脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

讃岐、スコア以上の完勝 -讃岐VSアイン-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 続いて乃木浜A会場では四国リーグを制したカマタマーレ讃岐が関西リーグ2位のアイン食品と対戦。既に地域決勝進出の権利を有する讃岐だが、しっかりと相手を完封して1-0の完勝。追加点こそ遠かったが吉澤が挙げた1点を守り切って準々決勝進出を果たした。

 

 前日の1回戦では九州リーグのヴォルカ鹿児島を5-0と一蹴した讃岐。先日の四国リーグで優勝を果たした讃岐は地域決勝へのデモンストレーションも兼ねてこの大会を戦っているだろう。四国リーグだけではなかなか全国レベル相応のチームと対戦ができない。権利に関係なくこの大会ではベストを尽くしてくるというような試合だった。
 対してアインは、今季リーグで2位という戦績を収めたがやはり全国レベルは厳しいかと予想される中で讃岐との戦いは改めて自分たちの立ち位置を再確認できたのではないだろうか。試合前には社員による30名ほどの応援団がスタンドに駆けつけ、讃岐サポーターに負けじと個性的なセルフスタメン紹介やチャントを歌ってスタンドを盛り上げていた。

 
 23分に見事なミドルシュートでネットを揺らした吉澤。
 2試合連続得点でサポーターを沸かした。

 
 讃岐において効いていた飯塚の存在。
 町田から期限付きで加入している。

 讃岐が試合のペースを握るが、アインの攻撃を封じる上で効いていたのはDF波夛野の存在。前半からアインのハイボールを187cmの長身を生かしてことごとく阻んでいく。180cm以上の選手が最終ラインにいない讃岐にとって三菱水島から今季加入したハイタワーはかなりプラスになっていることが実感できた。

 
 まずは守りが固い讃岐の戦いぶり。
 DF波夛野がエアバトルを制圧。

 
 かつての関西リーグMVP神崎も健在。
 簡単に相手には負けない。

 MF鈴木を中心としたカウンターを軸に讃岐に迫りたいアインだったが、なかなかシュートチャンスを与えてもらえない。なんと前半はノーチャンス、シュート0本に終わってしまう。

 
 かつては松本山雅でもプレーしたアインMF鈴木。
 讃岐の堅守をこじ開けようと奮闘するが…

 
 ドリブルで攻め込むMF吉居。
 今季のリーグでは全試合出場、08年にはベストイレブンも。

 23分に吉澤がエリア手前でボールを受けると狙い澄ましたミドルシュート。これが右隅に決まって讃岐がリードを奪った。しかしながらその後は追加点が欲しいところだったにも関わらず拙攻が響いたか無得点。アインがほとんどシュートに持ち込めなかったこともあって苦しい展開ではなく、「省エネ」とも捉えられるかもしれない。もう少しレベルの高いチームと戦うとどうなるか注目。その意味では準々決勝で前橋と当たるのは適当かもしれない。

 
 前半のうちから途中出場で加わった朝比奈。
 何度か決定機があったが2試合連続得点とはいかず。

 
 機を見た攻撃参加をするDF下松は代えが効かない。
 余計な警告をもらったこともあり途中交代。

 
 讃岐は中島が中盤の底をケア。
 横河武蔵野から今季加入した守備的MF。

 アインが攻めあぐねる姿を見ていると、昨日福島Uの前に惨敗を喫した三洋洲本の姿も浮かぶ。なかなか全国大会で結果の残せない関西勢。この試合の裏では山口市会場でラランジャ京都がJFL昇格候補のパルセイロ長野に延長戦まで持ち込む健闘ぶりを見せたが惜敗。2回戦を終えて残っているのはこの日SC鳥取ドリームスに快勝した班阪南大クラブのみとなってしまった。準々決勝はその三洋洲本が0-6で敗れた福島U。かなり苦しい戦いを強いられそうだ。まだこの舞台で結果を出すことは奈良クラブにも厳しい壁だということだ。

 この試合を制した讃岐を含めて準々決勝に進出の8チームが決定。準々決勝の組み合わせは下記のとおりとなる。
 tonan前橋 - カマタマーレ讃岐
 トヨタ蹴球団 - S.C.相模原
 福島ユナイテッドFC - 阪南大クラブ
 新日鐵大分サッカー部 - AC長野パルセイロ

 地域決勝出場権を既に持っているのは讃岐と相模原、そして長野の3チーム。つまりこの3チームがベスト4に勝ち残れば、必然的に決勝戦は地域決勝出場権を持つチーム同士の対戦となり、全社枠の1つが関東リーグ2位のさいたまSCに地域決勝出場権として回されるということになりそうだ。あと3日。果たしてどんな展開になっていくのだろうか。 

100分間待ったなし -前橋VS松江-

2010年10月18日 | 脚で語る地域リーグ
 第46回全国社会人サッカー選手権大会は2日目を迎えて2回戦へ突入。下関市乃木浜総合公園多目的グラウンドA会場では11時キックオフにてtonan前橋(関東1部)とヴォラドール松江(中国)の試合が行われた。

 

 前半から優勢に試合を進める前橋が14分にCKから主将・氏家のヘッドで先制すると、28分には松江DF吉岡がFKから頭で合わせて同点弾を呼び込む展開。1-1になってからの試合はまさに待ったなしのハイトランジションゲーム。結局80分間では決着がつかず延長戦までもつれ込み、1点ずつを取り合った後PK戦へ突入した試合は5-4で前橋が制することとなった。

 
 14分に先制点、97分にはPKで追加点。
 氏家の存在は名実共にチームの核だった。

 
 前橋に氏家あれば松江にはこの男あり。
 MF樋口は松江の攻撃を牽引した。

 前橋が攻め込んだかと思えば次の場面では松江が前橋陣内へ攻め込む。そんな場面の連続だった一瞬も目を離せない非常に面白い展開。息をもつかせぬ攻防戦は前橋の執念が実った試合だった。そのチームの執念をピッチで体現していたのが、かつてのU-20日本代表選手としてワールドユース準優勝を果たした前橋の主将・氏家だっただろう。
 昨季、この大会で決勝を戦った松本山雅と金沢が地域決勝進出を掴んだ陰で、前橋は3位という好成績を残している。Jリーグ入りを公言していることもあり、今季関東リーグで優勝できなかった前橋にとってはJFLに挑戦する権利を是非ともこの大会で獲得したいのだろう。その証拠に2得点もさることながら、ボールキープの際に味方に対して「フォローに来いよ!」と激しく叱咤する彼の姿はチームの今大会にかける意気込みを十分表現してくれていた。

 
 今季FC琉球から加入したDF林田。
 サイドからチームの攻撃をサポート。

 
 
 
 FKから松江が同点に追いついた28分の場面。
 樋口から吉岡というホットラインが光った。

 氏家に導かれる前橋の推進力もそうだが、もうひとつ試合を面白くしてくれたのは松江の善戦を最後尾で盛り立てたGK伊藤の存在。前半からファインセーブを連発する彼は、前橋に100分間で19本打たれたシュートの枠内分を抜群の反応でことごとく弾き出す。彼の好守で前橋は3点ないし4点は損をしたはずだ。

 
 樋口と共に攻守の切り替え役だったMF松本。
 69分には強烈なミドルでゴールバー強襲。

 
 前橋のドリブラー渋谷が疾走。
 60分にはシュートがポスト直撃の不運も。

 
 氏家と共に前橋の中盤を支えるMF山田。
 果敢にシュートも狙っていった。

 後半は双方ともにスコアレス、1-1で迎えた延長戦だったが、前日も100分の延長戦を戦った前橋にとっては運動量の減退が明らかだった。しかし松江もDF錦織を退場処分で欠く苦しい展開。本当によくPK戦まで粘ったといえる。

 
 松江はサイドバックの錦織が76分に退場処分。
 カウンター時に効いていただけにこれは痛かった。

 
 前日のFC鹿児島戦で決勝点を決めたFW関根。
 この試合では決勝点ならずもPK戦の1人目を務めた。

 
 
 延長前半、前橋のこのチャンスをGK伊藤がセーブ。
 会場から歓声が沸き返った。

 
 接戦を盛り上げた松江GK伊藤。
 安定したセービング力で堂々としたプレー。

 
 PK戦を制した前橋がなんとか準々決勝進出を決める。

 
 敗れた松江、立てないGK伊藤の姿が印象的。
 しかし、この経験を活かして更に飛躍しそう。

 
 スタンドには前日1回戦を戦ったサテライトの選手も。
 準々決勝はいよいよ強敵・讃岐が相手だ。

 前日の島根の奮闘、そしてこの日の松江の戦いぶり。島根県の2チームは初見ながら非常に心に残る印象深いチームとなった。濃厚な100分間待ったなしの戦い。少しこの2チームがここでマッチアップしたのがもったいなかったとも思ってしまった。