日々の出来事

当院の出来事を紹介します

ニキビダニ

2009-08-29 13:51:37 | Weblog
 皮膚病の原因にはアレルギーやカビ、細菌感染などたくさんの理由があります。
寄生虫であるダニの一種ニキビダニが背景にあるケースが、最近増えているように感じます。
毛穴である毛包に居着くダニの一種で、産まれてすぐに母犬から子犬へ移行(感染)するとされています。何だか治りが悪いな~、と思って再検査すると検出されて、コイツがいたのか!、と思うことが増えました。
 お薬で良くなるケースが多いのですが、薬剤に対する抵抗力が出てきているのか、すぐに治らないことがあります。
 細菌でもダニでも、薬剤に耐性がある者は生き残ります。しぶといヤツが生き残る訳ですね。
いいかげんな薬の使い方がまかり通っているようなので、耐性の発現にさらに拍車をかけています。
また、本来ダニが毛包内に居ても皮膚病になることはまずないため(共存してしまっていて常在化している)、何か体側での異常(皮膚のバリア機能の低下)が生じて症状が出て来るものと考えられます。
 医学的には、細胞性免疫の障害が背景にあると言われています。中年期で症状が出て来た場合は、
甲状腺ホルモンの分泌低下や腫瘍が発生して免疫力が低下している場合が見逃せません。
 ちなみに私はダニが(虫全般が)嫌いです。顕微鏡でダニを見つけるたびに、自分が痒くなります。
あ、ニキビダニは人間には伝染らないので、ご心配なく。

原稿の締め切り・・・

2009-08-27 16:10:16 | Weblog
 8月25日に締め切りがある、専門誌の原稿書きに追われていました。
難治性のものが多い、「猫の口内炎のインフォームドコンセント(説明と同意)と私の一工夫」というテーマで執筆を依頼されていました。
お世話になっている先輩の口利きでしたので、これから経験を増やすであろう若い獣医師たちのために一生懸命書きました。
 獣医師が継続教育を受けていく内容は、正直個々人の自覚に任されています。
正直、全く勉強しなくても、特に罰則はありません。
2年に1回書類を提出して、継続の意思を示すだけです。
 しかし今の若い先生方は、勉強はして当たり前の世代です。
情報も良質のものがたくさん手に入ります。
昔は、秘伝の考えや技がたくさんあり、知識や技術は「盗むもの」でありました。
職人の世界のようですね。
 今は、情報は共有する時代です。でも教えてもらって当たり前・・・、
そういう若い先生が増えている気がします。
飼い主さんご家族の気持ちにふれあわあいと、よい診療はできないのですが、
知識や技術にだけ関心があると、頭でっかちなドクターが育ってしまいます。

薬剤アレルギー!

2009-08-21 21:04:55 | Weblog
 昨日、久しぶりに薬剤アレルギーを体験してしまいました。
歯科処置のために全身麻酔をかけ、抗生物質を入れた途端、皮膚に斑点が・・・。
顔面の浮腫(むくみ)や発赤もおき、薬疹と判断できました。
既に気管内挿管して吸入麻酔下での管理呼吸でしたが、血圧も低下傾向でビビりました。
アナフィラキシーといわれる危険な反応でした。
 すぐに即効型のステロイド剤を点滴し、循環管理をしたところ、意外に早く落ち着きました。
それでも皮膚の症状はある程度残ってしまっているので、治療の継続は必要そうです。
さらに悪い症状としては心停止なんてこともありうるので、こちらとしては真剣です。
 動物病院では、ほぼ毎日麻酔をかけ、抗生物質やワクチンを注射したりします。
その医療行為の全てに、薬剤アレルギーは生じ得ます。消毒剤や食べ物でもありうるのです。
うちの息子が、以前キウイを食べて蕁麻疹(じんましん)を生じ、ステロイド点滴になったこともありました。
 隠れた体質、とは恐ろしいものです。

縫合糸に対する異物反応

2009-08-19 00:26:54 | Weblog
 稀なことではありますが、手術で使う糸に異物反応が生じてしまい、その糸の周囲がシコリになってしまうことがあります。
「縫合糸肉芽腫」と言います。
以前、一般的に使用されていた絹糸(けんし)はその中でも反応が強く起こるとされ、私も経験があります。
体側は異物を排除しようとして過剰に反応し、結局排除できないから固めてしまおうとする・・・、
生体の免疫反応が過剰応答してしまうわけですね。
 最近の糸はモノフィラメント(撚り糸でない)タイプが選べますし、
吸収糸(しばらくすると溶けてしまう)も種類が選べるので重宝しています。
絹糸を使うことって本当に減りました。というか無くなりました。
ここ一番で、しっかりグリップの効いた結紮をしたい場合は、使いたくなるのですが、
ここは我慢です。体の中に残したい素材ではないからです。
 かえって医療用のワイヤーのほうが異物反応が低いとされているので、
特にノラ猫の不妊手術では、してあることを示すためにわざとワイヤーを使っています。
使い勝手は最悪ですが!(結びにくい!!)



医療に向く人・向かない人

2009-08-18 21:16:09 | Weblog
 臨床の現場にいると、医療に向いている人と向いていない人がいると感じます。
いろんな方を見て来て、技術はあるがハートが無い人、ハートはあっても技術が伴わない人もいると思います。
私からみればこの人は医療に向いていないんじゃないかな、と感じる人でも、
他の方が見れば普通の医療関係者と見なすかも知れません。
 何事も実際にやってみなくてはわからないわけです。
やってみたら案外伸びた、そういう方も実際知っています。
でも大半は、始めの数週間・数ヶ月でわかります。
やる気がなくては勤まりませんが、やる気だけでは命の現場は回らないのです。
基本に忠実に、手抜きをしない・考えない、救急時にはそれ相応で適格な対応ができる・・・、
現場にいる医療関係者には必須の素養です。
 内科向き、外科向きなどの見方の他に、人の気持ちがわかるとか、患者さんの死を糧にできるとか・・・、
いろんな人がいます。持っているものをそれぞれのスタッフが伸ばしてくれたら、と期待しています。
 

顕微鏡歯科

2009-08-15 13:08:52 | Weblog
 先日読んだ週刊誌に、「顕微鏡歯科」の特集がありました。手術用の顕微鏡を用いて詳細に観察しながら歯科処置を行う。まだまだ一般的ではないのかもしれませんが、若い歯科医師の間ではすでに常識です。
 獣医師の世界でも、内視鏡が導入されてその能力が評価されつつありますし、今後は同様に顕微鏡下での処置も常識的になっていくでしょうね。すでに眼科領域では不可欠な道具と認識されてきていますから。

癌をウィルスでやっつける・・・

2009-08-12 22:08:51 | Weblog
 新聞やネットのニュースで、癌をウィルスでやっつける治療が始まるというニュースが報道されていました。今の医療におけるいくつかの武器、外科手術・抗癌剤・放射線等には、それぞれにメリットやデメリットがあると感じます。悪く言えば、えぐり取る・毒を盛る・焼きつぶす・・・そういうことです。体には負担ですよね。
 免疫を強めたりして癌をやっつける治療を免疫療法と言います。うちでは大学の先生から教えていただいた「タヒボ」という植物から取れるNQ-801 という物質が、奇跡を起こしたケースがあります。
 その猫はお腹の中に癌が散らばっている「播種」という状態でしたが、ダメもとでNQ-801 を与えたところなんと復活してしまいました。奇跡は起こりうるんですね!
 でも多くに奇跡は起きないのも、また事実なのです。できる限りのことをしてあげたいのは、どんな医療関係者も一緒でしょう。治療法を研究をしている方々も、そんな思いがあってここまで来れたのではないでしょうか。新しい治療方法の成功の期待しています。

予約診療日の当番医をして

2009-08-11 23:34:48 | Weblog
以前は、火曜日を週一回の休診日にしていました。
獣医師が4名となり、今は火曜日を予約診療の日にしています。
実際入院患者さんもいますし、ホテルの出入りや急患もあります。
獣医師が交代で当番をしております。
今日は、院長である私が当番で、朝から数件こなしていました。
午前中に、「アポなし」初診が3件も来ました・・・。
診ないわけにもいきませんが、予約の方に迷惑がかかってもいけません。
この辺の綱渡りが楽しめると仕事が楽しくなりますね。
このピンチをどう切り抜けるのか!
最後の看護師が帰宅したあと、神経疾患である前庭障害の犬の急患が来ました。
一人で対応するのは本当に大変です。
それでも何とかするのが、仕事なんですけどね!

猫のクッシング症候群

2009-08-11 02:14:30 | Weblog
 先日、糖尿病の症状を示した猫が来院しました。皮膚の厚みが薄くなっていてペラペラで、一部は裂けていました・・・。難病である「皮膚脆弱症候群」が十分に疑われました。猫に多い糖尿病がその原因である可能性が高いだろうとも思いましたが、そこは経験のある身、単純な糖尿病ではなさそうだ・・・とも感じていました。
 検査にかなりの費用がかかるため、初めはインスリン注射で経過をみましたが、さらに皮膚の裂開が拡大、原因究明の検査を行いました。皮膚の病理検査結果はまだですが、血液でのホルモン検査から「猫の」クッシング症候群という比較的珍しいホルモン失調であると確定できました。通常、検査結果での判定が難しいケースが多い病気ですが、重症であるためかはっきりと診断できる結果が得られました。
 教科書的には、皮膚症状が重い猫は経過が良くない、とされています。さて今後はどうしたものか・・・、手立てはあるのか、何ができるのか、私たちは考えなくてはなりません。単純に血糖値をコントロールするだけではダメなようです。傷が治りにくいわけで、どうにか傷の拡大を阻止しなくてはなりません。決まった治療方法がない病態なので、頭の痛いところです。ホントに見た目もかわいそうなんですよ・・・。困りました。

医療ミスを防ぐには・・・

2009-08-10 03:14:08 | Weblog
 人間はミスをするものです。医療現場はミスを起こしやすい環境が多く、常にリスクを伴う行為がたくさんあります。
動物病院でもその状況は同じです。お薬に対して激しい副反応が出てしまったり、薬の量を計算ミスしたり、検査中にトラブルが生じたり等、様々なことが起こりえます。私たちにできることは、ミスが生じない・生じにくい「仕組み」を作り上げることだけです。院長である私の目が届かないところでも事故やミスは発生しえます。私にできることは、その事故やミスが生じにくい体制を作るよう、具体的な指示を出すことです。またミスが発生してしまった場合でも、すぐに報告、相談、対応ができればその被害は最小限で済むでしょう。声かけ、指差し確認、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が大切なのです。なんだか大きな会社みたいですね!