日々の出来事

当院の出来事を紹介します

しつけ教室

2011-11-25 19:42:30 | Weblog
先日オリエンテーションを開催し、昨日からしつけ教室(初級コース)を開始しました。
行動学・しつけの専門家である獣医師に来ていただき、初回から四件のご参加をいただきました。

動物行動学は比較的新しい専門分野であり、私が獣医大学の学生だった時点では習うことすらありませんでした。
卒業して研修医をしている頃に、そういう分野がアメリカを中心に伸びているような話を聞きました。
その後も興味はありましたが、そもそも外科学や麻酔学に興味がある身、行動学は講習会で話を聞く程度で、
あまり勉強してはいませんでした。

今回、たまたま大学の後輩にあたる先生がその分野の専門家となっており、専門家にお任せしようと決めました。
そこで会場として当院をお貸しし、今までになかった医療(?)サービスを開始するはこびとなりました。
私自分の能力以外でも提供できる動物病院サービスとして、今までですとトリミング部門がありました。
(私はトリミングはできません・・・)
今回、一つの新しい部門をスタートすることができたわけですね。

当院は「場所」を提供するだけです。
特殊な設備も不要ですので、上手にスペースを活用していただきたいものです。
今回は待合室を使用しましたが、今後は三階のフリースペースをかたづけてから使ってもらいたいと考えています。
担当の獣医師と相談して、「ご家族で来れるように」、週末の夜、金曜日のナイトセミナーとして設定しました。
毎週、金曜日の夜19時からが初級コース、土曜日の夜19時からが子犬用のパピークラスです。
よかったら病院の受付電話(025-232-1112)へお申し込みください。




猫の全臼歯抜歯中に・・・

2011-11-19 01:57:30 | Weblog
金曜日は、口内炎で苦しんでいる猫ちゃんの全臼歯抜歯を行いました。
この子は、上顎の犬歯も二本破折していたため、犬歯の抜歯も実施しました。
下顎の犬歯と前歯(切歯)以外の大半の歯を抜歯してしまいました。

歯茎は細い吸収糸(溶ける糸)で縫合します。
歯が無くなったら、食べられないのでは?と心配する人がけっこういます。
実際には、痛い部分が無くなって、よく食べるようになります。
獲物を捕る野生動物ではないので、室内で缶詰やドライフードを食べるには問題ありません。

ただ今日は、その抜歯中に辛い残念なことも生じました。
私は手術中で身動きが取れない状況でしたが、入院の急変がありました。
クッシング症候群による膵炎で入院していたワンちゃんが、
食後に誤嚥(穴違い)して、吐いた食べ物が気管に入ってしまい、スタッフの目の前で急変したのです。
柳田先生がすぐに対応してくれましたが、救命はかないませんでした・・・。

このワンちゃんは、長く通っていただいた馴染みの子でした。
いろんな病気がおきましたが、その都度復活してくれる元気な子でした。
誤嚥が原因で亡くなることは、人や動物での医療は時々生じます。
その場にすぐに駆けつけてあげることができず、非常に残念に思っています。
長くおつきあいいただけた子が亡くなると、本当に淋しくなります。
今は、いい子だったね、お疲れさま、と言ってご冥福を祈るばかりです。
悲しいです。






点滴ポンプが足りないな・・・

2011-11-18 11:25:23 | Weblog
退院と入院が繰り返された結果、昨晩は入院が20頭いました。
全員が点滴の適応ではないものの、点滴の必要な子がけっこういます。
絶対外せない・・・心臓病の犬や猫、腎不全の猫もいます。

人間なら、循環器の異常がなければ、数時間で500mlのバッグ一本・・・、
などという点滴の仕方も可能でしょう。
「無くなりました」とナースコールで声かけしてもくれます。
しかし小動物ではそれは無理です。
大半は小型の犬や猫であり、正確に安全に点滴するにはポンプの使用が必須です。
速すぎる点滴は、肺水腫を起こして命にかかわる可能性があります。
必ず、正確に一時間あたり○○ml と点滴しなくてはならないのです。

動物の医療の方が、人間の医療より手間がかかるケースはたくさんあります。
レントゲン撮影でも、自ら機械にはまって耐えてはくれないわけです。
必ず保定(押さえる)者が必要となります。
「吸ってえ~・息を止めて・カシャ」・・・ということは動物病院ではあり得ないですね。

点滴ポンプがないと実際困るので、追加発注してしまいました。



最新型ICUの導入

2011-11-16 22:57:16 | Weblog
火曜日に、注文してあった最新型のICU設備が病院に搬入・設置されました。
発注してから一ヶ月、待ちに待った機械設備です。
ICUとは、Intensive Care Unit の略です。
人では集中治療室、動物病院では酸素や温度、湿度等を管理できる設備を指しています。

肺や心臓に重大な問題がある子を見守るために必要となりました。
術前・術後の管理にも役立ちますので、思い切って最新型を導入しました。
(お金があり余っているわけではありません・・・)

設置したその日から、いきなりICU適応のワンちゃんが入院しました。
心臓を包む膜の内側に液体が溜まってしまう「心タンポナーデ」です。
おまけに「肺高血圧症」と判断される条件を満たしており、シビアな状況でありました。

今日はさらに、猫で甲状腺機能亢進症で肥大型心筋症の高齢猫がICUに入りました。
つまり二頭に使っている状態です。
入院18頭のうち、2頭が酸素室を必要としている状況です。
余計な入院はさせない方針ですが、入院でないと救えない命もたくさんあります。
ICUは強力な武器になるのです。






感染症との闘い

2011-11-15 15:33:44 | Weblog
しばらくアップをサボってしまいました。
10月末から猫の感染症と隔離室で闘っており、緊張感が抜けませんでした。
ようやく一段落してきたところです。

普段から「院内感染」を起こさないため、様々な工夫を凝らし努力しています。
人の病院も含め、感染症の病原体(ウィルスや細菌など)はいたるところに存在しているものです。
室内飼育の犬や猫であっても、人間の靴の裏に付いて来たりで、発生することはそうまれではありません。
抗ウィルス・細菌性の空気清浄機をかけ、診察台その他を消毒し、手も診察ごとに洗うか消毒しています。
スタッフの教育も徹底して行なっています。
しかし病原体持ち込みのリスクはゼロにはならない・・・。
不安ですが、それが病院というものでもあります。

人の病院に行き、咳をしている人が近くにいたとします。
風邪か気管支炎かマイコプラズマ肺炎か喘息か結核かインフルエンザか・・・、
その時点ではわかりません。
動物病院も同じリスクがあるのです。
したがって、ワクチンをしていない犬や猫は気をつけなくてはなりません。
今後、子犬や子猫のワクチンは来院時間を制限するか、特別室を作ろうと考えています。

予めお電話をいただけていると、診察時間をずらしたりして対応することが可能です。
今回のケースも、予めお電話いただけていて、もしかして・・・と感じました。
診療時間外に来ていただき、封鎖環境で診察したところ、感染力の強い病気だと判明しました。
そのまま隔離室で入院、院内消毒、封鎖環境の作成、接触スタッフの限定化などなど、たいへんでした。

当院には、診察室や手術室と完全に隔離できる部屋が複数あります。
今の病院は、空気の排気や動線(人が動くルート)の交錯も計算して設計しました。
またウィルスや病原性細菌をやっつける中性電解水の作製装置を初めから導入しました。
全てはこの状況がおきた際に、遮蔽して普通の診療を続けるためでした。
そしてついにこの隔離システムが役立つときが、来たのであります。
自分の習った・学んだ、感染症に対する知識が正しいのでしょう。
今のところ半月以上経ちますが、院内感染を起こしてはいないと判断できます。
なぜなら、わけありで長く入院しているワクチンなしの子猫ちゃんも、
院内感染を起こさずに元気に過ごしているからです。

しかし、ここに至っても油断はできません。
宮崎県での家畜伝染病である口蹄疫の大発生を忘れてはならないのです。
医療関係者であり病院の責任者である以上、通院や入院している子の安全は確保する責務があります。
スタッフに毎日「油断するな!」と言い続け、うるさいなあ・・・と思われても私は手を緩めません。
ワクチンをしてあればかからない病気ではあるんですが、してないと命に関わる場合があるのです。
敵が放射線と一緒で眼に見えないため、かえって怖いのであります。