日々の出来事

当院の出来事を紹介します

子宮蓄膿症の麻酔を乗り越えました

2014-08-26 21:16:21 | Weblog
今日の昼間に、腎不全・貧血・脱水を抱えるチワワの子宮蓄膿症の手術を乗り越えました。
初診で来院した際には、低体温に加え12% の脱水状態、
甲状腺ホルモンはFT4が低値であり、白血球数80000越えで、
エンドトキシン血症があるのか腎不全で、輸血が必要な状況でした。

抗生剤、輸液、輸血など、術前の補正に最大限努め、
あとは思い切ってやるのみ!と覚悟を決めて手術に臨みました。
執刀は平井先生、助手は看護師、私は麻酔係と外回りです。

通常なら麻酔は、極めて安定したものが大半で、トラブルはあまり生じません。
しかし、今回はかなりジビアなコンディションでありましたので、

  久しぶりの「麻酔専属状態」・・・

あらゆる知識と経験を注ぎ込み、何事もトラブルなく術中・術後を乗り越えることに専念しました。

開腹したら、予想通りとんでもない大きさの感染子宮が出てきました。
平井先生は丁寧に手術を進め、危なげなく摘出、閉腹後は小さな乳腺腫瘍も切り取る余裕もありました。
血圧にかなりの気を使ってやり遂げましたので、術後の覚醒も予想通りの経過でまあまあ順調でした。

自分が大学病院の外科研修医だった20うん年前に、
当時助教授だった師匠の先生が、麻酔を持たせてくれたことを思い出します。

  「オペは基本通り、慎重に・慌てず・丁寧にやれ・・・」

  「そのための麻酔は俺が必ずもたせてやるから・・・」

麻酔医の言葉を信じて、外科担当医は突き進むまでです。

今回は、うまくいったようです。
すでに起立可能な状況になって、術後の経過は良好です。
麻酔の担当をして、世代の交代を痛感してしまいました。
(本当は自分が執刀したかっただけね)













不妊手術をしていないと・・・

2014-08-26 00:20:09 | Weblog
今日、手術をしたチワワは、異常に子宮が太く変化していました。
乳腺にも小さな腫瘍があり、片側の乳腺をまとめて切除しました。

若い時期に不妊手術を受け、卵巣ホルモンの影響を受けない状況を作れば、
相当に高い確率で、乳腺腫瘍の発生を予防することができます。
残念ながらできてしまった乳腺腫瘍は、切除する必要があります。
なぜなら40%くらいの確率で、悪性の乳癌と診断されるからなんですね。
以前は、乳腺腫瘍ができてしまうと、その時点で不妊手術をしても、
その後の乳腺腫瘍の発生を抑制することはできない、と考えられていました。
しかし最近の研究では、中年期でも不妊手術をすることで乳腺腫瘍の再発生を抑制できる・・・、
そのような研究結果が報告されているもようです。

子宮は、細菌感染により蓄膿症になる可能性が常にあります。
今日のワンちゃんは、子宮や卵巣に異常がありました。
一ヶ月間も不正な出血が続いていたそうです。
今回、手術して正解だったと考えています。

明日は、別のワンちゃんで、子宮蓄膿症の摘出を行う予定です。
相当にこじれた状態で来院されました。
病気の影響で腎不全と貧血を抱えています。
麻酔リスクが高いので、今日から輸血を入れて、明日の手術に備えています。
手術は難しくないですが、麻酔管理が難しいと予想しています。
こういう場合は手術を平井先生にしてもらい、麻酔管理は私がやることになります。

  「なにがなんでも生きて終わらせる・・・」

これが麻酔科医の一つの使命となります。
低血圧やエンドトキシン・ショック、凝固不全が起こりやすいので、
とても慎重に麻酔を進めなくてはなりません。

簡単なようで案外しっぺ返しがあるのが、子宮蓄膿症の麻酔です。
なにもトラブルを生じなかった・・・それが目指す世界観になります。


















発表の準備も大変だ・・・

2014-08-22 23:35:43 | Weblog
昨晩は、所属している新潟小動物臨床研究会の定例会がありました。
今回は、8月の末に静岡県で開催される中部地区の小動物獣医学会で症例発表をするため、
その予行演習をしました。

出かける時間の直前に、尿閉で高カリウム血症の猫が来院しました・・・。
何とか尿道の詰まりを解決し、点滴治療を開始して、現地に遅れて行きました。
出かけたい時刻に、救急の患者さんが来てしまう・・・、
不思議なんですが、意外によくあることなんですよ。

発表は、制限時間8分のプレゼンテーションにおさめなくてはなりませんが、
なんだかんだと言いたいことを正確にこぼしなく話すためには、
いろいろ工夫が必要です。
結局12分くらいになってしまい、話す内容の絞り込みが必要とわかりました。

珍しい経過のワンちゃんの症例を発表してくる予定です。
そのための準備は、5月くらいから着々と進んできたのでありました。
特に今回は、個人で参加・発表ではなく、会の推薦症例になっているため、
同業者の仲間からのアドバイスをいただき、疑問点の解決や準備が必要になっています。
個人プレーでは済まない状況なんですね。

毎日の診療で、常にぶっつけ本番なのが小動物の臨床です。
それに反して、何週間もかけて準備に準備を重ねていく・・・、
そもそもそういう地道なことに向いていない性格なので、
リードしてくれる仲間の存在が重要に感じました。

おまけに顔面神経麻痺やそれに続けて久しぶりに喘息発作まで出たので・・・、
少々切ない1ヶ月を過ごしました。
残り一週間、緻密に準備を重ね、当日を迎えたいと思っています。








時間外診療・・・

2014-08-21 07:33:41 | Weblog
昨晩、時間外で初診のワンちゃんの診療をしました。
お盆休み中はも、何件か診療時間外に診療をしていました。
昨晩は、病院の電話をボイスワープ・転送にしていて電話がきました。

かなりの数の動物病院が新潟市内や近隣に存在しています。
しかし・・・時間外にも対応してくれる動物病院はまだまだ少数です。
全く診ないか、電話にも出ない、そういうところの方が多いと思われます。

昼間の診療で十分忙しいし、夜間まで診ていたら倒れてしまうよ・・・、
要はそういうことなんでしょう。
私でさえ、そう感じますから。

開業して10年くらいまでは、時間外も無制限で対応していました。
しかし、時間外にかかってくる電話の内容の多くは、獣医さん的な急患ではないことも多いのです。
話を聞けば、数日前から具合が悪かった・・・、とか様子をみていた・・・が多いのです。
明日の診療時間内でもいいじゃないかな・・・と感じる場合も多いのでした。

中には、その判断ができないから電話してくるケースもあり仕方ないと思います。
ときどき真夜中にかけてきて、「今やってますか?」と言う人もいました。
時間外の費用がかかるのは当たり前ですのに、支払う能力がないケースも散見されます。
「え!時間外料金かかるの?じゃあいいです」という人すらいましたね。
そんなこんなで、最近は「当院にカルテがある患者さんのみ」に時間外対応していました。

お盆休み中に、膀胱腫瘍の初診の猫で尿閉・腎後性腎不全・高カリウム血症のため、
「真の」急患を体験しました。診ていなかったら確実に亡くなっていたでしょう。
連れて来てもらって本当によかった・・・。
開けててよかった、と思いました。
まあこのケースは、診療時間の最後に来たのですが・・・。
時間外で同じようなケースが来たら、スタッフもいないし正直タイヘンでしょう。

こんな時、私の師匠の「急患の定義」を思い出します。

 「急患とは、飼い主さんが急患と判断したもの全て」

(獣医師的な急患の判断は通用しないということ)

昨晩の急患は、このケースでした。
生きる・死ぬではない。でも心配なんですよね。
飼い主さんには、「緊急性の程度は判断できない」のですね。
診てさしあげて、安心してもらえればそれでいいのであります。



















対症療法だけでは・・・

2014-08-20 00:51:23 | Weblog
火曜日なのでお休みをいただき、平井先生が留守番していました。

初診でいらした猫で血液検査をしたらしく、明らかな低タンパク血症があり点滴中です。
お盆前にかかった動物病院さんでは、嘔吐に対する対症療法だけだったようです。
検査をしないとわからない病態、というものがあるんですね・・。

便か尿に、蛋白が漏れている可能性が高まりました。
やはり状態を確認しないで、対症療法だけだと見落としがおこります。

   明日は我が身、「後医は名医」

を忘れずに仕事に向き合いたいと感じております。


お盆休み中は

2014-08-19 00:08:02 | Weblog
世の中はお盆休みでしたね。
私も家内の兄弟家族が帰省していたので、小さい子供の遊び相手を少ししました。
子供の遊びって凄いですね、ルールが途中から変わってしまう・・・。
久しぶりの論理のない遊びに、無邪気とは恐ろしいもの・・・と痛感しました。

私の特発性末梢性顔面神経麻痺は、少しずつ回復してきています。
右下の唇が動くようになってきました!
右目の瞬きがしづらいので、手術はできますが少々やりにいですね。

今年のお盆休み中は、ホテル・トリミングは当然混雑していました。
診療では、比較的重大なケースは少なかった印象です。
それでも初診で、膀胱腫瘍から尿閉になり高カリウム血症で危なかった猫がきました。
不整脈が出ていてこれはけっこうヤバかったです。一晩は持たなかったでしょう。
初診で来ていただけて幸いでした。開けててよかった!

この猫は高齢で元々慢性腎不全があり、かかりつけがお盆休みに入っていたのですね。
一晩放置したらアウトだったでしょう。このあたりに、運の良し悪しを感じます。
今日退院して、かかりつけに返しました。

18歳だし、家は遠いし、かかりつけもあるし、そこはまともな獣医さんだし、
今回退院して後のことはかかりつけの先生と相談なさるでしょう。
少しでも快適に、余生を生ききって欲しいなと考えています。







顔面神経麻痺・・・

2014-08-14 02:08:29 | Weblog
先日の夜、突然発熱して筋肉痛などの症状が出ました。
夜中も非常に辛い状況が続きました。
ウィルス性の風邪かなにかだろうな・・・、
総合感冒薬を飲んで、一晩耐えていました。
明日、かかりつけ医に相談だな・・・と思っていました。

翌日の朝、歯磨きをしようとしたら、

 口に含んだ水が漏れてきてしまうのです・・・。

「顔面神経麻痺だ」とピンときました。

感覚はある、中枢神経の異常を疑う所見はない・・・、
自分で「末梢性の右側顔面神経麻痺」とわかりました。

かかりつけ医に電話したら、神経内科を紹介してくれました。
その先生が中枢性の可能性があると判断したら、
CT/MRI 検査が必要だから戻してくるよ・・・と言われました。
かかりつけ医は、CT/MRI の画像診断が専門なのです。

診察の結果、特発性片側性末梢性顔面神経麻痺・・・、
いわゆる「ベル麻痺」と言われる比較的多く発生しているタイプと診断されました。
「2~3ヶ月で自然治癒することが大半ですね」
と言われ、当面は経過観察です。

診療には、多少の不便を感じています。
右目の瞬きがうまくできないし、右の唇がうまく動かないから話しにくい。
パピプペポ・・・が言いにくいですね。
長時間、話をしていると疲れて滑舌が悪くなります。

8月末に静岡県で学会発表があるんですが、仕方ないからこのまま行くしかないですね。
11月末に呼ばれている結婚式でのスピーチまでには治っていたいものです。

犬や猫を連れてうちに来院する医師の飼い主さんに話をすると、

 「ああベル麻痺ですね、先生、働き過ぎじゃないの~」

こんな反応ばかりです・・・。
無理し過ぎはダメよ・・・という天の啓示なんでしょうか?