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血栓塞栓症の治療

2012-07-11 19:30:42 | Weblog
昨晩、予約診療の最後に来た猫は長年なじみの猫でした。

元気だったそうで、一年くらい会っていませんでした。
急に左前足がきかなくなり、様子がおかしいとのことで来院されました。
診察してみてすぐに気づいたことは、右前足との温度差です。

  触ってみたら左は冷たい感じがする・・・。

爪を切っても出血もない・・・。
血行障害や血管の閉塞が疑われました。

おまけに呼吸もすごく荒い・・・。
心臓病からくる血栓塞栓症が強く疑われました。
緊急疾患の代表です。
こういう疾患があるからこそ、お休みや時間外であっても、
自分の患者さんは基本的に自分が診ているわけですね。

状況から死亡リスクは高いと判断しました。

少ないスタッフ数ではありましたが、そのまま夜に向け、
検査や治療に入りました。
局所の血行障害を確認し、レントゲンで肺水腫を確認、
心エコーでは肥大型心筋症が疑われました。

ICUケージで酸素化しつつ、強心利尿治療を行い、
飼い主さんの了解のもと、

  すっごく高価な薬剤である血栓溶解剤(t-PA)の

      「クリアクター」・・・・・・・・・

とうとう使ってしまいました。
一本、うん万円もするんです。

人の脳梗塞などでは、非常に有効性のある血栓溶解剤です。
でも保険の効かない動物医療で使っていいものやら・・・。
心臓病の専門医の先生から得ていた情報をもとに、投薬してみました。

夜中中、回復を信じて見守りました。

しかし・・・、
一晩頑張ってくれていたのですが、午前中に急変してしまい、
旅だって行かれました。

できうる限りのことはしたつもりなんですが、
お力になることがかなわず、とても残念に思っています。
本当に急なお別れで、飼い主さんはさぞお辛いこととお察ししています。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-12-07 23:36:34
血栓無理やり溶かしたら再環流障害でK急激に上がったりとかしないんですかね?
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血栓溶解後の対応 (あさい)
2012-12-12 23:33:13
ご質問、ありがとうございました。

確かに詰まっていた血栓を溶解させた場合、再還流に伴う変化は確実に生じると思います。低酸素(酸欠)状態にあった組織に再度血流が戻ってくれば、活性酸素や乳酸などの種々の物質が回ってくるのでありましょう。

微小血栓が末梢血管に詰まっても様々な障害が起きてきます。ましてはある程度大きな血管、動脈が閉塞していることはさすがに放置はできないでしょうね。虚血性の壊死や酸欠での組織破壊が進んでしまうと考えます。

血栓溶解後に、再還流による変化が出たとしても、それに対してその都度対応していくしかないのではないでしょうか?こまめなモニタリングが欠かせないし、内科的な腕の見せ所のように感じています。
血液ガスの解析や電解質の測定で細やかな対応が必須のように思います。
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