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朝日カルチャーセンター☆ブログ

関西4教室(中之島・京都・川西・くずは)の最新情報をお届けします!

●「ブログde秀歌鑑賞」 №2 2011年8月号【芦屋】

2011年08月08日 18時05分35秒 | 芦屋教室
芦屋教室より、「ブログde秀歌鑑賞」 №~2011年8月
(松村正直選)
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清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき
        与謝野晶子(よさの・あきこ) 『みだれ髮』


春の京都を詠んだ歌です。
桜の咲く明るい月夜に、祇園を通って清水へと向かう作者。
誰かと待ち合わせをして夜桜を見に行くのでしょうか。
通りですれ違う人々の姿が、作者の目にはみな美しく見えます。
それは、春の夜にオシャレして外出している人々の華やいだ雰囲気を表現しているとともに、
作者自身の浮き立つような心弾みも伝えているのでしょう。
「清水」や「祇園」という地名が効果的に使われています。
近代の女性歌人の第一人者である与謝野晶子(1878~1942)の作品です。

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しんしんと雪ふるなかにたたずめる馬の眼(まなこ)はまたたきにけり
           斎藤茂吉(さいとう・もきち) 『あらたま』


冷たく降り続ける雪のなかに立っている馬。
その黒く大きな眼がまばたきをします。
まばたきをすることで、その眼は一層大きく感じられ、作者が吸い込まれてしまいそうに黒々としています。
あたり一面の白い風景のなかに、馬の温かな息遣いだけが感じられる静謐な世界。
「うま」「まなこ」「またたき」という「ま」の音の繰り返しが心地よいリズムを生み出しています。
「死にたまふ母」など数々の絶唱を生み出した近代歌人斎藤茂吉(1882~1953)の一首です。

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突風に生卵割れ、かつてかく撃ちぬかれたる兵士の眼
   塚本邦雄(つかもと・くにお) 『日本人霊歌』(にほんじんれいか)


突然の強い風に吹かれて、卵は倒れて割れてしまいます。
殻の中からは黄身や白身がどろりと溢れ出るでしょう。
そうした映像を読者の胸に残しておいて、場面は一転して「かつて」の戦争のシーンに切り替わります。
かつてその卵のように無残に銃で撃ちぬかれた兵士の眼。
恐ろしいほどに生々しいイメージですね。
戦争というものをこれほど衝撃的に詠んだ歌もあまりないと思います。
作者の塚本邦雄(1920~2005)は、短歌の革新を目指した前衛短歌の旗手として知られています。

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