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たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

災害対策を考える <治水計画 国交省が見直し着手>などを読みながら

2018-07-12 | 災害と事前・事後

180712 災害対策を考える <治水計画 国交省が見直し着手>などを読みながら

 

今日は夕方から会議があるので、早めにブログを書くことにしました。それも簡潔に。と思いながら、この問題は課題が多く、情報も拡散しており、そう簡単にいかないことを承知しつつ、今日のニュースのつまみ食いみたいな感じで、できれば整理できるといいのですが。

 

今回の西日本豪雨については、新たに様々な問題が指摘されています。それをすべて取り上げることも意味はありますが、とりあえず今日のニュースで気になった点を優先順位とか関係なく触れることができればと思います。

 

まず、毎日記事<治水計画国交省が見直し着手 記録的豪雨の急増に対処>では、<国土交通省は、地球温暖化による豪雨の増加などを想定した治水計画の見直しを始めた。気候変動に対応する「適応策」として、河川の堤防整備などハード面を含めて検討するのは同省としては初めてだという。>気候変動問題については、これまでさまざまな対策が講じられてきたように思いますが、<豪雨の増加などを想定した治水計画の見直し>は画期的な取り組みと思うのです。こういった方向は望ましいと思うのです。

 

具体的には<8月にもまとめる検討会の中間報告書には、河川の治水計画を見直す場合に将来の豪雨の増加分を見込み、堤防の高さやダムのかさ上げなどをするよう盛り込む。河川の最大流量や浸水想定区域も再検討するよう求める。国交省は中間報告書を今後、全国の河川整備計画に反映する方針だ。【斎藤有香】>とのこと。

 

ただ、この具体論となると、もう少し検討を要するのではないかと思うのです。むろんハード面の強化を図ることは重要な施策と思いますが、それにはもう少し国民の意見集約があっても良いのではと思うのです。早急すぎないでしょうか。仮に治水対策をハード面で強化を図るというのであれば、たとえば急傾斜崩壊危険地区のように、土地所有者にも一定の負担を課すこと、あるいはそこまでいかなくともなんらかの所有制限を伴う対策も検討してもいいのではないかと思うのです。この地区指定があれば、公共負担で擁壁工事など安全対策が講じられますが、当該土地はほとんど無価値に近いものとなります。そもそも安全対策を講じないと土地利用ができないような地形条件をもっているからです。

 

むろん気候変動による治水計画の見直しは、以前から危険であった地域の土地とまでいえないかもしれません。しかし、場所によっては氾濫原に無理に土地利用を認めたところもあるかもしれません。その点、これまでの土地利用計画では、後追い行政で、どんどん住宅や工場などが建った後、治水対策などを講じてきたところもあったかと思います。国民の公平な分担やあるべき土地利用を考慮して、検討してもらいたいと思うのです。

 

上記は河川の治水対策ですが、今度はため池です。毎日記事<ため池「決壊の恐れ」 2次被害に注意>は中国地方に多いため池の整備不十分さが問題になっています。

<西日本豪雨の2次災害が発生する危険性が増している。広島県内では11日、6カ所のため池で決壊の恐れが高まったほか、同県府中町の河川では10日に氾濫があった。雨水がため池の堤体に浸透した影響や、土砂などで河川がせき止められてできた「天然ダム」が決壊した可能性が高く、専門家は「雨が降っていなくても、新たな水害が起こると考えて警戒を続けてほしい」と呼びかけている。>と。

 

ため池は全国に膨大な数があり、行政で把握されていないものも相当数あり、多くは構造計算や堤体の地盤の安全性を専門家によってチェックされていないものだと思われます。古くは奈良時代の行基以前、古墳時代にはあったとされていますので、その後繰り返し決壊・修復を繰り返してきたと思いますが、現在の状態は管理も十分にされているとはいえず、危険性は否定できないでしょう。

 

以前は毎年水抜きして、堆積した土壌やヘドロを取り出し、その中に鯉や鮒など多くの副産物で作業後を祝ったようですが、そういったことは最近多くのため池では行われていないと思います。中には減反政策の影響もあり、ため池自体の水が使われなくなり、完全に放置されたものもあります。

 

こういったため池の安全性については、以前から行政で少しずつ調査を始めていますが、多すぎて間に合わない状況でしょう。ハザードマップについてもため池決壊を前提としてその浸水シミュレーションが行われていますが、これも集落などがあるところに限られているのではと思います。しかし、今回の西日本豪雨のようにかなり人里離れたところのため池では対処がまったくできないでしょう。また豪雨や土砂崩れなどで生まれる、意図しない堰でたまった・ため池まがいのものも危険きわまりないですね。

 

西日本豪雨では、山頂付近も相当亀裂が入って、山崩れが各所で起こっているようです。それは山林管理が適切かどうかというより、地質の問題と異常豪雨の問題で、中国山地としては避けがたい問題かもしれません。こんなことを書いたのは、先ほど国交省が治水計画の見直しということでしたが、それは河川だけでなく、ため池、山林、今回の災害で起こった全体像をしっかり把握して検討してもらいたいために言及したのです。むろん国交省だけで解決するものではなく、農水省など省庁間で連携してもらいたいと思うのです。

 

ちょっと違った側面では別の記事<災害ごみ巨大な山 衛生面も問題 倉敷市真備>も、いつも災害の後思うのですが、災害を前提として、どこまでゴミ処理を事前に対策できるかまで念頭に置くのは難しいとは思いつつ、厚労省も視野に入れてもらいたいと思った次第です。

 

より生命に関わる重要な情報としては産経ウェブ記事<【西日本豪雨】「救助側にも命の危険」岡山の被災地派遣の和歌山県警援助隊が帰還>がなかなかいい取材だと思ったのです。

 

これは和歌山県県警が派遣した部隊の報告です。<広域緊急援助隊を指揮した楠本副隊長は広範囲が泥水に覆われていた状況について、「今まで見たことのない現場だ」と被害の深刻さを強調。これまで東日本大震災や紀伊半島豪雨の現場も経験したというが、「今回は浸水規模も水量もひどかった。家屋が水没するほどたくさんの水が残っているのは今まで見たことがない。救助する側にも落水すれば命の危険があった」と振り返った。

 さらに今回の救助活動をふまえ、「救助が必要な人を見逃さないよう、徹底的に捜索することが重要。その上で各関係機関が現場の避難状況などをこまめに共有して、より効果的な捜索方法を考えないといけない」と力を込めた。>

 

驚きました。<東日本大震災や紀伊半島豪雨の現場>よりも<「今回は浸水規模も水量もひどかった。>というのですね。たしかに前者は史上例のない大津波ですが、引きも早いですから、救援に向かったときは浸水しているところはすくなかったでしょう。また紀伊半島とのときは現場としては平坦な箇所があまりないので、やはり今回の被害程度の方がひどかったのでしょう。救援者も危険な状態となるといったことは、情報の共有としても重要でしょう。

 

また産経記事<【西日本豪雨】トイレの水がない 9100世帯断水の愛媛・大洲市、猛暑で不衛生心配>も、災害ではいつも問題になりますが、災害対応のトイレ対策は早急に考える必要があるでしょう。さまざまな情報が出回っているようですが、災害を意識した私たちの心の意識改革も必要かもしれません。

 

そろそろ時間となりました。結局尻切れトンボとなりましたが、またいつに日か、整理できればと思うのです。また明日。


豪雨災害 <豪雨 死者67人に 岐阜、京都、高知でも犠牲>などを読みながら

2018-07-08 | 災害と事前・事後

180708 豪雨災害 <豪雨 死者67人に 岐阜、京都、高知でも犠牲>などを読みながら

 

九州から中国、四国、さらには近畿から中部と中部以西の日本が豪雨災害に見舞われました。

とはいえ、気象レーダーの画像で見ると、まさに「線状降水帯」の大きな帯線が横たわっている範囲内でほぼ起こっているようです。

 

そこから離れている和歌山県、少なくとも当地では、特段ひどい降雨量といったこともなく、調べていませんが累積降雨量もさほど多くないと思われます。というのは紀ノ川は、台風シーズンなど豪雨があると、河川敷が冠水し、破堤や溢水を避けるため、流入する支流の樋門が閉ざされ、支流の流域は冠水するといった事態が起こりますが、今回はずっと紀ノ川の流れは穏やかとまではいえなくても、ま、安心してみておれる状態でした。

 

しかし、TVニュースで見る限り、いままで冠水被災にあったことがないようなところが各地で被災していますね。

 

午後の毎日ウェブ情報<豪雨死者67人に 岐阜、京都、高知でも犠牲>だと、死者数が67人とまた増えていますし、雨脚が落ち着いてきたとはいえ、今後も危険な状況と思われます。

 

上記記事では<活発な梅雨前線による西日本豪雨で8日、被害の大きい岡山、広島、愛媛の各県などでは警察や自衛隊が安否不明者の捜索を続けた。京都府と岐阜、高知両県で初めて犠牲者が確認され、死者は計67人となった。気象庁は、岐阜県に加え愛媛、高知両県に大雨の特別警報を出し、土砂災害への警戒を呼び掛けている。>

 

列島の半分が豪雨災害に見舞われた状況ですね。<政府は8日、災害対策基本法に基づき、非常災害対策本部を設置した。>ということで、災害の名称もこれだけ被害が拡大すると決めるのが大変でしょうね。

 

ところで、TVのある番組で、政治家でしたか、公共事業が減り、防災対策が遅れていることを指摘されていた方がいたかと思います。はたして従来型の護岸工事や堤防高の嵩上げとか、あるいは山林の治山事業の強化とかのハード対策がどの程度有効かは、もう少し丁寧に今回の被災状況を検証した上で、とるべき対策を将来に向けて検討するべきではないかと思うのです。むろん、まずは冠水した中で取り残された被災者や避難生活で困っている方々への支援や救済措置が先決ですね。

 

今回の豪雨で、私が割合多く目にしたのが倉敷市真備町の洪水被害状況でした。

毎日記事でも<西日本豪雨51人死亡 心肺停止1人、不明76人 倉敷・真備町、4分の1水没>などで取り上げられていますが、昨日段階で、町の4分の1が水没したというのですから、これは大事ですね。

 

倉敷はなんどか訪れたことがありますが、真備町という地名は初めて聞く名前です。ただ高梁川は名前だけ聞いたことがあり、メインの川ですね。こういった地方都市の主流河川が各地で氾濫していたように思います。近くでは福山市の芦田川とか、愛媛県ではこういった被害はあまり聞かないのですが、<西予市内を流れる肱川(ひじかわ)が氾濫>とか、ほんとに多くの河川が豪雨に対応できない状況にありますね。

 

この高梁川については記事で<岡山県倉敷市真備町地区では7日朝、1級河川・高梁川の支流の小田川の堤防の決壊が確認された。川の北側の広範囲で建物が2階まで浸水、真備町地区の約4分の1にあたる12・5平方キロが水没した。多数の住人らが建物内に取り残され、救助要請が消防に殺到。ヘリやボートで順次救出され、消防や警察が夜を徹して救助を続けているが、被害の全体像は分かってない。>と支流の堤防が決壊したことで浸水がひろがったようです。

 

ところで、最近は東南海トラフ地震による津波対策のため、防災対応が次第に意識化されつつあるように思いますが、こういった豪雨については必ずしも防災対応について啓発活動も意識も深まっているとは思えません。

 

今回の豪雨では、大雨特別警報の発令が頻発されました。

ライブドアのウェブ情報では<歴史的大雨、8府県に特別警報が発令 土砂災害には最大限の警戒を>ということで、合計8府県に発令されたのでしょうね。

 

実際の降水量もあきらかに尋常ではありません。<7()5時までの72時間雨量で、高知県魚梁瀬(ヤナセ)で1150.0mmを超えたのを筆頭に、広い範囲で600mmを超えるなど、各地で記録的な大雨となっています。▼75時までの72時間降水量 魚梁瀬(高知) 1150.0mm(※一部期間欠測あり) 繁藤(高知)  798.5mm 大栃(高知)  793.0mm 本山(高知)  718.0mm ひるがの(岐阜) 734.0mm

 

この異常気象の要因について毎日の76日記事では<大雨広範囲になったメカニズム…「線状降水帯」も多発>として、<大雨を降らせるメカニズム

 西日本から北日本の広い範囲に及んだ大雨は、本州付近に停滞した梅雨前線に、南から暖かく湿った空気が継続的に流れ込むことで発生した。専門家によると、激しい雨を降らせる積乱雲が一列に連なる「線状降水帯」も多発しているという。>と気象庁の解説のような言及があります。

 

また専門家の意見として、<坪木和久・名古屋大教授(気象学)によると、福岡、大分両県で大きな被害が出た昨年の九州北部豪雨では、太平洋高気圧の西縁が今回より西だったため、大雨は九州北部に集中した。今回は昨年より東で、九州から中国、四国、近畿など広い範囲に大雨をもたらしている。>

 

これまた気象条件をある程度解説できているのかもしれませんが、こういった現象が一時的な異常現象なのか、今後も恒常的に起こるものかについては触れていません。

 

私は素人ですので、気象現象を理解できているわけではありませんが、昨今の気象は、異常事態が頻繁にどこでも起こる状態になりつつあるように思うのです。それは決して異常だとしても、どこでも起こりうる状況にあるのではと思うのです。それはわが国でM6程度の地震がどこでも起こる可能性があるのと同じようなことではないかと思うのです。

 

その場合、従来の様々な防災のための基準、たとえば宅地開発の開発許可基準の時間降雨量や、河川の治水対策の基準なども、当然対応できないおそれが高いと思われるのです。建築物や宅地開発などの耐震基準については、地震災害が起こるたびに強化されてきましたが、水害については、昨今の異常豪雨に対応すべくどのような検討がされているのでしょう。

 

また、ハザードマップづくりという、地道な作業が何年か前から全国的に進められていますが、その内容は必ずしも実効性の高いものとまでいえないものと思っています。ハザードマップが実用性のあるものであれば、それに応じて様々な対策も講じる必要があると思われますが、具体的な運用はまだまだかと思われます。

 

そろそろ時間となりました。今日も尻切れトンボとなりましたが、また明日。


津波防災と学校責任 <大川小津波 2審判決 「組織の備え」こそ教訓>

2018-04-27 | 災害と事前・事後

180427 津波防災と学校責任 <大川小津波 2審判決 「組織の備え」こそ教訓>

 

今朝も田中陽希のグレートトラバースを見ながらジョギングもどきをやりました。陽希さんの頂上踏破を待ち受ける人が次第に増えてきているように思います。彼の勇気とか驚異的な精神力、肉体的な持続力などに魅せられた人たちでしょうか。彼に握手を求めたり、サインを求めたり、彼の勇姿を一瞥したいといった気持ちの人が遠くからでもやってくるみたいです。

 

それを見ていると、比叡山などの千日回峰行を遂行する行者を敬って近づく信奉者たちのような印象すらあります(少し大げさですが)。私が40年くらい前京都にいるとき、ちょうど酒井阿闍梨が遂行中で、一度拝顔したいと思ったこともありますが、やはりあえてそこまでの気持ちが起こらなかったですね。私の場合、そういう感覚になりにくい性格かもしれません。千日回峰行も、日本百名山一筆書きも、いずれもすごいと思いますし、大変なことをやっているとは思うのですが、その人と会ってみたいとか、、励まそうとか、いや励ましてもらおうとか、そういう感覚にはなれそうもないようです。

 

ただ、NHKの密着報道のおかげ(スタッフは大変でしょうけど)で、陽希さんの人並み外れた能力とともに、普通の若者の姿もあって、楽しく見ています。彼のガレ場での不安定な石の上をすばやく、どちらの足のどの部分に体重をどの程度かけ、その次にどのように体重移動するかを瞬間的に判断する鋭敏さは、やはり空海がなしえたことの一端をやっているようにも見えて、興味深くフォローしています。

 

私自身、若い頃、沢沿いの岩場をどんどん歩いたり、その後は沢登りをしたりして、岩には親しみを感じているものですから、彼のような動きは昔を懐かしむことで自己満足している部分もあるかもしれません。

 

さて本論に入る前に饒舌な関係のない話をしましたが、少々体調が悪いので、元気印の陽希さんの話を紹介していると、このブログもスタートできるかと思った次第です。

 

さて毎日朝刊は、かなりの分量を使って大川小学校津波被害の学校責任を認めた仙台高裁の判決とその関連情報を取り上げています。ちょっと体調が悪いので、簡潔に済まします。記事番号をつけて、その一部を紹介します。

 

1 <クローズアップ2018大川小津波 2審判決 「組織の備え」こそ教訓 浸水予想、誤り指摘

2 <東日本大震災大川小訴訟控訴審 原告全面勝訴 子どもたちの声届いた 学校防災見直しを、力込める遺族ら /宮城

 

記事1では、市側が予見不可能の根拠として、<大川小の周辺地域は市のハザードマップで津波浸水予想区域外だった>などをしゅちょうしていましたが、高裁は<「ハザードマップは結論として誤りで、独自に信頼性を検討することが要請されていた」とし、教職員らに高い安全確保義務を求めた。避難場所も、学校から「三角地帯」経由で約700メートルの距離にある高台「バットの森」が適当と判断すべきだったと指摘した。>

 

最近ハザードマップが全国各地で作成する動きが広がっていますが、残念ながらその正確性には疑問が少なくないものがあると思います。それは単純に標高差を基本にして作図しているため、水害発生地点の地点の標高とその浸水の広がりを標高差だけで機械的に算出して作図されているようなものがあるからです。それにそもそも水害発生地点の貯水量の推定にも現実の堆積物を考慮した検討がなされていないため、無用に過大な浸水被害を想定するものもあります。

 

他方で、津波被害といった場合の想定は、根拠のある津波高の予想を基に、具体的な海岸や内陸の地形などをもとにシミュレーションしないと、かなりずさんな想定になる危険もあります。

 

その意味で、市側が主張するハザードマップを頼りに津波浸水予想区域だったといった弁解は到底納得できるものではないでしょう。

 

では学校側がハザードマップを含め、素人であるのに独自の判断で津波防災計画を立てないといけないか、それは学校現場の教職が過重労働の状態にある中、現実離れしたことで、酷なことではないかとの批判もあります。

 

しかし、それは学校教職員個々が直接的に責任を負うと言うことまで高裁は述べていないのではないかと思います(判決文を読まないと正確には言えませんが)。

 

同記事では<安全確保義務は学校現場だけではなく、市教委にも課されていると判断。大川小が10年4月に避難場所を明確にしないままマニュアルを改定した後、是正・指導すべき義務を負っていたとも述べた。>ということは、むしろ教育委員会側に重い責任を課しているか、少なくとも学校管理者である校長・教頭レベルの責任ではないかと思うのです。

 

この点、<石巻市の代理人を務める松坂英明弁護士は「現場の教職員に対しハードルの高い安全確保義務を求めている。職員らに多大な義務を課すことは不可能なことを求めているに等しい」と話す。>と高裁判決を非難していますが、高裁の趣旨がほんとにそうか、的外れなものではないかと思っています。

 

ただ、教職員個々も、少なくとも事前防災は別にして、大地震の後長時間、津波が来るおそれをまったく考慮せず、多くの生徒を校庭に待機させていたことには、危険意識の欠如を感じるのです。

 

和歌山県でも南海トラフ大地震がいつ発生してもおかしくない状況にある中、相当程度の防災意識をもって、学校立地の場所を考慮し、その場合のハザードマップを独自に検討しておく必要があると思うのです。

 

記事2では<仙台高裁は2016年10月の1審判決に続き、学校側の過失を認め、津波による浸水の予見は「十分に可能」だとして、学校による事前の危機管理マニュアルの作成・改訂の重要性を強調した。>

 この判決について、<村井知事は「いつの時代も危険を予知して備えをしている。それを超える災害が発生する可能性をどこまで予見できるのか、人知を超えたものにどこまで対応できるのかをよく考えていかなければならない」と対応の難しさから精査の必要性を指摘した。>として、 不可能を強いるものとのとらえ方のように見えます。

 また、<学校側に地域の実情を踏まえた上で高い知見の習得と訓練を含めた高度な対応が求められた判決内容については「一定のルールの下、備えを決めて訓練などをするが、今回の津波に対しては、その次元に至らなかったということではないか」と分析。>ということで、ハードの巨大防潮堤の建設や巨大盛土の住宅地建設には熱心な知事の立場がよくわかる考え方を示しているようにみえます。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日。


雨がなくても山崩れ? <大分山崩れ 大雨ないのになぜ 大量土砂、救助阻む>

2018-04-11 | 災害と事前・事後

180411 雨がなくても山崩れ? <大分山崩れ 大雨ないのになぜ 大量土砂、救助阻む>

 

ちょっと気になる記事があったので、ユマニチュードを書こうと思いつつ、ついこのテーマに気持ちが移ってしまいました。

 

毎日記事<大分山崩れ大雨ないのになぜ 大量土砂、救助阻む>と、耶馬溪での山崩れによる家屋崩壊と行方不明者を報じていました。

 

<「大雨が降ったわけでもないのになぜ」>です。

<静かな山間部の集落を突然、大量の土砂がのみ込んだ。大分県中津市耶馬渓(やばけい)町金吉(かなよし)で11日未明に起きた土砂崩れは幅約200メートルに及び、男女6人が不明となった。近く結婚を控えていた21歳の女性も巻き込まれたとみられる。>

 

なお、NHKでは<大分 中津 耶馬溪町で山崩れ 6人の安否不明>の中で、<大分地方気象台によりますと、土砂崩れがあった中津市耶馬溪町のアメダスの観測点では、10日夜から11日朝6時までの24時間で0.5ミリ以上の雨は観測していないということです。>と降雨量ゼロといってよい気象条件であったことが示されています。

 

この点について、専門家の解説を西日本新聞記事<降雨ないのになぜ 地下水、地盤風化も影響か 大分・耶馬渓の土砂崩れ>では

 

<本社ヘリで上空から現場を見た福岡大の村上哲教授(防災地盤工学)は、崩れた山の斜面に水が湧き出ていたり、水が流れたりしていることに注目。「山がため込んだ地下水のため、土砂崩れが起きたのではないか」と話す。>

 

また、<地元の建設会社幹部(41)によると、現場周辺は水がたまりやすく地盤が緩いことが、地元の建設関係者の間で知られていた。村上教授はさらに、現場付近は山頂が平らで、水がたまりやすい崩積土(ほうせきど)の斜面だと分析。急斜面のため崩れやすく、岩盤との境に沿って滑り落ちたとみられるという。>

 

そのほか<九州大大学院の三谷泰浩教授(地盤工学)は現場が溶岩台地で、川に沿って風化した山の斜面が浸食される「耶馬渓特有の現象」と分析。垂直方向に地盤の割れ目があり、その割れ目に沿うように、まず地盤が滑り落ちたと考えられるという。崩落地点のさらに上部には亀裂も確認されている。三谷教授は「雨が降ったり、崩れた土砂を除去したりすれば、さらに崩れる恐れもある。>と3つの視点が掲載されています。

 

毎日の別の記事<大分山崩れ岩盤が風化の可能性>では、

 

<九州大学大学院の三谷泰浩教授(岩盤工学)は「調査してみないとわからないが、むき出した岩盤が風化した可能性がある」と分析した。

 三谷教授によると、現場付近は過去の火山活動によって地盤の下部に安山岩、上部に溶結凝灰(ようけつぎょうかい)岩が形成された地域。溶結凝灰岩は亀裂が入りやすい傾向があるといい「雨や地震、長年の風化など、何らかの原因で亀裂が拡大し、安山岩と接する部分を滑り面にして崩れた可能性がある」と指摘する。>

 

さて、いずれも十分な調査を踏まえた上での見解と言うより、一般的な当該地域の地質や崩壊状況からの説明かと思われます。とはいえ、専門家の判断としていくつか傾聴に値すると思っています。

 

ご承知の通り耶馬溪は(ウィキペディアを引用)<新生代第四紀の火山活動による凝灰岩や凝灰角礫岩、熔岩からなる台地の侵食によってできた奇岩の連なる絶景である。凝灰岩や凝灰角礫岩の山には風食作用や河川の洗掘作用によってできた洞窟も多い。>場所で、<日本三大奇勝として知られ、日本新三景に選定され、名勝に指定されている。>わけですね。

 

Google Earthで現地を見ますと、まさに溶岩台地ですね。そこに金吉川が台地の裾を侵食するように蛇行して流れています。

 

溶岩台地であるうえ、三谷教授が指摘されているように、<現場付近は過去の火山活動によって地盤の下部に安山岩、上部に溶結凝灰(ようけつぎょうかい)岩が形成された地域>という地質構造であるなら、風化、亀裂が拡大していてもおかしくはないでしょうね。

 

毎日の記事にある山崩れの写真を見ると、途中で山塊崩落があったかのように垂直の壁ができているところがあります。それが凝灰岩などが風化して垂直の亀裂線が入りまではわかるのですが、安山岩との接する部分を滑り面にしてすべった、崩れたというのがあのじょうたいなのか、素人的にはわかりにくように思うのです。

 

ここの地形や樹林相をみて気づいた点があります。まず、金吉川の流れがここの場所(梶ヶ原)のところで90度に鋭角に曲がっています。この河川では一番の曲がり具合です。とても鋭角な印象です。それが背後の山体の地形・地質に影響するのかはわかりませんが、気になる点です。

 

もう一つ、風化の岩盤が浸食された可能性を指摘されていますが、崩壊前のGoogle Earthの写真では、住宅の背後は広葉樹が大きく盛り上がり、その上部や両側には針葉樹が林立しています。いずれにしても岩盤が雨風にさらされている状況であったとは思えないのです。

 

この写真で、林相が割合、鮮明に分かれていて、その広葉樹付近を中心に崩れ、その結果、上部の針葉樹が引っ張られて、地盤とともに崩れたという印象を受けます。

 

ではなぜ広葉樹やその地盤が崩れたのか、それは今後の調査に待たないといけませんが、なぜ広葉樹だったのかとも関係するかもしれません。写真からは相当大きな広葉樹の巨木が林立しているように見えますが、これもはっきりしません。

 

で、ストリートビューで、崩落前の住宅群を見て気づいたのは、その裏手に防護柵のような設備があります。しかもまだ新しい印象です。仮に土砂崩壊防止のための防護柵だったとしたら、その必要性をどのような調査で判断し、その防護柵程度で良いとしたかが検討されて良いかと思います。

 

上記のNHK記事では<国土交通省によりますと、土砂崩れがあった現場付近は、去年3月に大分県が土砂災害防止法に基づいて「土砂災害警戒区域」に指定していたということです。土砂災害警戒区域に指定されると、市町村は、避難場所や避難経路をあらかじめ検討し、地域防災計画に記載することが義務付けられます。

 

さらに、山の斜面の部分と一部の住宅の敷地は、斜面が崩壊した際に建物に被害が出て住民に大きな危険が及ぶおそれがあるとして、「土砂災害特別警戒区域」に指定されていました。>となっています。

 

「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」の指定に当たっては、一定の地質調査を行っており、その調査報告も参考になるでしょう。ただ、大分県の<大分県土砂災害危険箇所情報インターネット提供システム>では、私のPCの機嫌が悪いのか、うまく作動してくれず、その箇所特定が出てきませんでした。

 

ところで、前記西日本新聞記事では、<地元住民によると、数日前から山に異変があったという。土砂崩れに巻き込まれた男性が数日前から「裏山から石が落ちてくる」と話していたという。山が2、3日前から「ゴー」と地鳴りがしていたとの証言もある。>ということで、前兆があった可能性もうかがえます。

 

こういった「土砂災害警戒区域」の指定では、住民からの前兆の情報を収集するよう事前説明をしっかり行い、センサーなどで定期的に観測する体制を整える必要があることも検討して良いのではと思うのです。

 

私の所感は、なぜ金吉川が直角に曲がっているのか、林相が異質な箇所で崩落が起こっている、「土砂災害警戒区域」等の指定や防護柵が設置されていたとすると、大雨以外にも崩落の危険性を告知できていたかなど、気になっています。

 

というのは、溶岩台地などでは、雨水が山体から湧き水などになって出ていないと、思わぬところにたまってしまい、崩落の原因になると考えるからです。防護柵とともに、水抜き装置が必要だった可能性も検討されて良いかと思うのです。

 

たしか昨年は朝倉町の予期せぬ異常な豪雨に伴う斜面崩壊などでしたが、今度は雨のない斜面崩壊ですね。林地管理のあり方としても勉強したいと思います。

 


河川津波で何を考える <NHKスペシャル 「“河川津波” ~震災7年 知られざる脅威~」>を見ながらふと思う

2018-03-05 | 災害と事前・事後

180305 河川津波で何を考える <NHKスペシャル 「“河川津波” ~震災7年 知られざる脅威~」>を見ながらふと思う

 

いま外は豪雨です。いくつかの裁判書面を書いている中、地響きのする雷音が鳴り響いていました。10分間雨量30mm以上?とも思われるたたきつけるような雨音もかなりのものです。なお、時間雨量とか一日雨量とかはそれなりに意味がありますが、私は分単位、とくに10分間雨量とかがどのくらいで、それがどのくらい続いたかを気にしますし、もちろん累積雨量としては3日間程度も気にします。ある事件で、時間雨量を調べるだけでは地滑りとか、崖崩落、斜面崩壊などの原因要因を調査するうえでは不十分と感じたのです。

 

というか、分単位で調べると、雨量というのは相当幅があることがわかります。というか、これは大変だと豪雨の中外にいると不安になりますが、通常は、長続きしません、休憩時間?があるんですね。自然も巨大エネルギーを持続させるには休みもとらないといけないのでしょう。

 

と余分な前置きをしてしまいましたが、見出しのテーマ、昨夜見ました。「河川津波」ってどんな特殊な現象なのだろうと興味をもったからです。

 

私はアマゾン川の大遡行をつい思い出しました。7000km以上もある世界最長の川で、ときには河口から800kmも逆流というか、大遡行をしちゃうわけですね。これは映像で過去に見たことがありますが、まさに龍神が上流に向かって角を立てて上っている感じでした。

 

でもNHK番組で映像化されたものは、残念ながら、東日本津波の河川遡行としては実写された物ではありませんでした。シミュレーションで遡行、というか「河川津波」を描いていました。

 

これまで津波被害は、もっぱら沿岸周辺からはじまって平坦な大地を侵入する様子が映像で実写されてきました。ただ、実際は、海岸付近には多数の大中小河川が流れ込んでいて、大津波の時、一部では何10kmも遡上したという指摘があったと思います。

 

北上川の古戦場など、多くは氾濫原ですから、河川津波が起これば浸水被害が甚大になったと思いますし、現在は利用制限区域になっているようです。

 

番組では砂押川という中小河川で起こった河川津波をシミュレーションしていたかと思います。平地部は時速30kmで津波が進みますが、河川内では40kmとさらに速度が速まるというのです。

 

その理由については、とくに解説がなかったように思うのですが、護岸壁で囲まれていて、障害物がないため、遡行がスムーズにいくのでしょうか。ま、いえば、津波の幹線道路になってしまうのかもしれません。

 

こういった護岸工事は、洪水対策という治水事業として、上流部、中流部から吐き出される雨水量をできるだけ早く海に吐き出すためになされている、他方で、堤防外の利用価値を高め、安全性を確保する役割を持っているのでしょう。

 

しかし、海からの逆流という、河川津波は想定していませんので、こういった遡行があれば、逆に簡単に上流に向かうことになるでしょうね。

 

ただ、要因としては、それだけではないと思うのです。沿岸部、とくに河口付近は、堤防により陸地への日常的な高潮が来ないように対策をとっていますが、これが津波にとっては障壁になり、河口の空いた部分は逃げ道となって、河口に入った途端、勢いを増すことは想定できます。

 

通常、たとえば荒川が東京湾に流れ込み河口では、大変な三角波が発生しています。東京湾に流れ込む太平洋の海流と荒川を下ってきた淡水とが猛烈な衝突を繰り返しているのです。普通の時は、それで相撲のぶつかり状態でそれなりに平衡を保つのでしょう。

 

でも大津波となると、それは一気に河川流の流れを打ち負かして、遡上するわけですね。

 

で、この点で少し問題を指摘しますと、昔、横須賀市の久里浜海岸(あのペリーが上陸した地点ですね)に流れ込んでいる平作川という小さな河川が洪水被害を発生したことがあり、そのとき問題になったのが違法駐留している無数のボートや船がその要因の一つとされたのです。その後、違法駐留船舶を移動させる施策がとられた記憶です。これが津波による影響だったのか、上流からの大量の雨水流によるものだったのかは記憶が定かではないので、適切な例といえるかは、書きながら、ふと躊躇してしまいました。

 

この河川津波の時も、一部の映像で船が遡行流とともに流されていましたが、これが多いと橋桁にぶつかり、堰き止められて、そこから破堤、越堤など洪水発生のおそれがでてくることもあるでしょう。この津波ではなかったように思えますが・・・

 

河川津波で怖いのは、護岸工事は、本来の氾濫原を平地利用する、それを保護するために行われてきたと思いますが、それが想定外の河川津波に遭うと、越堤が起こりやすいですし(元々氾濫原ですからね)、そうなると被害が甚大となりますね。番組では多くの犠牲者が出たと言うことでした。

 

で、私が気になったのは、河川流(つまり上流部など上方から下ってくる水流ですね)と河川津波が合体したとき、その水嵩はさらに増えて、越堤は極めて容易になることの危険性です。さらにいえば、通常、上から下ってくる水流と下から上がってくる水流がぶつかれば、アマゾン川の大遡行ほどのウェーブができないとしても、当然、水の流れが立ち上がるというか、あのプレートテクニクスと同じように隆起してしまうのではないかと思うのですが、これは素人発想でしょうかね。

 

こういった河川津波特有の、水の形態、流れは、番組では追求されていなかったように思うのです。

 

これが仮にそうであったとしても、この河川津波を回避したり、最小化したりする手法は、簡単には見つからないでしょうね。強いて言えば、いま大丈夫と思われている高い堤防方式がさほど安全ではないことを、意識を持ってその周辺に住み、どう逃げるかを改めて考えておくことでしょうか。

 

地震列島日本、プレートテクニクスの複雑な連続的衝突の上に立っているわけですから、災害の発生は不可避と考えて、具体的な対応策を真剣に取り組むことしかないでしょうね。

 

そろそろ一時間近くになりました。何を書こうとしたのか忘れてしまいましたが、雨音も強いですし、今日は早めに帰宅した方がいいかもしれません。

 

ということで本日はこれにておしまい。また明日。