べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

配達されることのない手紙

2015年12月19日 19時56分28秒 | 叙情

前略
先日、久しぶりにお会いすることができて
とてもうれしく思いました
あのようにして
ふたたびお会いすることができるだなんて
思いもよらないことでしたから
よろこびもひとしおでした

あれからすでに数週間になりますが
いまも胸の中は
甘やかな痛みで満たされています

もし、あなたに出逢うことがあれば
あんなことを話そう 
こんなことも伝えようと
想いを巡らせてばかりいましたが
その実あなたを目の前にすると
とてもそれどころではありませんでした

あなたが現れた途端
あたりの空気は一瞬にしてやわらぎ
懐かしいやすらぎと
ある種の悲しみに包まれてしまったからです
軽いめまいさえおぼえたほどです
ことあなたに関しては
いまだぼくは草原の輝く多感な時季から
まったく抜け出せないでいるようです

いまもときおり
あなたの夢を見ることがあります
そこでもぼくは
少し離れた場所から
あなたを見つめるばかりで
声をかけることすらできません
夢の中でさえそうなのですから
あなたを目の前にして
いったいなにができたでしょう

それにしても
あなたが幸せそうで
ほんとうによかった
あなたが笑顔でいてくれて
ほんとうにうれしかった

あなたの幸せを
誰よりも願っていたのに
あなたを幸せにしたのは
知らないほかの誰かでした
あなたの笑顔にずいぶん救われたのに
あなたを笑顔にしているのは
その誰かなのですね

あなたのことばかり見つめていたのに
あなたの視線の先にはほかの誰かがいて
あなたのことばかり想っていたのに
あなたの心は
ずっとその誰かにそそがれていたことを
いまさらながら思い知ることになりました

すでにふたりの子供に恵まれ
美しく歳を重ねてこられた
あなたを見ていると
まるで自分だけ
遠く過ぎ去った季節の中に
ひとりとり残されたような寂しさを
おぼえないではいられません

けれどこうして
あなたが幸せでいてくれて
ほんとうによかった
あなたが満ち足りたやわらかな微笑みを
ひとときも絶やさないでいてくれることが
唯一の願いでもありましたから

もしもぼくの人生に意味があるとしたら
それはあなたに出逢えた
ただそのことに尽きるでしょう
あなたはいまも
ぼくの生きるよすがです 

どうぞこれからも
あなたの暮らしがやさしく
穏やでありますように
どうか、どうかお幸せに
..................早々


追伸
いまもあなたは綺麗です
やるせないほど、せつなくなるほど
とても、とても綺麗です




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