あの青い空のように

限りなく澄んだ青空は、憧れそのものです。

演劇『蜜柑とユウウツ』を観て

2018-12-10 13:53:56 | 日記
 8日に、仙台演劇鑑賞会の12月例会である『蜜柑とユウウツ』を観ました。

 主役を演じたのは、る・ぱる(松金よね子・田岡美也子・岡本麗)の3人組。
詩人の『茨木のり子』さんの生き方や詩をモチーフにした演劇でした。
劇中では、亡くなったのり子さんが生前気がかりだった忘れ物を探すために幽霊となって登場します。
松金さんが主としてのり子役を演じますが、田岡さん(有田紀子役)と岡本さん(仲村典子役)も、偶然
同じ時刻に亡くなった「のりこ」という名前を持つ幽霊として登場します。
のり子さんが気がかりだったものを思い出せるよう、三人の「のりこ」は、それまでの人生を振り返ります。
 劇中には、のり子さんと交友のあった(同志とも言える)詩人の川崎洋、谷川俊太郎、金子光晴、岸田衿子
(劇中では、親友の岸田葉子の役)が登場します。
 また、それぞれの時代状況の中で書かれた代表的な詩が取り上げられ、朗読されていました。

    男には書けない 女だからこそ書くことのできる詩
    平易な言葉で 多く人の心に届く詩
    それがささやかな光となって 前途を照らす詩
 そんな詩を模索しながら書き続けた 詩人【茨木のり子】としての人生を 観ることができました。

 のり子さんの人生は、最大の理解者であり心から愛し信頼する夫と歩む 普通の主婦としての人生でもありました。
夫は勤務医で、23歳で見合い結婚しますが、1975年に49歳で亡くなります。その夫への思いを綴った詩が
収められている詩集が「歳月」で、これは本人の遺言により、死後に発表されたそうです。
2006年にのり子さんは亡くなり、その翌年の2007年に「歳月」が発表されます。
 この詩集に感動した る・ばるのメンバーが、茨木のり子さんを芝居にしたいと思い立ち、長田育恵さんに台本の
執筆を依頼し、マキノノゾミさんの演出で 演劇公演が行われるようになったとのこと。
 また、今回の公演が、る・ばる の3人がそろって出演する最後の身終い公演になるとのことでした。

 さて、劇の中で のり子さんが気がかりだったこととは、何だったのでしょう。
 これまでの人生を振り返ることで、親友だった葉子さんが思い出した 生前ののり子さんの言葉が手掛かりとなって、
その気がかりが明らかになります。
夫が亡くなってからそばに置いておいた遺骨の一部と自分の遺骨を一緒にして、夫のふるさとである山形の墓地に収めて
ほしいという願いだったのです。
あの世でも愛する夫と共にありたいという切なる思いを伝えずにいたことが、心残りだったのです。
 この展開は、詩集「歳月」の中に込められた のり子さんの思いを汲み取った上での台本だったからなのでしょう。

 この劇を通して 改めて 茨木のり子さんの魅力的な人となりを知ることができました。同時に書かれた詩を読んでみ
たいと思いました。
 また、主演を務めた る・ばる の皆さん一人一人の今後のご活躍を これからも応援していきたいと思いました。

    倚りかからず
           茨木のり子
  もはや
  できあいの思想には倚りかかりたくない
  もはや
  できあいの宗教には倚りかかりたくない
  もはや
  できあいの学問には倚りかかりたくない
  もはや
  いかなる権威にも倚りかかりたくない
  ながく生きて
  心底学んだのはそれぐらい
  じぶんの耳目
  じぶんの二本足でのみで立っていて
  なにか不都合のことやめる
  倚りかかるとすれば
  それは
  椅子の背もたれだけ

 じぶんの立ち位置を振り返り、何物にも倚りかからず じぶんがじぶんで在り続けるために よって立つところを見つめながら 
生きる姿勢に、圧倒されます。
 できあいのものに倚りかからず 前に進んでいくためには、未熟な じぶんの耳目とよって立つ足を これから鍛えていくことが 
必要だと感じます。
 まだまだ 人生修行中の身ですから。

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