日々の出来事

当院の出来事を紹介します

衛生管理と費用

2014-06-13 19:57:11 | Weblog
Twitter( @asaivet02 )にも書きましたが、歯科医院でハンドピース等(患者さんの口に直接接する可能性のある部位)の「滅菌」が不十分なケースが目立つ、との報道がありました。オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)やガス滅菌など、様々な方法があるわけですが、血液や唾液が関連するのが口腔内ですから器具・器械類の衛生管理は徹底して欲しいものです。

処置や手術を行う部屋の環境や衛生管理には、保険診療でもたいした金額は支払われません。滅菌作業に関しては、保険でたったの260円!・・・これでは真面目に滅菌しようという意思もくじけます。洗う・乾かす・包む滅菌にかける・・・けっこうな手間と時間がかかるものです。多くの病院では、スタッフさんの仕事の一環になっていることでしょう。私も自分自身では、年に数回しかすることがないくらいですから。

医療においては消毒・除菌・殺菌・滅菌は、それぞれ意味合いが異なります。どこまでが必要なのかは、部位やするべき処置・手術の内容によって違ってきます。真面目に衛生管理を推進しても、病院にその対価は入ってこないのです。医療関係者としての自助努力、プライドにかかっているといっても過言ではありません。実際、手袋だけで猫の避妊手術をしてしまう動物病院はたくさんあります。私は、ディスポーザブル(使い捨て)のキャップ・マスク・手袋・ガウンを用いないで開腹などの手術をするのはNGだと思っています。滅菌されていればディスポでなくてもいいと思います。今時のディスポ製品は信用でき安価になったので、人の手間と滅菌の確実性を考えたら、使わない手はないと思っています。環境に優しいかどうかは議論のあるところでしょう。

猫の避妊手術のようにある種の公共性が高い場合、地域社会でだいたい同じ料金でされているのは間違いではないと思います。独占禁止法が料金の統一性を禁じていても、だいたい周囲に合わせてその地域では一定になっていくのが事実です。反面、価格競争になると質より価格に陥ります。利益を出すためには何かをはしょります。手抜きを始めるのです。動物病院の避妊手術の場合、点滴しない、痛み止めしない、ディスポつかわない、ガウン着ない、手術室つかわない、助手や麻酔係をつけない、・・・どんどん手抜きをした方が料金が同じなら儲かるわけですね。つまりうまく手抜きをするほうが上手く経営できる。

無駄を省くことは重要ですが、医療において手抜きを考えるのは、私はいかがなものかと思っています。例えば皆さんが美容整形手術を受けるとしましょう。安いところを探しますかね?ピアスの穴あけならまだしも、鼻を高くするとか顎を削るとかをするなら、料金の他に経験数や技術・仕上がりの良さなどを考慮しませんか?医療においては、安いところは確実に何かをはしょっているとわかります。真面目な顔して、看護師さんの社会保険料を支払っていない、でも料金は安くて腕はそこそこ・・・、そういう病院はいくらでもあります。真面目にやるほど苦しくなるような仕組みでは、よい仕事はできませんよね。





















学ぶ環境

2014-06-12 01:16:38 | Weblog
セミナーのため出張して、遅くに帰ってきました。頼まれ仕事の期限があったので、先ほどメールしてようやく今日の仕事は終了です。グレン・グールドのピアノでバッハを聴きながら書いてます。

パソコンやインターネットが普及してから、どこでも情報にアクセスできる環境ができました。学会に行っても普通にタブレット端末を携帯している姿が当たり前になっています。プレゼンする先生はパソコンごと持って歩いている方もいます。英語が堪能な方は、そのまま海外にサイトにアクセスしたりも普通です。すごい先輩だと、ご自身の動物病院のホームページ内に資料室が隠してあり、自分の資料がそこから取ってこれる・・・、目の前でパッとオリジナルの資料をダウンロードして見せてくれた際はビックリしましたね。いつでも自分の資料が取り出せるようにしている・・・、臨床家であってもそこまでしているんだ・・・と感激したものです。

いつでもどこでも、東京でも地方でも、勉強はできます。若い獣医師の先生方は東京・関東近郊の動物病院に就職するケースが大多数です。学会やセミナーに行きやすいことに加え、仲間内で情報交換をしたいからだそうです。困ったら大学病院や専門性のある病院や二次医療の動物病院がある。地方の動物病院は、特に新潟では最近までMRI検査が県内ではできない状態でした。必要な場合は、東京まで持って行っていたことが懐かしく思い出されます。だからこそギリギリまでしっかりと絞り込む必要性があったのです。「わからないからとりあえず回しちゃえ」は、地方ではありえません。実力をつけたいなら、地方のまともな動物病院で絞られた方がいいのでは?と思うくらいです。この間見学に来た若い先生は、3年目でもまともな手術をさせてもらっていませんでした・・・。いったいいつになったらまともな外科手術を体験するのでしょうね?1年目から執刀し、3年目には一人で大半の外科を執刀していた自分からみると、もったいない気がします。

先日の夜中に、肥大型心筋症の猫が血栓塞栓症で来院しました。そのまま入院し、私は一人で血管留置針を設置して血栓溶解剤を投与しました。翌朝に平井先生が「院長、どうやって一人でやったんですか?」と聞いてきました。一人でやる技術があるからやってしまう・・・、やったことがある人は当たり前にできる。やらないから体験できない。必死になれば、かなりの事は一人でできるのです。私も若い頃に恩師から、「まともな獣医はこのくらい一人でやれるで(大阪弁)」と言われて、ムキになってがんばった記憶があります。

勉強はどこでもできます。ちなみに私の勉強部屋は倉庫の一部です。狭い方が自分の原点にちかく、落ち着くのです。広い応接間みたいな空間では、かえって落ち着かないのは貧乏性だからでしょうか。









再生医療

2014-06-09 18:49:49 | Weblog
人の医療も含め、時代の最先端の一つは「再生医療」でしょう。
ノーベル賞につながったiPS細胞の研究など、画期的な変化が今後認められてくると確信しています。

獣医学領域でも脂肪幹細胞を用いた再生医療は治験が実施されています。当院も登録し、過去には使用した実績もあります。活性化リンパ球療法などを実施している動物病院も出て来ています。以前、活性化リンパ球療法を口腔内扁平上皮癌の犬に実施したことがありました。残念ながら、そのケースは十分な有効性は出せませんでした・・・。

この数ヶ月で、マイブームなのは「再生因子」による治療です。細胞そのものを用いず、成長因子いわゆるグロース・ファクターを投与する治療方法です。名古屋大学の研究成果を先輩の獣医師を介して紹介されました。有償治験の一環として承り、完治が難しいとされる疾患に用いています。意識の高い飼い主さんでないと、費用やリスクにご理解いただけないので、必要そうな場合に限り提案させていただいています。

営業の担当者さんから、様々な実際の症例のお話を聞いています。今までの医療では完治やコントロールが難しい症例で、有効な結果が出てきているようです。人の医療機関でも治験がスタートし、肝硬変や糖尿病・その他での有効性の検証が始まりました。ちらほらと、「これはいいかも!」という事例が出ていると聞いています。

ホームドクターである以上、飼い主のいる動物で「実験」をするわけにはいきません。しかし有望な治療方法がない場合には、リスクをとっていかないと前に進むこともないのです。乳癌やニキビダニ症・甲状腺機能低下症に肝臓腫瘍を抱えるコーギーの老犬に投与しています。さきほど診療に来て、再生因子を投与していかれました。非常に快活になって元気になった・・・との好評価をいただいています。難治性の口内炎の猫も今日来ていましたが、以前に比べてステロイド剤に頼ることが無くなりました。腎臓癌を摘出した老シーズーは、対側の腎機能の低下のため再生因子の投与を開始しました。良い結果が出るかはこれから判断ですが、腎機能の低下に関しては仲間うちでは意外によい成績が報告されてきています。

根拠・エビデンスのある医療(EBM)に加え、未知の分野ではありますが、冷静な検証をしていきたいと思っています。こういう貴重な体験を紹介してくださった先輩のK獣医師には、感謝の言葉しかありません。






お詫びいたします

2014-06-06 00:19:46 | Weblog
今週の火曜日、当院の手違いにより、飼い主様に多大な不快感とご迷惑をかけてしまい、まずは心よりお詫び申し上げます。

予約診療日にご予約いただいていたのですが、同姓同名の別の飼い主様のカルテを誤って出してしまいました。
そのカルテは、未収金があるにも関わらず全くご連絡がいただけない状況であったため、スタッフは診療をお引き受けしかねると判断し、その旨お伝えしてしまいました。しかしお伝えした後に、同姓同名の猫を飼っている別の飼い主様だったということが判明した次第です。

院長からお詫びのご連絡を差し上げた際、「ホームページ上に謝罪の文章を掲載して欲しい。」と依頼されました。今後このような過ちを二度と繰り返さぬよう、スタッフ一同細心の注意を払って参ります。ここに謹んでお詫びを掲載させていただきます。

あさい動物病院 院長 浅井 厚