歌わない時間

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『アブデラザール』…

2010年08月28日 | 音楽について
パーセルの『アブデラザールAbdelazer』の音楽を、ブリテンのおかげで有名になった2曲めの「ロンド」だけぢゃなくて全部聴こうとすると、実は選択肢はごく限られてしまうのですよ。そもそも現在残っている『アブデラザール』の音楽は、「Ouverture-Rondeau-Air-Air-Minuet-Air-Jig-Hornpipe-Air」以上の合奏曲と、Song "Lucinda is bewitching fair"であります。演奏時間は合奏曲が合計12~13分くらい。Songがホグウッド他の録音で約3分半です。で、「ルシンダは魅惑的な美女」とかいうSongは、おそらくホグウッドの『劇音楽集成』でしか聴けないと思う。この歌はまあまあいい歌ではあるけど無理して聴くほどのこともない、ってことになると、残りは合奏曲なんですが、これがなかなか、全曲収めた録音が見つからないんですよ。

ホグウッドの『劇音楽集成』6CDでは『アブデラザール』はCD1枚めの巻頭に収められています。録音は1974年と古いんですが、音楽がいきいきして実に出来がいい。これは6CDで出たほかに、『劇音楽集成』全体からの抜粋盤として、かつて1CDで(国内盤が)出ていた形跡がある。それ、もういっぺん出してくれないかなあ。

Hyperionからは、パーセルの《Ayres for the Theatre》と名前のついた商品が1CDのものと3CDのものと両方出ていて混乱します。1CDのは1986年録音でPeter Holman指揮、3CDのは《The Complete ...》とあり1994年録音でRoy Goodman指揮。しかし両方とも団体はThe Parley of Instrumentsで、試聴してみると曲目の重なるものは同じ演奏に聞こえる。つまり、86年に録音したCD1枚分に加えて、94年にもう2枚分録音し、それを再編して、『ザ・コンプリート…』としてリリースし直した、ということなのでしょう。『アブデラザール』は86年の録音に含まれています。これは悪かないけど微温的で、積極的には推せません。なお94年の3CD盤も「コンプリート」とはいうものの『ディドー』や『妖精の女王』その他の劇音楽の合奏曲は含まれていないので、関心を持たれた向きはご注意あれ。