日々の出来事

当院の出来事を紹介します

検査しないとわからない・・・

2011-12-30 22:39:38 | Weblog
今日の診察で、検査の重要性を再認識しました。
二頭のワンちゃんで、想定外の異常を確認しました。
通常の診察では、わからないことが見えてきました。

一頭は、心臓の聴診で雑音が聞こえるワンちゃんです。
今までの動物病院さんでは、聴診すらしてもらっていませんでした。
レントゲンでは心拡大が、エコーではかなりの心機能の低下が確認されました。
聴診でもある程度の推測はできたものの、
検査値の指標は、臨床症状の軽さと合致しないほど悪いものでした。
つまり見た目以上に検査結果は悪かったということです。
すぐに投薬の組み合わせを変更強化しました。

もう一頭は、近いうちに歯の処置を予定しているワンちゃんです。
麻酔前の総合検査として、一通りのチェックを行いました。
心臓に軽度の変化はあるものの、血液検査屋レントゲン等では全く異常値はありませんでした。
しかしエコー検査で、脾臓と肝臓に限局性の病変がいくつか発見されました。
すぐに悪性の変化とはいい切れませんが、良性という確証もないのです。
病変が小さいため、確定診断は現時点はけっこう難しいと思います。

診察だけではわからない、血液検査だけではわからない、
そういう変化を検出できる時代になったのですね。
デジタルレントゲン、デジタルエコーの底力を感じた今日の診療でした。








大掃除

2011-12-29 00:18:57 | Weblog
先日、病院の床を業者さんに磨いてもらいピカピカになりました。
スタッフは大掃除のまっただ中なのです。
詳細は、スタッフブログを見てください。

私は一階階段下の自分スペースを大型改造、机の向きを変えてみました。
強引に引き出しを搬入しました。
この机も引き出しも、学生時代からそのまま使用してきています。

三階に院長室はあるものの、そこにいると診察の様子がわからないのですね。
それで一階の階段下のストックヤードに、私の机はあるのです。

狭いスペースですが、無線でインターネットと接続できるので、
基本的なデスクワークはなんでもできます。
狭い方が落ち着くという点は、学生時代から変わりません。

シーラカンス

2011-12-28 23:48:32 | Weblog
ネットニュースに、以下の記事が出ていました。

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「生きた化石」として知られるシーラカンスの全遺伝情報(ゲノム)の解読に、東工大と東大、国立遺伝学研究所の共同研究グループが成功した。

 シーラカンスのゲノムの量は通常の魚よりはるかに多く、魚類と陸上動物の両方の遺伝子を持っていた。魚類が陸上へ進出した進化の謎を解く手がかりとして注目される。

 研究グループは、アフリカのタンザニアで捕獲された稚魚のゲノムを解析した。その結果、ゲノムを構成する「塩基対」の数は27億あった。マグロやメダカなど平均的な魚類の約3倍あり、人(約30億塩基対)を含めた哺乳(ほにゅう)類とほぼ同じであることが判明した。また、個体同士の情報伝達に関係する遺伝子群を調べたところ、魚類と陸上動物に特有の遺伝子を両方とも持っていることがわかった。
(2011年12月28日14時31分 読売新聞)
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私は最近、太古の時代に思いを馳せることが多くなりました。
ご先祖の誰か一人がいなくても、今の私は存在していないことになるでしょう。
今この時代の日本に生き、仕事に取り組めていることは奇跡でありましょう。

机の上に、太古のサメの歯の化石を置いています。
東京・上野の科学博物館で入手しました。
そんなものが手の中にあることに、不思議を覚えます。
シーラカンスの遺伝情報は、魚類と陸上動物の両方の遺伝子を持っていたなんて、
まさに「生きた化石」の面目躍如ですね。

進化とはまさに奇跡なのでありましょう。

こうびろう

2011-12-11 18:03:01 | Weblog
人と動物では、医療に関わる専門用語(テクニカル・ターム)で、同音異義語が時々あります。
また「向き」「方向」に関する用語で、大きな違いを感じます。
下向きと言えば、人では立っていれば足の裏から地面方向を指すしょう。
動物の場合は四つ足で立っているので、下というと・・・、人でいう前方向ということになります。
「足が痛そうなんです」、と言われて前足(人でいう手)という場合も珍しくはありません。

先日、「こうびろう」という病態の説明をしていたら、医療関係者である飼い主さんに、どうも話が通じない。
なぜだろう?と考えたら、漢字が違うので意味が全く異なるのでありました。

獣医さんの「こうびろう」は「口鼻瘻」、つまり口と鼻の間に通常はない開通部分ができていることを示しています。大半は歯が抜け落ちて口腔と鼻腔が開通している状態をいいます。
人医の「こうびろう」は「後鼻瘻」でした。鼻腔内の汚れ(粘液など)が鼻から喉に垂れてくる不快感を示しているようでした。

同音異義語は、実におもしろいし難しいですね。

ミラクル起きました

2011-12-07 23:41:40 | Weblog
昨日紹介した脳腫瘍のワンちゃん、ミラクルがおきていました。
今日の昼前に、獣医大学の専門の先生からお電話がありました。
手術がもう終わったのか、何かあったのか、不安を感じて電話にでました。

「ミラクルがおき、手術は中止しました」
と言われました。
説明を伺いましたら、脳腫瘍によってできていたシスト(袋)が縮小している。
脳の浮腫(むくみ)も改善しているので、飼い主さんと相談して手術は中止となりました、
とのことでした。

年齢と腫瘍の進行を考慮し、感染や術後に障害がでるリスクを考慮して、
今回は手術をしない・・・、正しい判断だと思いました。
今の生活の質はよく、手術による後遺症や感染の発生リスクを考慮すれば、
「手術をしない」という選択は、考え得る中でもっともリスクの低いことだと思います。

夕方、私は歯科の処置中で応対できませんでしたが、無事に新潟に戻っていらしたようでした。
今後をどう持っていくべきなのか、ご家族の方々と話し合っていかなくてはなりません。
ヒドロキシウレアなどの抗癌剤を用いるのか、対症療法に終始するか、
代替療法を試すのか・・・、ベストな選択を考えていかなくてはなりません。
考え得る限りの手を尽くしていきたいと考えています。






脳腫瘍のワンちゃんを大学病院へ紹介

2011-12-06 22:24:54 | Weblog
先月、初診でいらしたレトリバー犬は、意識不明、けいれん発作、起立不能でした。
発作のコントロール後、MRI検査を行い脳腫瘍と判明していました。
私が車で東京の検査所に連れていき、脳腫瘍の状態・程度を確認しました。
髄膜種が疑われていますが、専門的には脳内に大きな嚢胞(液体の貯まった袋)ができており、
珍しいタイプと判明しました。

脳の浮腫(むくみ)やヘルニアを起こしかけている・・・、
という読影所見から対応処置が急がれました。
しかし患者さん(犬)を紹介できる専門施設は限られます。
飼い主さんと相談した結果、私が過去に研修を受けた獣医大学の病院へご紹介しました。
しかし日程がぎっちりで、ようやく確保できた手術予定日が7日の午前中です。

専門家の先生も予定がぎっしりでお忙しい中、無理して時間を作ってくださったようです。
6日の火曜日に、飼い主さんが東京まで車で連れていかれたはずです。
明日の7日、予定通りなら朝から手術が行なわれることになっています。

初診からの約一ヶ月間、いつ急変が生じるか・・・とヒヤヒヤの毎日でした。
しかし生活の質は高い状態で耐えてくれ、昨日再診で拝見した時は、
かなり元気でありました。
あとは、専門家の先生に手を尽くしていただくだけです。
私には、祈ることしかできません。
ここまで何とかもってくれたので、ただただ明日の手術の成功を祈るばかりです。