日々の出来事

当院の出来事を紹介します

熱中症は犬猫にも起きます

2010-07-24 10:47:35 | Weblog
最近暑い日が通くせいか、犬や猫も熱中症になりますか?、とよく質問を受けます。結論としては、犬や猫も熱中症になります。むしろなりやすい、と考えていただいたほうがよいでしょう。

犬や猫は、体温を調節する仕組みが人間とは異なります。全く汗をかかないわけではないですが、ダラダラと流れるような汗をかく事はないのです。犬はパンティングと言われる、口を開けて早い呼吸をすることで、体内の熱を放散させて体温を下げるようにしています。車のエンジン・マフラーと一緒ですね。猫で口を開けてハアハアと呼吸をしていたら、要注意な症状ですので気をつけてください。続くようなら、あるいは安静にしていても開口呼吸をするなら獣医さんに相談なさったほうがいいくらいです。

さきほども、犬をエアコンの効いた部屋に置いて仕事に行っているが、「お隣さんから犬の体力が低下するよ」と言われたという飼い主さんがいました。人ではエアコン(クーラー)の使い過ぎが問題になるのでしょう。それをそのまま犬に当てはめてしまうのは、いかがなものかと思います。犬は体温調節がヘタクソです。基本的に暑いのは苦手なんですね。特に大型犬、は要注意です。また外にいる犬も危険です。散歩に行く際には、冷やした水を持って行き、犬がへばってくるなら無理しないほうがいいです。辛そうなら日陰や涼しいところに移動して、水を飲ませたり、体にかけたり、タオルを湿らせてかけてあげてもよいでしょう。

犬は靴をはかず、地面に近い位置を歩くため、アスファルトからの照り返しなど、過酷な状態で散歩しているのですね。どうか最大限に配慮をして、安全なお散歩を楽しんでください。出かける時間の工夫(朝早く)や散歩時間の短縮(変わりに出る回数増やす)、など、工夫したほうがよいでしょう。意識がもうろうとしている、倒れた、呼吸が落ち着かない、などの場合は動物病院に行く必要があります。名古屋や大阪の仲間の動物病院では、いつ熱中症の犬が駆け込んできてもいいように、準備していると聞いています。

猫の輸血(ダブル)

2010-07-23 13:58:24 | Weblog
前回書いた膵炎の猫ちゃん、一進一退です。懸命の治療と看病が続きます。一時期食欲が出てよい感じになったのですが、おそらく膵炎の再燃憎悪、つまり再発悪化でありましょう。もともと脱水症状であったため、点滴などにより貧血が目立ってきました。
どうしよう・・・。貧血の管理という単純な問題ではなく、貧血は全身状態悪化の結果であります。したがって対症療法とはいえ、輸血しないと状態の維持・改善が期待できない、そういう状況が時々おこります。ちなみに輸血は膵炎の治療としては有効な方法でもあるのです。

先々週に、合計3回輸血もした老猫の患者さんがいたため、居候のドナー猫は使ってしまいました(血液をもらいました)。しばらく休ませないといけません。それでも輸血が必要な症例は来ます。なるべくしない方向で考えますが、仕方ない場合は輸血に踏み切ります。犬や猫にも血液型はあり、実際にはクロスマッチ検査でドナー(血液をあげる側)とレシピエント(血液を受け取る側)の相性を確認して、慎重に入れていきます。犬に比べて猫では、シビアな様子のチェックが欠かせません。すこしづつ輸血しながら、容態を見続けていきます。

昨晩はたまたま、もう一頭(超高齢猫)で輸血せざるを得ない患者さんが入院していました。食道に障害があるため、何をしても逆流してしまい弱っています。明日、内視鏡で胃に給餌用にチューブを着けます。その麻酔のために輸血が必要になったのです・・・。ドナーの猫は限られていますが、なんとか采配して、二頭とも輸血を行いうまくいきました。一晩、気が休まることはありませんでした。よかれと思って輸血しても、悪い方向に行く可能性も多々あるからです。そのくらい重症な子が受ける、それが輸血なのでしょう。猫は元気になり、私は疲れる、そういう図式ですね。

膵炎の患者さんが続けてきました

2010-07-21 06:18:11 | Weblog
診療をしていると、同じ疾患の患者さんがなぜだか続けて来る場合があります。先々週あたりは下痢の犬や猫が多かったのですが、最近は何故だか膵炎の患者さんが何頭も続きました。こういう事態を「流行病(はやりやまい)」と業界用語で揶揄します。

犬や猫の膵炎は、以前は診断が困難な場合が多々ありました。一般的な範囲の血液検査やレントゲン検査では確定できない場合も多いからです。超音波エコーや新しい検査方法(動物の検査所に外注)でかなり絞り込めるようになってきて助かっています。こういう検査方法を考えだす研究者はすごいと思います。特に「猫の」膵炎は診断が容易ではなかったため、症状が怪しい猫を検査すると、けっこう引っかかってきます。先日も肝臓の検査値に異常がある猫で確認したら引っかかってしまいました。解剖学的に一部共有している部分があり、膵炎から肝臓に悪影響が及んでいるものと思われます。こういうケースはけっこう多いのですが、疑ってかからないと全く見つけられないし、確認をとらないと治療方法が確定できません。腎臓が弱っていて食べてくれない猫に、点滴やらなにやらしてみましたが反応が悪く、膵炎の併発は多いため疑って検査してみたらやはり当たってしまいました。

怖いのは「純粋に」膵炎なのか・・・と言う事です。他の疾患、例えば消化管内の異物や腫瘍によっても検査値が上昇してくる場合を経験しています。本当に単純な膵炎だけなのか・・・、頭を悩ませることが多々あるのが膵臓です。卒論が膵臓関係だったのですが、臨床的にはまだまだ謎の多い臓器です。

田中先生の円満退職

2010-07-15 22:49:22 | Weblog
お知らせです。

平成22年7月15日をもちまして、当院の勤務獣医師・田中史彦先生が退職いたしました。3年以上に渡り、皮膚科を中心に内科全般の診療で、たいへん熱心に診療に取り組んでくれました。当院の診療を支えてくれましたので感謝しています。初春から相談を受け、時期をみて独立・開業の予定だそうですが、しばらくは準備中ということになります。
 
今まで田中先生をご指名下さっていた飼い主の皆様には、たいへんご迷惑をおかけいたします。本人の希望を尊重させていただいた上での円満退職ですので、どうかご理解をいただけたらと思います。なお今後は、院長・浅井と柳田、大塚の3人の獣医師で診療をさせていただきます。皮膚科は、もともと院長が得意分野にしておりますので、田中先生の皮膚科症例は引き継ぎます。難しいケースに関しては、どうぶつ皮膚病センターを始めとする専門医と連携して対応してまいります。

当院のポリシーである、年末年始やお盆も含めた「毎日診療」には、勤務獣医師の確保が欠かせません。今後も獣医師補充の予定がありますが、現時点ではまだ確定しておりません。有能でやる気のある獣医師は、独立していくのがこの業界の慣例です。どうか彼の独立を応援して、気持ちよく送り出してあげてください。よろしくお願いいたします。

月イチ意見交換会

2010-07-05 05:59:17 | Weblog
今日は、病院の月イチ意見交換会を行う日です。昼休みの間に時間を取り、スタッフ全員と意見の交換を行います。

スタッフの人数が10人くらいまでは必要なかったのです。しかし徐々に人が増え、全員が集合している日がなくなってしまいコミュニケーションの問題を感じることが増えました。体験や意見の共有が難しくなったわけですね。例えば、なにか軽微なミスがあった場合でも、その場にいなかったスタッフは実感が持てません。私の意見や指示は、文書(ノート)で共有している面があるのですが、やはり直接言葉で語りかけないと伝わらない・・・、ニュアンスが伝わらないのです。

その時間帯は、恐縮ですが電話にも出ない方向でスタッフ全員が籠らせていただきます。自由闊達な議論を期待していますが、スタッフは若いので、意見を言えと言われたから言う、そういうことも多いのです。徐々に、自らの意見を配慮ある発言で言う、そういう大人に育っていくことを期待しています。

往診・送迎

2010-07-04 12:23:38 | Weblog
表向きは往診や送迎はしていません。しかし、起立不能の大型犬や事情がある飼い主さんの場合、依頼されればお受けするように努力しています。今日もこれから寝たきりの大型犬を迎えに行く予定です。

過去には、迎えに来て欲しいではなく、往診で自宅で避妊去勢手術をやってくれ、なんていう依頼もあったものです。これは自宅で麻酔をかけて手術をやれという意味で、大昔は実際にあったらしいです。台所かどこかで筋肉注射で麻酔をかけ、洗濯籠かなにかを逆さまにして台とし、固定して吸入麻酔なしでやっていたような時代もあったと聞いた事があります。

往診します、と書いてしまうと何でもかんでも往診で、という飼い主さんが出て来ます。必要に応じて・・・というのがクオリティを考えた場合の限界でしょう。正直、必要性を話て動物を持ち帰るケースが多いですね。ワクチン10頭などという場合は、捕まえておいてもらいます。でもたいてい1頭くらい逃げてしまいますね。

恩師とお別れしてきました

2010-07-02 23:40:14 | Weblog
6月30日に、生まれた直後からお世話になったかかりつけの小児科医とお別れしてきました。

当然記憶にはありませんが聞いたところによれば、私は生まれて10日目ごろ瀕死の状態になっていたらしく、公立病院では助からないと言われていたようです。祖父のつてを使い地域の有力者の紹介で、その開業したばかりのその小児科医を紹介されて、ダメもとで伺ったような話でした。親が聞いた先生からの説明では、「アレルギー体質に加えて感染症を合併し、危険な状態だった。新生児に抗生物質を使用することについて当時は異論があり、公立病院では適切な治療ができていなかった。ペニシリンを投与したら、泣かなかった赤ん坊が次の日から泣くくらい元気になって結果は良かった」というストーリーのようでした。

40年以上も開業医として地域の医療に従事していらした方でした。専門は皮膚科であり、内科全般をこなし、公立病院や大学病院に出向いて勉強を続けておられました。必要なら公立病院や大学病院に適切に紹介していました。私の母が水腎症になって手術になった際は都立病院を紹介され、入院中は時々勉強がてら病室に寄ってくれていました。

常に患者と共にあることの重さを、背中で教えてくれた恩人でした。町医者という言葉は差別用語になったらしいですが、まさに、町医者としての使命を果たされた方だったと感じています。私の印象は、病院としては暇な方で、いつも先生は机に向かって勉強していました。患者が来ると、椅子を回してこちらを向き、診察が終わるとまた机に向き直してしまう、そんな印象でありました。学術肌と言えば聞こえはいいでしょうが、商売上手な人ではなかったと思います。

思い出に何か欲しいとお願いし、先生が中学生時代に購入して共に戦争を乗り越え、医学部に行く勉強に付き添い、最後の日まで診察室のデスク上で使っていたという「英和辞典」を、形見としていただいてきました。70年くらい前の辞書ということになるでしょう。この医師に出逢って助けられなければ今の私は存在しません。したがって動物病院も家族も存在していないことになります。出逢いに、何か運命的なものを感じないわけにはいきません。