飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

清姫は裸だった⁈

2022-06-06 21:32:19 | うんちく・小ネタ(absurd story)

道成寺伝説…。

能、人形浄瑠璃などでは有名な演目ですね!

あらすじ…。

夫婦となる約束を破って逃げる安珍。

それを追う清姫。

まさに清姫が安珍に追いつこうとしたとき、安珍は日高川の渡し船に乗ることができ逃げ延びることが…。

しかし、その後を、大蛇に化けた清姫が日高川を渡り始めた。

恐れた安珍は道成寺へと逃げこみ、そして、鐘の中に身を隠す…。

しかし…。

それを見抜いた大蛇と化した清姫。火を吐き鐘の中の安珍ともども焼け死んだ…。 

 

そんな清姫の激しい恋を描いた物語なのですが…。

 

この物語、私には、実際にあった話をモデルにしているとしか思えないのです!

その理由を今夜はお話しいたします!

 

実は、私はこの物語の舞台となった、和歌山県南部の生まれです。

幼いころからこの物語を聞いて育ったのですが…。

この道成寺伝説、作り話にしては、妙に現実的でつじつまが合っていることを、ずっと不思議に感じていました!

まず清姫の出生がしっかり分かっていること。

清姫は、現在の田辺市中辺路町真砂(私の記憶が正しければ、「まさご」ではなく「まなご」と読んだと思う)の、富田川

のほとりの宿屋の娘とされており、この場所にはちゃんと清姫の墓が残っています。

対する安珍も、現在の福島県白河の出身ということが分かっており、安珍の墓も、道成寺に安珍塚として残っています。 

宿屋の娘の清姫は、熊野詣の途中の安珍とこの宿で出会い、恋に落ちます。

そして、夫婦になる約束をしますが…。

安珍は結婚を許されていない僧の身…。

熊野詣の帰りに立ち寄るという清姫との 約束を破り、安珍は一人逃げます。

それを知らない清姫。

今か今かと安珍を待ち続けていましたが…。

安珍が遅いので、旅する人たちに安珍を見かけなかったか聞いてみたところ、その僧はすでに立ち去ったとのこ

と…。

ここから清姫が安珍を追いかけて道成寺までいくことになるのですが…。

この足取りを示したのが上の図です。

安珍は清姫の家となる宿から、本宮大社、速玉大社、そして、那智大社と、矢印のルートで旅したと考えられます。

そして、清姫に会うことを避け、安珍はそのまま北上したことになります。

対する清姫は、安珍を待っていたのですが、その位置が上図で示した場所になるはずですが…。

清姫の生家からこの場所までは、大体15キロくらい…。

それほどおかしな距離ではありません。

この場所から、安珍が逃げたことを知った清姫は、道成寺まで追いかけることになりますが、この位置から道成寺まで

は、大体40キロほど…。

安珍を一途に思う清姫ならば、このくらいの距離は追いかけてもおかしくはありません。

そして…。

大蛇と化けた清姫から逃れるため、安珍は道成寺へと駆け込みますが…。

これも、とても自然な成り行きだと思えるのです。

なぜならば…。

当時のお寺は、旅の僧を泊めることは、しごく当然のことでした。

旅の僧は、そのようにお寺に泊めてもらいながら旅を続けて、同時に修行もしていたわけです。

安珍は「行き」の道中で、既に道成寺のお世話になっていた可能性が十分あります。

ならば…。

清姫に追いかけられている安珍は、既に知り合いのいる道成寺に逃げ込むことは、当たり前の成り行きだと思うのです。

さらに…。

今年初めの私のブログでもご紹介しましたが、道成寺の、当時鐘があった場所を発掘した際に、本当に焼けた土の跡が発

見されたことです。

…。

ここまでの私の話を聞いて、皆さんどう思われましたか?

まんざら、この道成寺伝説が、ただの作り話だと決めつけられないように思えませんか?

問題なのは…。

なぜ、この物語の中で、清姫は大蛇に化けさせる必要があったのか…。

さらに…。

道成寺で、多くの僧がいるにも関わらず、なぜ、小娘一人、清姫を取り押さえることが出来なかったのか…。

なんです。

これについて、考えてみたのですが…。

普通、日高川を泳いで渡ろうとすると、着物を着ていては溺れるんじゃない?

ということです。

清姫は、安珍を必死で追いかけていた…。

おもわず日高川に入り、泳いで渡ろうとしたが、当然着物が邪魔で溺れそうになる…。

ならば、清姫はどのような行動をとるか…。

普通、安珍を追いかけるため、そして、溺れないために、着物を脱ぎ棄ててしまうと思うんです…。

清姫は、前述のように、富田川のほとりで育ったため、泳ぎは達者だったことが考えられます。

そんな自負から、泳いで日高川を渡ろうとしたものの、さすがに着物を着ていてはどうしようもない…。

着物は、帯を緩めれば、水中でも簡単に脱ぐことが出来ます。

そうなると…。

恥じらいも捨てて、着物を脱ぐことを考えないでしょうか?

さらに…。

着物を脱ぎ棄てた清姫に、好都合なことがこの後起こります。

道成寺に逃げ込んだ安珍を、裸の清姫が追いかけます。

そして、安珍は鐘の中に隠れることになりますが…。

裸のまま安珍を追いかけて道成寺に現れた清姫…。

道成寺にいた僧たちも、さすがに、年頃の娘が裸で現れてしまうと、どうしようもありません…。

禁欲を重んじる僧たちは、とにかく、裸の清姫を見ないようにするしかなく、清姫のやりたい放題になってしまうはずで

す。

鐘の中に安珍が隠れていることは分かっている。

でも、一人の力では、この鐘を持ち上げることが出来ない。

しかし、このまま安珍を逃がしたくもない…。

半ば気が狂った清姫は、成就できない恋だと悟ると、そうなるくらいならばと、辺りにある木材などをかき集めて、安珍

とともにここで焼き死のうと考えてしまっても不思議はないと思えるんです。

 

…。

後に、この清姫の狂気に満ちた恋物語は語り継がれるようになりますが、さすがに清姫が裸で追いかけたとなると、なま

めかしすぎて都合が悪い。

だから…。当たり障りのないように、清姫は大蛇に化けたことにした…。

今年の初めに私は道成寺に立ちより、いろいろと見て回っているうちに…。

なんだか本当は、道成寺伝説ってそんな物語だったのではないか?

そう考えると、この物語の全部が無理なく説明できる…。

そんな風に私は考えたのです。

 

なお、今回の私のブログは、由緒ある道成寺伝説を冒涜するものではなく、あくまで、この物語は真実味があるため、実

際にあった出来事だと考え、それならば真実はいったいどんなものだったのか…。

そんな疑問から、勝手に私が想像の中だけで考えさせていただいたものです。

 

さて、本当の道成寺伝説はどんなものだったんでしょうか?

1000年も前の物語故、今はそれを知る方法はありません…。

 

コメント
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