日々の出来事

当院の出来事を紹介します

下垂体巨大腺腫の犬のその後

2014-04-30 22:28:11 | Weblog
下垂体巨大腺腫でクッシング症候群のワンちゃん・・・。

クッシング症候群の合併症である膵炎の管理で点滴していたら、
少しずつ貧血が進行してしまい、昨日から輸血を開始しました。
クロスマッチ検査をして、うちのナナちゃんから患者のナナちゃんへ、
ラブの雑種からチワワへの輸血です。
昨日と今日でゆっくり輸血を入れた結果、少し元気が出てくれました。

電解質(Na,K,Cl)の管理の他に、マグネシウム濃度やら炎症の管理に加え、
重度の心臓弁膜症や椎間板ヘルニア、膵炎・・・。
全てのバランスを考えなくてはなりません。

私は麻酔学にとても興味があるのですが、これらは麻酔前管理と考えれば当然です。
手術にもっていくための麻酔管理・術前管理は、究極の内科です。
放射線治療が計画されていますが、犬猫の放射線治療には麻酔による
  
  「不動化」

が必要なんです。

結局、麻酔をかけることになるので、今から術前管理している感覚ですね。
東京の獣医大学へ送り込むその日まで、(入院かどうかは別にして)
なんとかして状態を少しでも上げていきたいと考え、智慧を総動員しています。










脳腫瘍に放射線治療

2014-04-29 17:02:21 | Weblog
多飲多尿を主訴に、14歳のワンちゃんが来院しました。

きちんと鑑別診断を実施した結果、クッシング症候群という診断に至りました。
クッシング症候群は副腎皮質機能亢進症ですが、原因は大きく二つのタイプがあります。
マイナーなタイプは副腎にできる腫瘍、多くは脳の下垂体の腺腫(腫瘍)です。
うちでエコー検査したところ左右の副腎の大きさに差異はなく、
下垂体性のクッシング症候群が疑われたため、土曜日にCT/MRI 検査をしてもらいました。

平井先生が他院さんに連れていったのですが、前日にも理由不明の過換気があり心配していました。
予測してはいましたが、下垂体の巨大腺腫が見つかってしまいました・・・。
このタイプは「ネルソン症候群」という状態を起こしうるためトリロスタンというお薬が使えません・・・。
投薬によるコントロールができないため、このタイプは手術か放射線治療が適応とされます。

ここから先は、新潟県内というか一般の動物病院では全く対応できません。
国内でもごく限られた診療施設でしか実施されていない治療方法だからです。
患者さんであるワンちゃんは、クッシング症候群の合併症である膵炎も重篤です。
血圧が上がってしまっていたため、弁膜症のある心臓には過度の負担がかかっています。
治療に伴い、貧血も目立ってきました。
それでもご家族は、「大切な家族を放っておけない・・・」と言ってくれたのです。
治療方法のチョイスとしては放射線治療ということに決定しました。

日曜日ではありましたが、急ぎの治療が必要と判断したため、
放射線治療ができる知人の大学教授の携帯にメールしてしまいました(先生ごめんなさい)。
幸いすぐにお返事くださり、早々に受け入れてくださるとのことでした。
月曜日に獣医大学病院の担当者から電話があり、連休明けに予約を入れてくださいました。
大学病院にしては(失礼!)かなり早い対応で、先生方にはとても感謝しています。

予約日に大学病院に行っていただくまでは、当院で何とか状態を上げるか保たなくてはなりません。
今日からは輸血を開始、あらゆる方法を駆使していきます。
気持ちとしては、何がなんでももたす・・・そんな気分です。

この飼い主さんの奥さんは、私の家内の知人です。
下のお子さん(中学生)が生まれる前から飼っているワンちゃんです。
お子さんからみたら、一緒に育ってきたお姉さん犬なんですね。
そういう気持ちが、私には痛いほどわかります。
「できる限りのことはしてあげたい・・・」
私も獣医師としてできる限りのことをしてさしあげたい、と思っています。

あらゆる苦痛を取り除き、寿命が尽きるその時まで、充実した人生を過ごさせてあげたいのです。
治療の可能性がある限り、私たちは諦めない・・・うちはそういう動物病院です。
「鬼手仏心」の心で、祈りの気持ちをもちつつ、できる限りの対応をしていきます。

































狂犬病ワクチンの集合注射

2014-04-24 22:59:14 | Weblog
今日で、今月三回目の狂犬病ワクチン集合注射の当番が終わりました。
毎年、獣医師会の当番で、野外での注射業務に参加しなくてはなりません。
いろいろ考えるところがあるのですが、一種の公務・義務ですから拒めません。

日本は特殊な島国で、以前は国内に狂犬病があったわけですが、
現在は50年以上にわたり撲滅状態です。
当然、私もビデオでしか症例を見ていません。

しかし世界の国々では、どこにでも発生しうる疾患です。
犬や他のほ乳類から感染して「発病した場合」の死亡率は100%です・・・。

  死亡率 100%・・・

そういう病気は狂犬病しかないようです。

犬だけが媒介する伝染病ではないですが、実際問題としては犬の咬傷が原因となります。
フィリピンやインドで、実際の犬を見てきている同業者の話を聞くと、
見たことが無いだけで、実際には世界中で死亡者がたくさんでているようです。

そのうち再度侵入・発生する可能性はあります。
それに備えて、集団免疫を高めておく必要性がある・・・、
これが危機管理の一つのようです。









NHKの「プロフェッショナル」を見て

2014-04-22 19:11:42 | Weblog
録画していたNHKの「プロフェッショナル」を見ました。
胃がん治療の最期の砦・・・兵庫医科大学の外科医・笹子三津留氏の特集でした。
消化器外科を学んでいると必ずお名前が出てくるドクターです。
国立がんセンターから、一地方大学の教授に転身されたことは記憶のどこかにありました。

人医の専門的なレベルから見たら、我々獣医師のレベルはまだまだなんだと感じます。
犬や猫の医療は自費診療・自由診療である上に、自覚症状も伝わらない世界です。
人医なら、言葉が話せないレベルの小児科の総合診療の世界観が近いと思います。
犬猫の場合、手術が必要でも進行した状態で見つかる場合が少なくないのが実状です。

それでも様々な検査機器の進歩により、見つかる病気も多くなりました。
手術が必要な場合、我々臨床医は実施可能なものには手を尽くします。
ただ人医のような高度で洗練された・専門的な世界とは明らかに経験値が違っていると思うのです。

胃の腫瘍は犬や猫では比較的稀です。
無いことはないが、しょっちゅうあるわけではありません。
人間とはかなり事情が異なりますね。
診断をきちんとつけ、できうる限りのことをしてあげることが重要かと考えます。
場合によっては獣医の外科や放射線治療の専門医を紹介することもしています。
彼らの仕事を見学すると、自分はホームドクターなんだな・・・、と感じます。











内視鏡のトレーニング

2014-04-03 20:51:45 | Weblog
昼休みから午後にかけて、内視鏡検査のためのトレーニングを受けました。

今回導入した最新型の内視鏡は、昔のモノとはかなり勝手が違います。
細かなことができるようになった反面、「覗くだけ・・・」
では済まなくなってきているからです。

私が研修医だった20数年前は、獣医大学にもまともな内視鏡は存在していませんでした。
エコーはカラーじゃなかったし(テレビみたいだ)、
CTはまさに「断層」撮影で、狙った特定の一画面しか描出されませんでした。
(今のヘリカルCTは、一気に全体が撮影できます)

内視鏡にも軟性鏡や硬性鏡、関節鏡や外耳用、内視鏡外科手術装置など、いくつかの種類があります。
それ相応の使用方法は、トレーニングしないとまともに使えるようにはなりません。
昔の「胃カメラ」は、すごく単純で楽だったんですけどね・・・。

今日は、当院のトムくん(ゴールデン・レトリーバー)にモデルになってもらいました。
動物の場合、咬んでしまうと困るし恐怖心を与えないためにも麻酔下での操作になります。
食道から胃・十二指腸まで観察した際、胃の入り口に見慣れない変化が・・・。
トレーナーの方も、こんな病変見たこと無い・・・という反応。
三カ所バイオプシーして、検査結果待ちです。
とほほ。

大腸は案外容易、ただし検査前の浣腸が非常に重要だと思い知らされました。
洗浄や消毒、片付けのほうが、意外とたいへんだなと思います。
看護師さんも、器具の管理・洗浄など、しばらく慣れない作業が続くでしょう。

無症状の自分ちの犬に、ヤバそうな病変が見つかってしまい、
定期健康診断の重要性を痛感しました。
血液検査でなんでもわかれば、こんなに楽なことはないのですが、
実際には検査にはそれ相応な特性があります。
口腔から歯、消化管全般の内科と外科を追求したい私にとっては、
必要不可欠な道具なので、「消費税増税前」に導入してしまいました・・・。