡大化についても注意を呼びかけています。

 

なによりも心配なのは伊方原発への影響ですが、この点は<四国電力伊方原発(愛媛県)は、同断層帯が480キロにわたって同時に活動する巨大地震を想定して設計している。>ということで、先の広島高裁決定でも、この報告は判断基礎になっていないと思いますが、地震による影響は規制委の判断を認めていることから、今後の裁判所の判断に影響する可能性は低いでしょうね。やはり火山噴火・火砕流の影響の方が重視されるでしょう。

 

今日は、この<中央構造線断層帯(金剛山地東縁-由布院)の長期評価(第二版)>の報告書をいつか検討する機会があればと思って、取り上げました。内容的には結果だけのように見えますが、どのような判断資料と判断過程でそうなったのか、考える資料にはなるかもしれないと、とりあえずブログに取り上げました。

 

 


流木の由来(4) <九州北部豪雨 1カ月 流木、被害の連鎖>を読んで

2017-08-05 | 災害と事前・事後

170805 流木の由来(4) <九州北部豪雨1カ月 流木、被害の連鎖>を読んで

 

今朝の毎日を見て驚きました。上記の見出し記事の写真と解析です。土砂崩れの発生は「赤谷川」という聞いたこともない小河川です。探すのに大変なくらいです。もう一つの写真には、山腹崩壊が多数発生したエリアで、ピンク色の斜線で表示されています。そのすぐ山を越えたところには日田林業で有名な日田市が一部写っていますが、山腹崩壊がさほどなかったということでしょうか。流木の堆積場所として黄土色で表示された箇所が筑後川に流入するおそらく長さ1020kmもない短い赤谷川の大半を埋め尽くしているのです。そして犠牲者の自宅等の場所もその流木堆積場所付近か、そのさらに支流の流域沿いに集中しています。

 

土砂崩れの写真では、まだ判別が困難ですが、概要2つの類型を見ることができるかなと思いました。一つは前面のなだらかな斜面で、畑耕作が行われているような土地利用の場所で、山崩れが起こっています。もう一つは、奥の方で、かなり急傾斜地で人工林の造林が行われたような場所で発生した山崩れです。ただ、ピンク色の斜線で表示されたところでは、赤谷川周辺よりも、山腹崩壊が大規模に起こっているようにも見えますし、より広範囲にも見えます。この写真だけではさらなる評価は困難かなと思っています。

 

で、これらの写真を見て、何が私を驚かせたかというと、筑後川の流域に発展した街、朝倉市の背後にある森林がある意味では山腹崩壊を起こして牙をむいたことです。他方で、まだ情報がきちんと集まっているとはいえない段階ですが、日田市ではそれほどの山腹崩壊が起こらなかったのではないかということです。

 

それはどういうことかというと、日田林業は西日本の中でも割合活発なところではないのかと思っています。統計資料を持っていないので、正確ではありませんが。他方、<朝倉森林組合>のホームページを覗きましたが、さほど活発な事業展開をやっているようには見えませんでした。同組合が管轄するのは朝倉市を含め3市町村で3.6haということですが、事業を担っているのは専従職員16名、現業職員17名です。これは一般的な林業地では標準的ではないでしょうか。ただ、これだけの人員ではとても現在ある間伐が必要とされている森林について、適正に間伐を実施できる体制にあるとはいえないように思うのです。年間に伐採・搬出する材積量は、本来必要とされる量に比べて相当低いと思うのです。

 

なお、林野庁の<間伐の実施状況等>では、<地球温暖化対策として、我が国は、2020年度における自主的な温室効果ガス削減目標を2005年度総排出量(139,700CO2トン)比3.8%減以上としており、森林吸収源対策では約3,800CO2トン(2.7%)以上を確保することとしている。>

 

<この目標を達成するため、「間伐等特措法」に基づき農林水産大臣が定める「特定間伐等及び特定母樹の増殖の実施の促進に関する基本指針」では、平成25(2013)年度から平成32(2020)年度までの8年間において、年平均52haの間伐を実施することとしている。>とされていますが、実際の間伐実績は減少の一途ではないかと思います。

 

いや、平成27年度以降は統計数値を上げていないのですから、わかりませんね。というより、間伐面積の換算自体がはたして適正かも疑念が残ります。

 

それにこの統計は単に間伐した面積ですが、その一定の割合が切り捨て間伐として山林内に放置されているのです。この朝倉森林組合の実績がどうなのか明らかになっていないので、なんともいえませんが、要間伐森林の適正な間伐があまり実現できていなかった可能性を考えています。

 

間伐事業はたしかに地球温暖化対策として有効と評価されていますが、治山・治水対策としての有効性をも検討する時期ではないかと思うのです。

 

仮に日田市の森林ではさほど山腹崩壊が起こっていなかったとすると、日田林業では、森林組合だけでなく民間林業者が活発に事業展開を行って、バイオマス事業への参画や集成材加工への進出など、新たな商圏を拡大して、間伐事業を推し進めているようにも聞いています(このあたりはまだ情報不足で確認の必要がありますが)。

 

他方で、朝倉市を含む問題の森林地域では、日田林業のような活発な間伐を行っていなかったのではないかと推測しています。

 

そのような間伐の内容・程度・適正さが、今回の山腹崩壊、さらには大量の流木流出につながったかは、早計な判断はするべきではないですが、このような視点での考察がいま行われているのか、疑念を抱きます。毎日記事などでは多くの多様な専門家の意見が出ていますが、どうも林業関係の専門家の意見は見たことがありません。それで、今回の大量流木発生の要因を明確に検証できるのか、懸念するところです。

 

むろん、山腹崩壊のメカニズムは、多様な要因を考える必要があり、異常な短時間集中豪雨に加えて持続的豪雨による累積的な影響、地質自体が保水性の点で脆弱性があったかどうか、多面的な考察をしてもらいたと思うのです。が、同時に上記のような視点を忘れてはならないように思うのです。

 

というのは、国土地理院の地形図で当地をざっと見る限りでは、海抜100m強のの赤谷川の周辺でも、標高200mないし300mといった小高い山しかなく、さほど急峻な地形ではないのです。少し奥には5ないし600mの頂をもつ山もありますが、だいたいにおいて休漁と言ってもおかしくないほどの規模です。

 

それでも流木が河川に流れ出すと、途端に凶器となり、また人工堰となり、とりわけ小河川では河川氾濫は時間のいとまがありません。そういった流木、換言すれば「立木」のハザード性について、改めて見直す必要を感じてています。

 

同じ毎日の別の記事では<くらしナビ・ライフスタイル浸水可能性 確認し備える>と、最近の異常豪雨がいつどこで発生するかわからないことから、事前の注意を呼びかけています。その中でハザードマップの存在を指摘しているのは、それ自体はよいことだと思います。

 

ただ、現在公表されているハザードマップは、残念ながら、ハザードそのものをきわめて限定的に想定していることから、当然、北九州豪雨のような事態には対応できません。すべてのハザードに対応するマップを作るのは容易でないことは理解できます。ただ、こういったマップを作成する上で、基本的な配慮を欠落していることがある場合もあるため、注意を要するのです。

 

たとえば、中小河川でも一定の水位以上は氾濫することは誰でも想定できます。その場合異常降雨量が突発的に発生したら対応できないのも予想可能です。しかし、今回の流木のような事態は、より不測の危険が拡大するにもかかわらず、ほとんど想定されていないのです。たとえば、河川の場合蛇行していると流木が堆積する可能性が高まりますね。あるいはかかっている橋桁などに流木が衝突あるいは詰まったりすることもあります。あるいは鉄道法敷の下に河川がトンネル状に流れているような場合はいっぺんで詰まってしまう危険性があります。そういった流木を含む流出物による河川の流れを遮断するハザードはあまり考慮されていないことを感じています。

 

自分たちの住んでいるところはいままで災害がなかったから大丈夫と安心しきっていると、現代の異常気象の下では、脆弱な森林や小河川の実情を考慮すると、きわめて危うい考え方だと思っています。

 

私自身はいつも死を念頭に置いていますが、それでも日常の煩雑さに埋没して、その危険性を没却することがあります。日本列島誕生以来、和が国土は脆弱な状況を維持しており、それだからこそ、可憐な自然生態系の妙を楽しめると思うのですが、他方で、多様なリスクを認識して、それらにどのように対応するか、日常的に考えておく必要があると思うのです。むろん第一義的には行政が行うべき事ですが、私たち一人一人も、さまざまな災害を想定して、その場合どうするか、検討しておくことは、意味のあることと思うのです。


地球大変動の受け止め方 <NHK 列島誕生 「奇跡の島は山国となった」>を見ながら

2017-07-31 | 災害と事前・事後

170731 地球大変動の受け止め方 <NHK 列島誕生 「奇跡の島は山国となった」>を見ながら

 

今日は夕方前から会議が続くため、その後にブログを書く余裕がないと思います。というわけで、後一時間しかありませんが、本日のお題を決め、昨夜見たNHK番組を感想を交えながら、いろいろな思いと交錯させて、少し書いてみようかと思います。

 

昨夜は<NHKスペシャル 列島誕生 ジオ・ジャパン 第2集「奇跡の島は山国となった」>が放送されました。先週が<第1集「奇跡の島はこうして生まれた」>で、その完結編でしょうか。

 

基本的なストーリーは、プレートテクトニクス論を基礎に、日本列島の形成を4つの段階に構成して、うまく映像表現していたと思います。

 

まず第1フェーズは、大陸プレートの端が太平洋?プレートの衝突で、大亀裂が生じ、大陸から離れていく、誕生初期です。私も書籍で、この離れていく過程が観音開き説とか諸説合ってまだ統一的な意見はないというのを知ったばかりでした。ただ、日本列島がそのまま東に大陸から晴れていったのではなく、亀裂した箇所が概要2つあり、それぞれがある基軸から大きく回転して、開いていったといのは興味深く感じつつも、そのエネルギーの源はよくわかりませんでした。たしかNHKではそういったところまで放映されていなかったように思います。

 

次の段階は、まさにフィリピンプレートが南洋から北上し、伊豆七島など連綿する火山帯が西日本の塊の東端と形成されつつあった東日本の島嶼の西橋のちょうど真ん中に押し込まれて伊豆半島ができあがったことを示していました。

 

今回の第3段階では、それまで成立した列島は平原・湿地といった平らな形状でしたが、日本の地形の特徴であるが山岳地帯を形成した仕組みを示すものでした。場所はなんと紀伊半島が舞台。これまたフィリピンプレートが沈降し、マグマだまりに衝突し、大規模な連綿とする火山爆発が起こり、火山灰を世界中にまき散らし、世界の温度を10度も下げたというのですね。その結果巨大カルデラ地形ができあがったといのです。その後1000年いじょうかけて地下のマグマだまりにたまったのが固形化し花崗岩(その大きさは神奈川県程度)となり、沈下圧力でその花崗岩自体が隆起した結果、紀伊山脈が生まれたというのです。その他の山岳も同様の経過をたどったようです。

 

これで紀伊山脈の広大な山地形状ができあがった大筋がわかった!?ような気がしつつ、まだようやくひかりがおぼろげに見えた状態でしょうか。その理由は後で述べます。

 

最後の第4段階、まだ東日本のほとんどは島嶼のように散在していましたし、山地も存在していませんでした。千葉県が最後に登場するのですが、それはやはりフィリピンプレートが北上していたのを太平洋プレートによって北西方向に押されて傾き、その分、海底にあった千葉をはじめとする東日本が海底から陸地に押し上げられたというものです。

 

ここまでが1000万年前くらい?でしょうか(ちょっと聞き落としてしまいました)。これだけでも大変な変動ですね。しかし、それからも沈下・隆起・圧縮など地球変動は繰り返されているわけで、ここ100万年の間でも大変なものですね。

 

ギリシアの哲学者がたしか止まっているが動いている、動いているが止まっているとか、そんな風な哲学的な言辞を残しているというのを半世紀ほど前にならったような気がします。

 

地球は常に動き続けていますね。私たちの知覚では静止しているように見えるのですが。日常生活のレベルで言うと、火山、地震や津波、地滑りといった自然災害でも起こらないと、地球の動きはあまり意識にのぼりませんね。でもNHKが取り上げた列島誕生自体、フィリピンプレートを中心にプレート衝突を経て起こっていることを繰り返し指摘しています。そのプレート活動は、また地下のマントルの動きは止まっていないですね。

 

私たちの知見は、せいぜい2000年か最大1万年程度ではないでしょうか。そのレベルで、科学技術の将来の発展や、そのことによる自然への制御能力を推し量ってみても、はなはだ危ういものではないでしょうか。

 

ちょっと当地の問題に目を向けますと、中央構造線が間近に走っています。ではこの構造線はどのようにして生まれ、現在のような地形が形成されたのか、先のNHKのストーリーの射程外ですが、これも定まっていないように思うのです。中央構造線ができる前は、NHKで成立したはずの西日本は海底に沈んでいたのでしょうか。そして最初に構造線の北側が隆起し、その後に南側隆起する、そして横ずれが起こったと言うことでしょうか。こういった事象を整合性のある理論で解明できるのかは、期待したいと思いますが、それにしてもNHKが説明したのはほんのさわりですね。

 

地球変動の複雑怪奇さはまだまだ探索しがいがあるのでしょう。他方で、今朝のNHKニュースで報じられていましたが、たしかグリーンランドの永久凍土の厚さが最大で3kmあり、とても強固ということです。ところが、その固く熱い氷塊が急激に溶け始めていることがわかったと言うことです。ほとんど真っ白の中に、藻がはえ黒くなると太陽光を吸収し、

どんどん溶ける勢いが早まっているとのこと。

 

映画The Day After Tomorrow は、気象変動が逆に急激な異常低温に向かい、北半球が氷に閉ざされる恐ろしいストーリですが、(この内容はいつか触れたいと思います)地球は生き物です。私たち現代人は、地球という生命体に不可逆的な変更をもたらす活動を続けているという、懸念は多くの人に享有されていると思いつつ、実際の活動では必ずしも意識下されていないように思うのです。

 

私自身も自戒の念を抱きながら、このNHKストーリーを見ました。

 

そろそろ一時間経過しました。会議に出かけるため、この辺で終わりとします。


流木の由来(3) <NHKスペシャル 九州北部 記録的豪雨はなぜ>を見逃して別の観点を考える

2017-07-10 | 災害と事前・事後

170710 流木の由来(3) <NHKスペシャル 九州北部 記録的豪雨はなぜ>を見逃して別の観点を考える

 

昨日は終日、荒れ模様の天候でした。豪雨が突然やってきたかと思うと、カラリと晴れを期待させつつ、何度も豪雨が繰り返されました。おかげで今朝の庭の土を見ると貧相ながら、十分水分を含んでいることがわかります。そんなわけで久しぶりに全面、水やり中止です。というのは、わが家の庭は、便宜上、5区画に区分しています。

 

一つは我流の枯山水ですので、当然、水はいりません。そのほかは、雨が直接降り注ぐ、2区画があります。残り2区画は無風状態のように垂直に落ちてくるような雨だと、軒下部分なので、水やりが必要です。というわけで、昨日のような全方向から殴りつけるような豪雨だと、しっかり雨水の配給を受けることができるのです。

 

昨日の降雨量は調べていませんが、北九州の降雨量と比較すると、比較にならない程度でしょうけど、それでも相当な激しさです。私は降水量に関する事件があると、事件現場に近い観測所のデータを調べます。時間雨量だけでなく、たしか10分感覚まであったと思います。すると、1時間の降雨量と言っても、1時間内でも相当ばらつきがあります。ですから、実際感じる激しさは、時間雨量だけでは必ずしも現実の感覚と一致するわけではないですね。

 

ま、ともかく気象庁のデータは、十分とはいえないですが、それでも結構参考になります。地形など、観測所からの距離なども勘案しながら、検討する必要がありますけど。

 

で、見出しの流木の話、実は昨夜、<NHKスペシャル九州北部 記録的豪雨はなぜ>を途中で面白そうと見始めたのですが、すぐに寝入ってしまい、目覚めると終わっていました。最近、好んで飲んでいる泡盛が少し効きすぎたのでしょうかね。というわけで、どういう内容だったかはウェブ情報で概要がわかりました。

 

それによると<九州大学・矢野教授は被害拡大の原因を調査している。矢野教授が注目したのは市内のあちこちに残された流木。これらの流木が河川の氾濫を引き起こす原因になったと見ている。森林のメカニズムの研究をしている久保田教授は、植樹した杉などが短時間で降った雨に耐えられなかったと見ている。「本来森林は斜面を守る力があるが、1度崩れてしまうと下流に被害が及ぶということは矛盾しているようだが起こる」と説明した。>とのこと。

 

私が最初に注目したことは、防災に関心がある人なら誰でも気づくと思います。で、わざわざ今日も3回目として取り上げるのは、われながら驚いていますが、心の中ではやはり30年近くは森に関心を持ち続けてきたことと関係するのかなと思っています。

 

余談がここまで続いてしまいました。私が流木によるリスクを問題にしたことに関連して、もう一言付け加える必要を感じたのです。というのは、日田市はご承知のとおり林業の盛んなまちです。当然、ほかの森林地に比べて、間伐・枝打ちも割合やられているところではないかと思っていました。ですので、一昨日でしたか、こういった適切な森林管理が行われていなかった可能性も検討する必要があるといった趣旨の指摘をした記憶があります。

 

そこで改めて九州豪雨の写真で掲載されている、樹木ごと斜面崩壊を起こしている現場を確認しているのですが、どうも作業道らしい形跡が見当たらないのです。どういうことかといいますと、間伐や枝打ちを効率的に、事業的に実施する場合、作業道を森林内に相当開設しておく必要があります。いわゆる林道といった10トントラックなど大型車での搬送ができる舗装幹線道路と異なり、作業道は幅員34mの簡易な砂利道ですので、森林環境にもさほど重大な影響を与えない規模・構造です。

 

しかし、そういった作業道が作られていると行った雰囲気は、あのあちらこちらで起こった斜面崩壊(地滑りかどうかはさらに調査が必要でしょう)の周辺の森林の状況からは窺えませんでした。枝打ちも崩壊した周辺の樹木の様子からは窺えませんでした。

 

ま、このことも今後の調査をまたないといけない、早まった先入主は避けるべきでしょうが、注目する事項ではあると思っています。ただ、林業盛んな日田林業も、結構バイオエネルギーとして活用されているようなウェブ情報もあり、この種の材質は間伐や枝打ちをしていないもので十分ですので、そうなると日田林業全体のあり方も検討対象かなと思ったりします。

 

で、ここまでが、これまでの延長戦ですが、ここからが本日の主題?です。見出しのNHKの番組だったか、ニュース番組だったか、たぶん後者の放送で見たと思うのですが、河川の洪水情報(水位情報)です。

 

従来、大きな洪水被害は、大河川が氾濫することで発生することが一般だったと思います。ところが今回、筑後川は水位が危険水位に至らず安定していたのです。氾濫したのは網の目のように走っている支流で起こっています。

 

ではこのことをどう見るべきかです。気象庁が主要河川の水位はもちろん、その支流も主要なものは水位情報を定期的にデータをウェブ情報で流しています。TV放映で見た画像では、網の目のように走っている支流のほとんどがもっとも危険な水位となっていたのです。

 

で、私自身、この画像を分析していませんが、国交省河川局が提供している支流河川は、当然、河川局管理の河ですね。他方で、農水省の管理とどういう棲み分けがあるか、私も個別に確認したことがないのですが、むろん灌漑用の用排水路は、外観上河でもありますが、農水省が管理しているのだと思います。こういった河川はそういた水位情報は見たことがありません。河川局管理の河川で、水位情報が提供されているのが、その一部だと思うのです。自分の身近の大河川から支流がどの程度アップされているか確認するとよくわかります。

 

さてここまでは、伏線でして、ここからが本番。河川局にとって、やはり最も洪水水害を防ぐ必要があるのは大河川ですね(通常は一級河川)。そのための治水対策はいろいろありますが、まさに直接的かつ効果的なのが樋門です。大河川の流量が増大して氾濫の危険、堤防破壊の危険がある場合、樋門を締め切るのです。するとどうなるか。支流というのは、集水域から集まってくる水量を大河川に押し出して、水位の安定を図るわけですね。

 

それが樋門を締め切れば、当然、支流の水量は支流内に閉じ込められるので、いっぺんに水位が上がり、断面積の小さいのが支流ですから、すぐに氾濫してしまいます。それで、支流の中で、大河川の樋門付近はよく洪水被害を受けるハザード地域です。元々が氾濫原に堤防を作り、安全になったと言って平坦な土地に分譲地がどんどん建てることを認めますが、そのリスクの説明はありませんね。

 

そして大河川の水位管理は、大規模ダムなど多数のダムの放流量の調整も含め、洪水被害を回避するため、相当細やかなガイドラインなりマニュアルがあって、流量管理が慎重に行われていると思います。しかし、その水量データは限られていますね。それに今回のような異常な豪雨を予想して支流管理をするシステムができあがっているところはないように思うのですが、どうでしょうか。

 

これからもいつどこで起こるかわからない、異常豪雨の発生、それにどう対応するか、現在の行政システムでは万全を期することは不可能でしょう。その意味で、少なくとも情報の不足を明らかにして、住民自身がどこにリスク・ハザードがあるかが事前にわかるようなシステムの必要も感じています。

 

森林・河川のリスク管理、今後も随時、取り上げていきたいと思っています。今日は昼の休みを利用してちょっと書くつもりが少し長くなりました。