日々の出来事

当院の出来事を紹介します

被曝を怖れて逃げ出した医師VSハイパーレスキュー

2011-03-21 12:42:01 | Weblog
東北の新聞、河北新報社のホームページに東北大学の川島教授の文が載っていました。

 <東北大加齢医学研究所 川島隆太教授
~こうした中、信じられないことですが、放射能の被ばくを恐れて、診療を放棄し逃げだす医師まで出ていると聞きました。東北大医学系研究科の教授として、放射線防御に関する医師への教育が足りなかったと猛省するとともに、同じ医師として、そのような人がいることが悲しくて悔しくて仕方ありません。~>

まあ、そういう人もいるのでありましょうね。
逃げ出せないのか、逃げ出さないのか・・・、ある意思をもって残っている方には敬意を払いたいと思います。

原発への放水のため、命をかけて放水に出向いている東京消防庁のハイパーレスキュー隊。
私は、「ありがとう」と手紙を書いて送りたいと考えています。
まさに国民のために危険を承知でミッションを果たしに行ってくれているわけですね。
比較の対象にもなりませんが、基本的な生き方・志が異なっているんでしょう。

自分のことだけ考えて使命を放棄するのか、他者のために自己犠牲をはらえるのか・・・、
偉そうなことを書いてもその場に居合わせなければ、自分もどう行動するかわかりません。
被曝した(疑いの)犬がきたら(現場に測定器がありませんが)、
放射線を外に出さないよう、遮蔽されたレントゲン室で診るか入院させることになるでしょう。

人間の医師は自分にも感染するかもしれない病気を診察する機会は多いはずです。
結核やエイズ、インフルエンザ等々、数えたらキリがないでしょう。
獣医師も、動物から人にうつる可能性のある病気を毎日診ています。
それを防御しつつ診療するから国家資格なのです。
それが嫌な人は、医師や獣医師になってはならないと私は考えています。






避難所巡り

2011-03-20 23:24:38 | Weblog
本日、新潟市体育館の避難所を回ってきました。

体育館内への入り口の外(室内のトイレ手前)にケージがあり、避難して来た犬がいました。ストーブの前で抱いている飼い主さんも数人いました。一様に、新潟の方々が親切にしてくれてうれしい、とおっしゃっていました。前日にトリミングの無料サービスがあったようで、寒いからとチワワに服をくれたと感激しておられました。ペットショップでは、被災して避難してきたと話したら大幅な割引をしてくれてしまい、かえって恐縮してしまった・・・とのお話もありました。

私がお話した飼い主さんの中に、特定の治療食を食べているとか、甲状腺製剤を継続しているが無くなってきている、混合ワクチンを打つ時期が来ている、というような話もありました。吠えるワンちゃんで、車の中に毛布をひいて体育館からは放しているケースも見受けられました。寒さは大丈夫でしょうか?

連絡ノートがあるので、そこに緊急事は動物病院へ連絡するように記入してきました。

腹膜炎の犬の手術

2011-03-20 00:09:46 | Weblog
16日に書いた胆汁性腹膜炎のワンちゃん、がんばってくれています。

まだ入院中です

でも今日、急な容体の変化があり、再度お腹を開けることになりました・・・。
先ほどまで手術していて、今は術後管理の最中です。
覚醒まちです。

元々は胆汁が漏れたことによる腹膜炎で、転院していらしたケースでした。
東北関東大震災のあった時に手術中で、お腹を洗い、胆嚢と十二指腸を吻合し、
お腹は半閉鎖にして毎日洗浄して、腹腔内をキレイにしていました。

皮膚のかぶれがありましたが、排液がきれいになってきたためドレーンという軟らかいチューブに変更し、
経過は比較的良好でした。
今朝も自分で食事をとって、けっこう元気でありました。

しかし夕方に包帯を交換したら、ドレーンからなにやら胃液状の液体がでてきました。
昨日まではなかったことです。
つい最近、胃か腸に穿孔が生じたと判断されました。
飼い主さんは、朝お見舞いにいらして、その後は県外に出張とのことでした。
お電話して状態を説明、緊急手術のご理解を得ました。

開けてみたら、胆嚢と十二指腸の吻合部ではなく、胃に穴が開いていました・・・。
腹膜炎が重度で、腹膜だけでなく胃や腸の漿膜面も変性して変色していました。
胃の漿膜面(表面)がボロボロで、縫い合わせようにも裂けてしまう、そういう状態でした。
腹腔内臓器の癒着も重度なため、穿孔部へのアプローチも困難を極めました。

結局縫い合わせても裂けてしまうため、パッチといわれる布状のシートを貼付けてなんとかしました。
今日、膵臓の近くにできていたおでき(腫瘤)は「肉芽腫」と診断されました。
肉芽腫は「腫」と書きますが、腫瘍ではないものです。
生体側が何かを封じ込めようとして、固まってしまいしこりになってしまったものです。
ダックスフントに多い、無菌性結節性脂肪織炎かと思いましたが、病理医の判断では典型例ではない、との意見でありました。

腹膜や漿膜の変性が重度なので、内科治療でがんばらなければいけません。
「元気になって欲しい」、祈るような気持ちで、寄り添っています。
できる限りのことはしたつもりです。
本人(犬)の体力・回復力・生命力に期待して、するべきことをやりきるまでです。
お互いに、ちょっとしんどくなってきています。

被災・避難していらした飼い主さん

2011-03-19 00:29:27 | Weblog
昨日、新潟市獣医師会の会合がありました。

被災して脱出していらした方や動物たちに、何ができるか意見交換しました。

誤った情報も流れる場合があるようです。
例えば、被爆した可能性のある人は検査で確認してから避難所に来ているわけですね。
ある先生が避難所で聞いた話ですが、
「動物(犬)は検査していないため被爆しているかもしれないから放さないように・・・」
という指示が出ていたようです。

保健所の担当者に確認しましたが、それは指示外だと断言していました。
つまり、人が被爆していなければ一緒にいる犬も被爆していないと考えて差し支えない、
そういうことです。
逆も真ではあるんですが、一方だけ被爆しているという事態はまずないと考えている、
とおっしゃっていました。

常識的に、私も同様だと考えています。
今するべきことは、避難していらした飼い主さんや犬猫などの動物を、
他の避難者と上手に共存させることでしょう。
フードの手配や要望の聞き取り等、震災を体験している新潟の獣医師たちは、
できる活動を始めています。


東日本大震災で被災した親戚に関して

2011-03-16 20:40:42 | Weblog
宮城県や岩手県では、地震によるたいへんな被害が出ていますね。
被災に合われた方々が、少しでも早く通常の生活に戻れることを祈るばかりです・・・。

地震が起きた時は、私は犬の手術中でした。
胆汁性腹膜炎の犬が転院してきており、胆嚢と十二指腸を吻合している最中でした。
止めるに止めれない・・・そういう状況で、初めは自分がめまいを起こしているのかと考えたくらいです。

家内の弟家族が仙台市内にいました。
児童館の館長をしている関係で、義弟は職場に、その妻と子供は幼稚園の迎えで離れていたようです。
大きな怪我もなく3晩を幼稚園ですごし、昨日の夜に臨時のバスで仙台から新潟へ非難してきました。

バスセンターまで迎えに行きましたが、たいそう疲れた様子でありました。
それでも子供2人は意外に元気で、大人はグロッキーという感じがありました。
多数の方が亡くなっている現状ですから、無事に帰ってこれただけでも感謝しなくてはいけませんね。

義弟は週末に、仕事でまた仙台へ戻るそうです。
各自が自らの責務を淡々と果たしていくしか、復興への道はなさそうです。
私も停電しようが、放射能が来ようが、物資がなくなろうが、自分のするべきことをするのみです。
今日一日節電や宅配の遅延を体験し、電気や水道、暖房が当たり前にある生活が恵まれ過ぎている・・・・、
と実感しました。




エコー検査機を入れ換えました!

2011-03-05 00:25:36 | Weblog
昨日、新しい超音波エコーの機械に入れ換えを行いました。

高精度な画像が得られる、カラー・ドップラー付きのエコー、
 アロカ社の「α7」です。

上位機種のα10も市場にはあるんですが、専門家に言わせればこれは車に例えればフェラーリだそうです。
臨床の現場で必要な機能と画質はα7でも十分すぎるので、これは現実的なメルセデスという感じでありましょう。

今までのエコーは、開業後に初めて銀行借り入れを起こして購入した思い出深い機械でした。
非常に発生が稀な猫の肝臓癌や、猫のエリスロポエチン産生腎腫瘍など、いろんな病気を見つけてくれた相棒でした。

しかし時代は変わりました。
当時、カラー・ドップラーはまだ普及し始めた段階で、手が出る価格ではありませんでした。
画質も荒かったので、今から見れば別の機械と言ってもおかしくはないでしょう。

本物のメルセデスが買えるくらいの価格がしましたが、診療に必要な機器として取り入れました。
診断の良し悪しが、患者さんやご家族の運命を変えてしまいます。
大きな設備投資ではありますが、現場で毎日使う機械ですので、思い切って購入しました。

一番喜んでいるのは、じつは柳田先生であります。
エコーによる画像診断をテーマに、勉強を続けてきたからです。
4月からは、月に一回、東京で心臓のエコー検査実習に参加するそうです。
使いこなせないと価値が発揮できないわけですね!










凝固異常は意外に多い

2011-03-02 09:01:00 | Weblog
先日、抜歯をしようとした猫で、術前検査で凝固異常が見つかりました。かなりの異常値で歯石除去のみにとどめ、抜歯は延期しました。

APTT値がかなり延長していましたので、猫に比較的多い第12因子欠損症を疑って調べています。

また犬の避妊手術でPT値がやや延長していた子は、やはり術後の出血がとまりにくく、結局輸血をおこないました…。もちろん手術手技が悪いわけではありませんよ!そういう体質のワンちゃんが案外いるんだ…ということを知っていていただけたらと思います。

いきなり手術で切ってしまい、後から大騒ぎ…そういう時代ではないと思います。

心臓が弱い…?

2011-03-01 18:06:00 | Weblog
先日、夜間の救急患者の犬を時間外に診察しました。震えと食欲不振があり、前から同じような症状を繰り返していたようでした。

かかっていた動物病院では、検査した時に心臓が弱い…と言われていたそうです。診断名前は?と聞いてみたところ、心臓が弱い…と言われただけで、特定の診断名は言われていないみたいでした。

エコー検査はしましたか?と聞いたら、していない…とのこと。いろんな事情が絡んでいるのでしょうが、確定診断が得られていないのは明らかです。そのわりには、けっこう強めの薬剤が選択されていました。

今のところ心臓はそんなに悪くない印象です。頚椎の変形があったため、首の疼痛から震えが来ていた疑いも高いです。これから徐々に詰めていきますが、神経疾患であるてんかんが背景にあるような気がしています。てんかんは除外診断であるため、他の疾患を除外していくしかありません。

本気で原因を追及すると、費用も手間もかかるのです。心臓が弱い…では治療の方向が見えません。。基本的には、診断なくして治療なし…これが私の信念です。