脚と角

関西を中心に国内外のサッカーシーンを観測する蹴球的徒然草。

喜怒哀楽の真髄は蹴球にこそ有り。

アジアの頂、始まった再挑戦 -ガンバ VS メルボルン-

2011年03月01日 | 脚で語るガンバ大阪
 あっという間に迎えた3月。いよいよAFCチャンピオンズリーグからJリーグ勢の2011年シーズンも開幕。万博ではメルボルン・ビクトリーを迎えた新生・ガンバ大阪がグループリーグの初戦を戦い、2008年のACLでも対峙したメルボルンを5-1で粉砕。好調なスタートを切った。

 

 まさかの光景。ギリギリでスタジアムに着くと、まるで平日とは思えないほどの観客がスタンドを埋めている。ほぼ自由席に余裕は無く、アジアカップ優勝の影響もあってかその誰もがタレントの宝庫であるガンバを楽しみにスタジアムに駆けつけていたのか、今季はこれまでとまた違った熱狂ぶりが見られそうだ。
 ガンバは、鹿児島で行った磐田戦からキム・スンヨンに代わって先発に名を連ねた遠藤が武井と中盤の底を形成、宇佐美と二川その前で仕事をする布陣。前線はイ・グノとアドリアーノ。GKは木村に代わって正守護神の藤ヶ谷が入り、CBには磐田戦に続いて大卒ルーキーの金正也が山口とコンビを組んだ。
 対するメルボルンも3年前の対戦時に主力だったマスカット、ケンプ、バルガス、オールソップらが健在。08-09シーズンはAリーグ優勝、09-10シーズンは準優勝というオーストラリアでの強さを引っ提げて3度目のAFCチャンピオンズリーグに挑んできた。一時期契約外となったオールソップは今季開始時に再契約。元オーストラリア代表DFのマスカットがこの大会を最後に現役引退を表明しているようで、今大会には並々ならぬ気合いで来るのだろうと思っていた。

 しかし、試合は前半早々に動く。4分、ガンバが得たCKからのこぼれ球を武井がしっかり捉えて先制点となるシュートを決める。明神のバックアッパーを脱して今季のスタメンを狙う意味でも会心の一撃。これでガンバはノッた。続く7分には藤ヶ谷のキックを受けたイ・グノが左サイドをドリブル突破。ペナルティエリアに切り返したところでマスカットに倒されてPKを獲得。これを新加入のアドリアーノが決めて、10分経たぬうちにガンバが2-0と試合をリードした。

 
 先制点を決めたのは武井。
 控えに甘んじるつもりはないと言わんばかりにファーストゴール。

 
 左サイドの先発は下平。
 安田理が抜けたが、藤春とのポジション争いは注目。

 今季のガンバが早々に連携をある程度仕上げていることは3点目で証明された。11分、宇佐美がハーフライン付近からドリブルで相手陣内へ持ち込むと、右サイドを走り込んだアドリアーノに絶妙なスルーパス。これをアドリアーノが中央に折り返すと、相手DFを背負いながらもイ・グノがこれに合わせてゴールを割った。昨季のブレイクを経て、宇佐美の存在感はもちろん、例年以上に新外国人選手がフィットしている様子を感じた。
 対するメルボルンは立ち上がりからほとんど見せ場を作れず防戦一方。15分にはフェレイラが早速交代を告げられるなど苦しい展開。

 
 体もキレている様子のアドリアーノ。
 早速3点に絡む活躍でエースの座は当確。

 
 3点目を決めたイ・グノ。
 アドリアーノとの連携も上々の様子。昨季の倍以上は取りたい。

 下平のファウルで与えたPKでマスカットに1点を返されるものの、足取りの重いメルボルンをよそにマイペースで連携を確認しながらサッカーを進めるガンバ。後半に入ると、更に各選手が躍動。62分には左サイドでボールを持ったアドリアーノが果敢にドリブルで勝負。相手DFを簡単にいなすとマイナスのクロスに二川が合わせて4点目を奪取。この直後に大阪体育大から加入のルーキー・藤春が下平に代わってピッチへ入ると、そのスピードをいかんなく発揮してさらにメルボルンの選手の運動量を削ぎ落とす。

 
 早速公式戦デビューをACLで飾った藤春。
 そのスピードは脅威。クロスも何本か入れた。

 71分には遠藤に代えてキム・スンヨンを投入。74分には盟友イ・グノのスルーパスにあと少しでゴールという場面を作りその存在をアピールすると、左サイドからの宇佐美のアーリークロスにヘッドでゴールを肉薄するなどゴールの予感をこれでもかと滲み出す。81分にはアドリアーノに代えて横谷をピッチへ送り込む余裕の展開。最後まで宇佐美を中心に崩れないガンバだった。
 4-1で快勝かと思われたアディショナルタイム、宇佐美から右サイドのイ・グノにボールが出されると、そのまま縦を突破したイ・グノが中央へクロスを送る。マーカーをさほど気にせずキム・スンヨンがヘッドで合わせると、二アサイドにこれが決まってダメ押しの5点目。ゴール裏のサポーターに敬礼でその忠誠を示し、万博の熱狂を見事に締め括った。

 
 再三チャンスに絡み、1得点のキム・スンヨン。
 イ・グノとの相性は抜群。

 
 宇佐美のその存在感たるや・・・
 末恐ろしい18歳はピッチを支配。

 
 相手にならなかった感すらあるメルボルン。
 ゲームキャプテン・レイヤーの胸中はいかに・・・

 
 キム・ジョンヤもミスはあったが無難にフル出場。
 高木の穴を埋めるだけでなく先発争いに参戦。

 なかなかの期待感。昨年の序盤を思い返せば、対照的なスタートダッシュが切れる予感は十分なほど、各選手が特性を活かしながら連動したサッカーで快勝。メルボルンがダメだったのか、ガンバが本当に好調のスタートを切ったのか、週末の大阪ダービーでその真価がまずは問われそうだ。

 試合後のスタジアムでは、応援チャントを歌いながら子供たちが楽しそうに家路に着く光景。3月を迎えて、本格的にサッカーのシーズンがJリーグを中心に2011年も始まる。そんな実感に溢れた万博での2時間だった。