べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

ひと粒の海 もしくは、配達されることのない手紙

2008年03月16日 20時55分29秒 | 叙情

あなたの瞳から生まれたひと粒の海が
からからに乾涸びたぼくの心をうるおしてくれました
あなたはあなたの悲しみでもって
ぼくにひとときの安らぎをあたえてくれたのです
ひとはだれしも
あたえられたさだめにあらがう術をもちません
だからあなたはあなたの身の上を
そんなに悲しまないでほしいのです
たとえどんなにつらくても
悲嘆にくれたりしないでいてください
あなたはあなたにあたえられたあなたのさだめに
ただ素直にしたがっているだけなのですから
ひとにはそれぞれ
生まれながらにさだめられた役割があるといいます
どなたがおさだめになることなのか
ぼくには知る由もありませんが
きっと深いお考えがあってのことと信じたいものです
もし すべての命に役割があるとするならば
だれもがそれと気づかぬうちに
なにげない日常の中で
それとなく果たしているのかもしれませんね
少なくともあなたの頬をつたうひと粒の海は
ぼくの心をやさしくうるおしてくれました
ぼくにはあなたの悲しみを
取りのぞくことなどできません
静かに受けとめることはできても
その胸の痛みを
分かちあうことすらできないのです
けれどあなたの零したひと粒の海は
たしかに深く 
この胸に沁みていきました
せめてそのことをあなたに伝えることができたなら
そうすれば少しは
あなたの慰めになるのでしょうか
あなたの悲しみによって救われた悲しみ
ぼくはいまそのことを
しみじみ愁いているのです





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