歌わない時間

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マンロウ『パーセル_メアリー女王の誕生日のためのオード』

2009年04月19日 | CD パーセル
Purcell
Birthday Odes for Queen Mary
Come ye sons of art away ・ Love's goddess sure
Burrowes, Bowman, Brett, Lloyd
Early Music Consort of London
David Munrow
5 86050 2

1975年録音。49分29秒。EMI。パーセルの作曲したメアリー女王の誕生日のためのオードは数曲残っているんですが、『来たれ、汝ら芸術の子ら』は1694年の、『愛の女神はたしかに』は1692年のものだそうです。マンロウが『来たれ、汝ら芸術の子ら』を録音しているのはだいぶ前から知ってたんですが、ようやく聴きました。

結論から言うと、『来たれ、汝ら』もけっして悪くないけれど、はじめて聴いた『愛の女神はたしかに』のほうに聴きほれました。この曲は『来たれ、汝ら』とほぼ同じ規模のオードで、『来たれ、汝ら』に劣らぬ名曲だと思います。声楽の扱いはむしろ『愛の女神は』のほうが手が込んでいて聴きごたえがある。

『来たれ、汝ら』はこれまでにガーディナーのとピノックのを聴いてきて、特にガーディナーのはモダン楽器ながら水際立ったさわやかな名演だったので、この曲の演奏に関してはわたしの要求が高くなってるところがあります。ガーディナーのはソリストにフェリシティ・ロットとトーマス・アレンを迎えて華やかですからねえ。それにくらべるとこちらのノーマ・バロウズとロバート・ロイドはどうしても地味。

合唱やオーケストラはいま聴いても聴き劣りしません。ホグウッドは曲によってハープシコードとオルガンを弾き分けてます。それにしてもマンロウの指揮した録音としてはもっとも大がかりなものぢゃないのこれ。マンロウのセッションて、ふだんはせいぜいで総勢10人とか、そのくらいだったでしょ。メンバー表がないので正確には分からないけど、このパーセル、合唱だけですくなくとも20人くらいはいますよ。

なおこの録音が75年で、翌76年にはガーディナーがエラートに『来たれ、汝ら』を録れているんですよ。いやまあ、ガーディナーがこのマンロウの録音を聞いたかどうかは別にしてもさ、「マンロウに先を越された!」とは思ったでしょうよ。というか、その76年に、マンロウは亡くなっているんですよね。ああもしかして、ガーディナーが『来たれ、汝ら』とともに『メアリー女王の葬送音楽』を録音したのは、マンロウへの追悼の意味もあったんですかね。

わたしとしてはマンロウの指揮でついでに「メアリー女王の葬送音楽」も録音しといてほしかったけど、そしたら翌年亡くなったマンロウ自身への追悼曲みたいになっちゃってたよね。うーむ。

ガーディナーの指揮で『愛の女神はたしかに』も聴きたかったなあ。この曲はほんとにいいよ。