日々の出来事

当院の出来事を紹介します

なるべく早く診断し見逃しを避ける

2011-08-31 00:04:02 | Weblog
普段の診察でも最大限に気をつけていることは、なるべく早く診断することです。
焦るわけではないけれど、時期を見誤ると治るもの治らないと知っているからです。
例えば胃癌も(タイプによるでしょうが)初期であれば内視鏡で完治可能でしょう。
しかし進行したステージでは、手術や抗癌剤を行なっても厳しいでしょう。

動物の場合、ご家族が症状に気づいた段階で進行していることが多々あります。
症状が見えてくる、そういう段階はすでに進行したやっかいな病態の可能性が高いのです。
それを症状に対する「対症療法」だけで話を進めてしまうと厄介な事態があり得ます。

もう一つ重要な視点は、見逃さないぞ!という姿勢です。
わかりやすい病気もたくさんありますが、疑って調べないと判明してこない場合も多いからです。
他の動物病院で治らない、と言って流れてくるケースは、
たいてい何か確認事項が抜けていることが多いです。
特に一つ何かしらの原因が見つかってしまうと、その一つで安心(?)してしまう・・・。
裏に他の異常が隠れていないか、あまり検討しないのでしょう。
私も初めからやり過ぎたな、と反省することも時々はあります。
でも怖いのは、見逃しです。

肝臓の検査値に異常があったらエコーをみるのは当たり前でしょう。
肝臓の数値が悪いから肝臓の薬・・・では腫瘍などの異常を見逃してしまいます。
肝臓の検査値に異常がなくても、スクリーニングとしてざっとエコー検査をする習慣が重要です。
うちでは、それでたくさんの「想定外」の変化をたくさん検出しています。
特に、高精度のエコー検査機を導入してから、発見する機会が激増しました。

先入観を持たずに、ざっと見て絞り込みをし、見逃しを減らす・・・、
そういう診療をしていると、そんなにたくさんの患者さんはこなせません。
ワクチンなど簡単なものばかりならいいですが、難しいケースがくるとたいへんです。
すごく難しいのが三つ・四つ重なると、けっこうしんどいものですよ。

がんばってくれたけど

2011-08-29 13:03:23 | Weblog
昨晩は、未明まで入院中の猫ちゃんから目が離せずにいました。

長生きしてくれた老猫ですが、ご家族には大切にされているのがよくわかる子です。
私が開業する前からのおつきあいなのですが、最近弱ってきていました。
心筋症による三尖弁閉鎖不全に加え、慢性腎不全、膵炎、甲状腺機能亢進症が合併していました。
よく生きているなあ・・・と感心してしまうがんばりでした。

先週も状態が悪く数日入院したところ、怒るくらいに元気になってくれました。
しかし退院後は状態が悪かったみたいで、昨晩往診したら肺水腫を疑う状態でした。
自宅では看取れないかもしれないがやるだけやってみよう、ということですぐに連れ帰り、
レントゲン等の各種検査、強心利尿剤投与、保温、酸素吸入、心電図モニタリングで、
一晩、がんばってみました。
しかし思ったより尿量が確保できず、苦しい状況が続いていました。

今までも、この子には奇跡的な生きる力を感じることが多々ありました。
しかし今回は願い叶わず、未明の3時30分すぎ、
急に心拍数が低下してお迎えが来てしまいました・・・。
4時すぎにご家族が迎えに来てくださいました。
なんとかして、元気に返してあげたかったので、非常に残念です。
言葉では言えない、疲労感を感じています。

時間外の対応について

2011-08-28 01:25:12 | Weblog
先程、勉強会が終わり帰宅しました。診療時間の後には、定期的に仲間内での勉強会をしたりしています。
普段から時間外の診療もなるべく受けています。特にうちの病院にかかったことがある方には、時間外に通じる携帯電話の番号をお教えして、私と勤務医で対応しています。

今日も勉強会中の時間外に、病院にかかってきた電話が転送されて携帯にかかってきました…。しかし残念なことに、非通知設定の電話番号であるため、携帯電話が鳴らないのです。かかなおしてあげようにも、非通知では相手の番号がわかりません…。着信は出ますが非通知のため、気付かないのです。そもそも非通知設定の電話からかけてくる方は、こちらの番号はご存知なのに、自分の番号は教えたくない…という考え方の方です。まれにお年寄りなんかで、自分の番号が非通知設定になっていることを知らない方がおられます。翌日に病院に電話がかかってきて、時間外に電話に出なかった…と文句を言う方がいらっしゃいます…。そういう場合はたいてい非通知設定になっているみたいです。できればご自身の電話が非通知設定かどうか、確認していただけたら、と思います。

急なお別れ

2011-08-27 17:44:15 | Weblog
先日、朝のミーティング前に馴染みの患者さんから電話がきました。

朝から普通にしていて、朝ご飯も食べていたそうです。
朝食後にいつももらっているリンゴをもらった直後に急に呼吸困難になったようでした。
呼吸が止まっているかも・・・と言われてすぐに伺いましたが、事切れていました。

お母さんは必死で手を入れて取り出そうとしたようですが、
何も取れなかったみたいです。
シャンプーしてあげるために持ち帰り、口腔内から喉の奥、食道も見てみましたが、
気管内に食べ物を誤嚥している状態はないと思われました。

リンゴもいつも食べているもので、サイズもいつもと同じ切り方だったそうです。
もともと軟口蓋過長症で、過去に手術をしたことがあるパグです。
頻繁に、喉が「ゼハゼハ」「ゲーゲー」いっているそういうワンちゃんでした。
嚥下の際に、呼吸がうまくできなくなってしまったものと思われます。
喉に慢性的なトラブルを抱えている子は、時々呼吸停止が起き得るのです。

私もスタッフも、馴染みの犬と飼い主さんだっただけに、胸が詰まる思いをしています。





腸の腺癌でした・・・

2011-08-11 15:27:14 | Weblog
先週、術後のお亡くなりになってしまった猫ちゃんの検査結果が来ました。

腸にできた「腺癌」という病変でした。
病変は取りきれていましたが、すでに漿膜側に浸潤、
大網に転移があり、播種と言われる状態でした。

お手上げといえばそうですが、術後の抗癌剤や様々な免疫療法(代替療法)で、
状態が安定するケースもありますから、なんとか持ちこたえて欲しかったです。

開腹時点で少量の腹水がありました。
腺癌で腹水が貯まりだすと、通常経過は良くないです。
マージン陰性で病変が取りきれていても、遠隔転移があると予後・経過は厳しいものです。

今はその厳しい現実を受け止めて、ご冥福を祈るばかりです。




術後管理中の急変・・・

2011-08-08 11:41:32 | Weblog
金曜日にCT撮影をして、土曜日に腸の腫瘍の摘出をした猫ちゃん、
手術は順調に終了していたんですが、術後一時間に急変してしまいました。

術後のモニタリング中で、大塚先生が付いてくれていましたが、
急に心拍数が低下し、血圧も下がってしまいました。
必死のレスキューを行いましたが、良い結果にはつながりませんでした。

急変の連絡をしてから一時間ほど持ちこたえてくれました。
なんとか心臓が動いているという状態で飼い主さんが到着し、
状況・経過の説明後に、お母さんの腕の中で看取っていただきました。
飼い主さんは冷静に話を聞いてくださいましたが、
お互いに非常につらい結果となってしまいました・・・。

スタッフ皆で最大限の努力をしたのですが、残念なこととなってしまい、
未だ脱力感・喪失感が抜けません。
うまくいくだろう、という予測のもと、安全を期して手術に臨みました。
生き物であるため急変という事態は常にありえるのですが、
手術はうまくいっていたため、当事者としては非常に悔やまれるケースになってしまいました。

飼い主さんの期待に応えられなかった時、動物病院の関係者は非常につらい思いをします。
元気になって帰っていく子がたくさんいる反面、つらいドラマがあるのも動物病院です。
今回の事態は通常そういうことは起きないため、非常にせつない気持ちで一杯です。







術前CT撮影

2011-08-05 22:46:36 | Weblog
今日は新潟まつりの民謡流しの日でしたね。

CT撮影のため、午後から院外にでました。
道路の規制がもっと厳しいかと思いましたが、案外順調でした。
CT撮影を終えてから明日の手術の準備をして、民謡流しの見物に出かけました。

患者さんは猫、嘔吐と食欲不振で来院しました。
エコー検査で腹腔内に腫瘍が見つかりました。
いきなり開腹してアプローチする場合もあるのですが、
私はなるべく術前にCTで体の中の状態を撮影するようにしています。

高精度のエコー(アロカ社のα7)でかなりの状況がわかるのですが、
やはり立体感が違うのですね。
3D画像の出せるエコーのソフトもあるようですが・・・。
CTでは、隣接した臓器との関連性や血管との兼ね合いがよくわかります。

今日のCTは3D画像を構築してもらいました。
腫瘍は右の腎臓の尾腹側にあり、大動脈からの太い血管が直接腫瘍に入っているようです。
おそらく消化管(小腸)の腫瘍だと思われますが、開腹してみないと、
どのように切除していいか、やってみないとわかりません。

それでもエコーやCTによる立体画像があると、開ける立場としてはイメージが違ってきます。
以前、人の医療現場で、手術室に iPad に出したCT画像を映し出して手術しているシーンを見ました。
そういう時代に動物病院もなってきているわけなんですね。

時間外を診ていることの現実

2011-08-05 00:16:05 | Weblog
先日の夜、病院に電話がかかってきました。
初診の方でした。
日曜の夜で、かかりつけも他の動物病院もどこも電話に出ない・・・、
犬が骨折したみたいなので、診て欲しいとのことでした。

私は転送された電話を外出先でうけ、出先から約束した時刻前に病院に戻りました。
来院した犬は、間違いなく骨折でした。
検査と術式検討のため鎮痛剤を注射して入院としました。
問題は、その後にかかってきた電話の内容です。
通うには遠いので、自宅近くの動物病院に行きたいから退院させて欲しいとの要望でした。

私は、手術が必要であり、それ相応な術式を考えて費用やリスクをご説明してありました。
遠方であることが要因なのか、費用の見積もり等が受け入れがたかったのか、
はたまた私自身を信用していただけなかったのか等については、私にはわかりません。
いずれにしても獣医師はご家族のご意向に従うしかないのが現実です。

夜間の時間外に無理して診察しても、翌日には近所のかかりつけに戻ってしまう。
「いいように使われている」と感じるのは被害妄想でしょうか?
ひどいケースでは、真夜中や未明に電話してきて「今やってますか?」
と聞く人もたまにいます。
「こんな時間にすみません」がないのです。

お金を支払う私たち消費者側に選択する権利がある・・・、
あるいは電話で相談するだけならタダだよね・・・、
まあ確かにそうなんですが、当事者としては切ないのですね。
疲れていても、寝ていても、締切が来ていても、診なくてはならない時がある。
そういう使命感から電話に出ているわけですよ。
言葉の話せない命の問題だとわかっているから。

「今日は助かったよ、じゃあとはこちらで適当にやるから、さようなら・・・」
こんな感じの人がいるんですよね。
そこに感謝はあるのかい?と思うことがあります。
「先生、こんな時間に診てくれてありがとう!」
っていう反応があるかないかは重要です。
感謝があるかないか・・・これは医療関係者にはどうしても必要な報酬なんですよ。
しかし「俺っていいように使われているなあ」、と思うことが増えました。