日々の出来事

当院の出来事を紹介します

大腸がん・・・

2012-06-28 09:57:28 | Weblog

先日ブログに書いた、内視鏡をしてもらった猫ちゃん、大腸癌でした・・・。
病理組織学的には、「大腸腺癌」、悪性度が高いと書かれて(診断されて)しまいました。

飼い主さんはもちろん、私も辛い診断名なので凹んで・落ち込んでいます。

何とかして治してさしあげたいのですが、現実的には厳しいでしょう。
例外や奇跡的なケースがあることは、過去にも経験しています。
でも大半は、教科書的にわかっている経過をとります。
小腸や大腸の腺癌の経過は厳しいものなのです。

私は若い頃は「治すこと」が重要だと思っていました。
しかし学べば学ぶほど、未解明な病気や治らない(治せない)病気もたくさんあることを実感します。
現場では、診断が重要だとつくづく感じます。
きちんと診断してさしあげて、その子に見合った対応を考えて行くことが大切だと思うのです。

仮に治らない病気だとしても、少なくとも納得はいくはずです。
治らないにしても、何をしてあげられるのか・・・。
痛み止めを使う、酸素テントを自宅に設置する、眠れるようにしてあげる・・・等々。

複数の疾患がか重なっている場合も多いので、きちんと診断してよい方向を見いだすこと、
必要なら専門家や専門施設に紹介すること、
それらがホームドクターとしての仕事だと感じることが増えました。

自宅での看取り・・・

2012-06-27 10:16:16 | Weblog
先日、猫ちゃんをご自宅で看取っていただいたケースがありました。
緩和医療、在宅医療とでもいうべきものでした。
最後までご家族が猫ちゃんを大切に思って、尽くしてくれた姿が印象的でした。

その猫ちゃんは急性腎不全で入院し、一週間の入院中、
医学的には考えうる限りの治療を全てさせていただきました。
一時良くなる傾向も見られたのですが、残念ながら腎臓の機能は完全には回復してくれませんでした。

予後(今後の経過のこと)は不良・・・とわかりました。
どうしてあげるのが、その猫ちゃんにとって一番いいことなのか・・・。
お母さんとよくお話して、

 「治る可能性はほぼないならば自宅でのんびりさせたい」、
 「家族と一緒に過ごさせたい」、

そういうご希望で、看取る前提でお返ししました。
「苦しかったら往診でもなんでもするからね・・・」、と言うのが精一杯でした。

退院後、流動食を取りに来ていただいたりもしましたが、原則自宅で過ごしていただきました。
途中で一回診せていただけましたが、かなり弱ってきている様子でした。
退院後五日間を自宅で過ごすことが叶い、最後は家族に看取られて逝ったそうです。
お亡くなりになった後、病院でご遺体の処置を受けていただきました。

現在はかなり高度な医療を受けることができる反面、まだまだ治らない病気があるのも事実です。
一生懸命・あるいは丁寧に対応しても、治らない疾患がある・・・。
医療関係者としてしては、本当に切ない問題です。
我々にできることは、手を尽くしてあげることだけです。
その時代の医療レベルで、いかにやるべきことをやりきるかが重要なのだと思っています。

大切な家族である動物の旅立ちは、非常に辛いものです。
完治がない疾患の場合、いかに苦痛を取り除き、残された時間を有効に使っていただくか・・・、
実に難しい・永遠のテーマであります。
















映画「ベニスに死す」

2012-06-20 02:02:49 | Weblog
火曜日は、予約診療日です。
どうしても・・・というケースを選んで診療しています。
朝イチで二件診て、後は自分のために時間を使いました。

昼間は家内と新津へ出かけ、夜は万代のシネ・ウィンドで、
映画「ベニスに死す」を鑑賞してきました。
名作と言われる1971年の映画ですが、リマスタリング(?)されたようで、
古いながら鮮明な画質で見てきました。

原作である小説とは設定が多少違うようです。
主人公の作曲家には、私が好きなマーラーを意識して描いています。
メインテーマの曲も有名な交響曲第五番の「アダージェット」が、
これでもか・・・と言わんばかりに美しい映像美と共に使われていました。
「真の美」は、理屈ではなく感覚的なもの・・・ということなんでしょうか?

日々、命と向き合う仕事なので、意識的に仕事から離れる時間がないと、
切り替えがきかない気がしてきていました。
一月からずっと休んでいなかったので、よい休日になりました。

日々の診療(臨床)や手術には、唯一の絶対的な答えがないので、
医療にはある種の「アート」としての側面を感じています。
たしかに教科書的なことを習い、マニュアル通りにやれば常識的な診療は実践できます。
しかし最近、私が意識してしている臨床は、もっと上の次元のこと・・・。
一件一件異なる実際の診療症例を、オーダーメイド感覚で個別に診ていく意識です。
だからすごく疲れます。

寝ても覚めても患者のことを考えているが故に、切り替えの重要性を痛感しています。








内視鏡検査

2012-06-13 22:32:49 | Weblog
今日の昼間に、血便と食欲不振がある猫ちゃんで、
大腸の内視鏡検査をしてもらってきました。

当院には細くて長い・バイオプシー(小さく切り取って調べること)可能な内視鏡がないので、
仲間の動物病院に移送してやってもらいました。
餅は餅屋でありまして、慣れた手つきで丁寧に大腸内を洗浄し観察してくれました。

当院のエコー検査やバリウム造影検査でもわかってはいた大腸の狭窄性病変が、
きれいなデジタル画像で映し出され、8カ所の粘膜バイオプシーを実施してもらいました。
病理組織検査のため検査所に提出しましたので、数日で専門家が顕微鏡で詳細に調べて診断をつけてくれます。

開腹してやる方法もあるわけですが、体力的な問題もあり、安全策をとりました。
人では普通に行われている内視鏡検査も、犬猫ですと全身麻酔が必要となります。
じっとしていられずに動いてしまうためですね。
口から内視鏡を入れる場合は、かじってしまうかもしれません。

全ての病院が全ての設備を揃えることは、もはや不可能な時代です。
歯科の器具・機械は当院が充実していますが、内視鏡やCTやMRIは外注となります。
自分が得意とする分野をより高めて、他の動物病院の役にたてたらと考えています。



スーパー看護師

2012-06-12 23:26:21 | Weblog
今年の一月からは、常勤の勤務獣医師がいない状況になっています。
この五年間は、勤務医がいない状況はなかったので、実質年中無休で診療していました。
大塚先生が都合がつけば出てくれるので、まだ年中無休状態は何とか維持しています。
7月1日も私はセミナーがあるため、その日の診療は大塚先生がしてくれる予定です。

日々の診療では、勤務医がいなくなった後、看護師たちの間に危機感が芽生えたと思います。
つまり診察や手術をする獣医師が一人しかいない・・・どうしよう・・・。
動物病院の仕事は、表向きの診察の他にも、
時間のかかる検査を継続的にしていたり(バリウム造影など)、
昼休みの間に手術をしたりするので、けっこう忙しいのが現実です。

糖尿病の子の血糖値や電解質の確認、点滴の調整、種々の投薬などなど、
しなくてはならない日々の仕事が山積しています。
うちのスタッフの中には、採血・血管留置針の設置、注射投薬を、
ほぼ確実にこなせる看護師が3人います。
彼女たちは獣医師の指示で、検査・点滴開始・経過による修正ができるのです。
「スーパー動物看護師」と呼んであげてもいいでしょう。

彼女たちにはできない仕事、それこそが獣医師本来の仕事です。
診察・診断決定・処方決定・手術・・・それ以外は彼女(彼)らの仕事になります。
手術の助手にも入ってくるし、麻酔管理の担当もしているので、
獣医大学の学生や新人の獣医師が見学にくると驚きます。

使えない獣医さんより、優れた看護師・・・、日々の実践での確信ですね。











時間割

2012-06-04 06:46:08 | Weblog
小学生の息子たちを見ていて、すごいな・・・と思うこと。
 なぜこの年齢でここまで短期間に学習を進めることができるのか・・・。
私は何となく勉強してきて獣医さんのなったクチなので、
中3まで塾に行ったことすらありませんでした。

勉強の仕方を教わった記憶がない。
学校の勉強がきちんとできていれば、それでどうにかなる・・・そう思っていました。
でもそれは、外界を知らなかっただけなんですね。

今の子供たちは、学習塾などで綿密に検討されたプログラムなどをこなしているんですね。
昨日の統合模試(?)の話を聞いて、それぞれの教科で日本全国の何番目かがわかるそうです。
別枠で親には、勉強の仕方や、課題との接し方、子供とどう接していくべきかまで説かれます。
私は話を直接聞いていませんが、「好きにさせておけば・・・」では済まない時代のようです。

仕事でも同じように思いますが、限られた時間で結果を出すことはたいへんです。
クオリティを保ち、モチベーションを保ち続けることは大人でも難しい。
限られた時間に対して「時間割」があるから、そこまでこなせている、のかと思います。
さらに結果を数値で検証しているから、自分の位置・現状がわかる・・・。
そういう時代に生きているんですね。

大人も自ら時間割を作って、自分に足りないものを高め続けていかなくて進歩がない気がします。
日々の仕事に振り回されていると、目の前の課題で消耗してしまいます。
長期的な視野で計画を立てていかないと、人生があっという間に過ぎ去りそうな危機感があります。







餅は餅屋

2012-06-02 00:15:27 | Weblog
先日、使っていたノートパソコンのバッテリーがいかれました。
5年近く使ってきたので、まあ仕方ない面もありますが、
愛用していたMacBook(黒)が使えなくなってしまいました。

かろうじて電源につなげば立ち上がるので、以前から狙っていたMacBook Pro を買ってきて、
業者さんにデータの移動作業をしてもらいました。
前のパソコンにあった様々なデータを丸ごと移動した、ということですね。

最近は、専門家に依頼した画像のデータが重くなっていました。
特にCTやMRI の画像データは重く、動かそうとすると支障がある場合も予想されていました。
以前、相談した専門医の先生は、やはり十分なスペックがないとこれからは困ると思うよ、
とアドバイスしてくれていたので、近々MacBook Pro は購入する予定ではおりました。

でも、いざとなると画面のサイズや重さの悩みがあって決定できないでいました。
Windows パソコンと比較すれば倍近い価格になるし・・・。
でも買わざるを得ない・・・そういう状況に追い込まれると、自然と決まるものですね。

自分でデータの移動をしようかとも考えましたが、苦手な分野なので、
いつもお願いしている専門業者さんに依頼しました。
その方がやっても約3時間かかり、一部設定の調整も必要でしたので、
自分でやらなくて本当によかった・・・と思いました。

動物の診療と一緒で、プロにはプロに勘所があるんですね。
横で作業を拝見していて、手術と一緒だと思いました。
予想されるトラブルを回避して、バックアップをとり
予防策を講じて、万が一がないようにしておく。
いたずらにいじくりまわさない。
触れない方がよい部分もあり、取り返しのつかない事態を絶対に避ける。
なんだ手術と一緒じゃん・・・!
でも自分は手を出さないほうがよさそうでした。
「餅は餅屋」とは、よく言ったものです。









飼い主さんの価値観

2012-06-01 10:08:54 | Weblog
日々の診療をしていると、様々な価値観の飼い主さんに出逢います。

人はそれぞれ異なった価値観を持っているので、
それに見合った診療を組み立てるのには、けっこう頭を使います。
こちらが良いことと思っている医療行為が、
必ずしも良いとは感じていただけない場合だってあるのです。

自費診療(自由診療)を動物に行う動物病院でありますから、
考え方だけでなく、費用(予算)との兼ね合いやリスクとのバランスも考慮します。
最近、「嫌だったけどしてよかった・・・」と言っていただけたのは経鼻カテーテルですね。

何らかの理由で食事が十分にとれない、栄養が足りない場合に、
鼻孔からチューブを入れて固定し、流動食を投与します。
すぐにつけたり外したりできる点がメリットです。
人では、同じようなことをすると夜眠れないなど、問題も多いようです。
犬猫では不思議とつけていてもよく寝ているし、
普通の食事も並行して摂取可能です。

21歳と高齢の猫で、甲状腺機能亢進症を患っている子は、
しばらく食べなくて心配しましたが、経鼻カテーテルの設置をしたら、
ずいぶん復活してきてくれました。
飼い主さんはチューブを着けることに相当な抵抗感があったと言っていました。
ますます食べなくなるのではないか・・・そういうことが心配になる訳です。
実際には、経過が良いので、着けてよかったね、という話になるわけですが。

良かれと思ってやってみて、うまくいくとやはりお互いにうれしいものですね。