東郷青児 昭和のアトリエ展。
東郷青児美術館には何度か訪れているものの、こうして東郷青児をメインに据えた展示を見るのは初めて。
青児の絵は以前に見た作品でいくつか好きなのがありました。
(関連記事:東郷青児「彼女のすべて」)
今回、まとまって青児の作品が見れるいい機会です。
全体と通してみると晩年の完成してしまったスタイルよりも試行錯誤してた頃のほうがどうやらツボにはまったみたいです。
「黒い手袋」
独特のバランス配分。背景と首から下はシンプルに描かれているのですが、顔はすごく丁寧に描かれています。バックとトーンを合わせるならもっとのっぺりと描くことも出来たはず。
でも、これで正解だと思います。
気がついたのは帽子のライン。背景との境は斜めの直線で描かれていますが、これだと頭がえぐれてるのです。
たぶん、頭のカーブに合わせて描いたのを切り取って今のラインに直したんではないかと思います。
よく見るとおかしいんですが、全体のバランスの中には上手く溶け込んでいるように思いました。
「微風」
やはり、実物の持つ表情の美しさは伝わらないですね。
見ててうっとりしてしまうのです。写実的に描かれていない女性の顔にくらくらしちゃうのってなんなんでしょうね。
この絵は描かれた1930年代に東京火災のパンフレットに使われていました。
ある意味、すごく贅沢ですよね。
「渇」
青児の描く女性のイメージとかけ離れててとまどった作品。
いつもの滑らかなグラデーションの柔らかい感じとは違い、腕と足には縦に筋が描かれています。
服を描くラインも大胆な筆致です。
見てて何かを訴えかけてくる作品です。しばし、画面から目が外せませんでした。
「干拓地」
麦わらのおとことほとんど裸のおんなが絡んでる。
絡めた足がなんとも艶かしい。
一見すると普通に描かれてるように見えるのですが、ひとつひっかかる箇所があるのです。
男の曲げたほうの足がどことなくおかしいんですよね。
足の付け根が高すぎる。
で、ふと思ったのはこの曲げた足を意図的に画面中央に配して、屹立する男性のシンボルとしてみせようとしたんではないかなと。
実際に青児がどう考えてたかは不明ですが。
今回、なかなか面白い作品を堪能することが出来ました。
あと面白かったのは戦後すぐに二科展を東郷青児が仕切ってた時の前夜祭の写真。
銀座から上野までセミヌードの女性をかついで練り歩いてるのです。1950年だからもう半世紀以上も前に。
今の二科展でそんな前夜祭やったりとかって絶対にないでしょうね。
そう考えると当時のほうの盛り上がってた感じを知りたいなあと思いました。
東郷青児作品集を買いました。1500円。
今回の展示のための図録ってことではないのですがコンパクトながらも、かなり網羅されてていいですね。
12/26まで。