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詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

歩く奇跡 (公園 5)

2013年12月05日 | 空の森 2013

初めて
正味1時間を歩く

それは確かな
奇跡

過去20年近くに及ぶ隠遁厭世引篭り生活の
足も身体も心も何も可も寝たきりの老人のようになってしまったわたしの
まごうことなく
奇跡

黙々と
視線は下に
亀のごとく
誰よりも遅い

不安定な身体
もっと不安定な

攣りそうな

痛い痛い、足

汗ばむ額
汗ばむ上体
暖まっていく
左手

冷たい空気の
絵のような気持ち良さ

吸い込まれるような
夜の公園の
冷たい
快感

初めて帰りに買った缶ビールの350ml
美味しい
心に染み渡る
快感

歩くことで得ることのできた
わたしの、快感

20年越しの
快感

動くということの
奇跡

心が動いた
もらった
勇気
気づかされた
わたしにも自信というものが
有るということ

歩く
奇跡

わたしの
奇跡

感謝
しています。

2013.12.5 pm10:04


公園4

2013年12月03日 | 空の森 2013

初めて
外周だけを歩く

テニスの人等の声や
サッカーの人等の声や
わたしを追い越す人の靴音や
車の行き交う音や
その
音だけをただ聞きながら

黙々とうつ向いて
歩く

本当に、ゆっくりと
一歩一歩噛み締めるように
歩く

そのベンチの一点を目指して
歩く

休んでいる間
吐く息の白く
眼鏡の曇ることに
気付く

汗は冷たい空気に紛れ
なんて心地のいい

攻撃の西日もとっくに終わり
外灯に薄ぼんやり浮き上がった夜の公園

次に休んでいる時
ああ此処にコンバスを置いた絵を描きたい
と思う
構図をイメージしてみる
色をイメージしてみる
いらないものはカットして・・・

何回目かの外周の後は
ベンチに座らずそのまま帰る

その人に
貰った自信をお守りとして胸に固く握り締め
わたしは今日も
歩くことを
しています。

2013.12.3 pm7:31


公園3

2013年12月01日 | 空の森 2013

夕以降
夜に押し潰されつつも地平ギリギリの猛々しく露わな西空の緋色

星一つ大いに輝く
黒が覆う木々の傘々

無風の芝の上の
こんな季節でも草いきれの匂う

ウォーキングの男
子犬の散歩の女

頭の中のピアソラの
コントラバヒシモ

刺す光戦の皆無
わたしの安堵

好んで歩く
芝の上土の上

くねくねとよろよろと
のろのろと

何回目かの
草いきれ

匂い立つ
こんな季節なのに

毎日毎日多くの人等に踏まれ疲れているだろうに
カサカサと鳴る枯れ草の

わたしの胸に楽しい


それは
歩くわたしの足が敢えてさせている


カサカサ カサカサ

何回も
何回も

そして最後の草いきれの匂う
健気

夜の
公園。

2013.11.30 pm11:09


公園2

2013年11月30日 | 空の森 2013

歩く鳩と
すれ違いました

頭の中流れていたのは
モーツァルトのディベルティメント136の第一楽章とYou'd be so nice to come home toと涙そうそう

どんぐりを踏みました
芝生の中に紛れて沢山落ちていて

いちょう吹雪が胸に当たりました
今日も強風の嵐だったので

あまりに激しい風速の時
わたしの足では歩を進めることが叶わず

そしたら停滞の時間と同じ分
土砂降りの風に空無に全身浸っていられて

冷たいのも無も好きなわたしは
快感

腹筋使って超ウィスパーで歌
口ずさみました

大音量の風の音にかき消され
わたしの秘め事になりました

枯葉だらけの土の上に
身体を横たえてみたい衝動を抑え

独りの秘め事が
胸を透きます。

2013.11.30 am0:48


公園

2013年11月29日 | 空の森 2013

枯葉が自発した意思を撒き散らし怒涛激流の上流さながら集団でわたしの身体に押し寄せて来た
芝生に混じってクローバーが群棲していた
いちょうが黄色になっていた
木の根元三メートルの土の上にがっしりととぐろを巻いて根がせり出ていた

強い風は絶えることがなかった
わたしの手は冷えて戻らなかった
風邪の予兆を一瞬感じた
その冷たい只中顔だけは異次元の心地よさに爽やかだった

枯れ草の下の
芝生の下の
土は
柔らかだった

木々の下にその音を聴くわたしが居た
風に向かい真っ直ぐ立つわたしが居た
柔らかな土を踏み締めるわたしが居た
気持ちがいいと感じ入るわたしが居た

一歩一歩足を前に出し
誰より遅く
歩き続ける
わたしが居た

そこは世間という
人の世のかい摘んだ絵の中
わたしというわたしの始祖が20年間拒み続けたコモンセンスの明るいミニチュア
居心地の悪さの否めない相容れない体感の無いアットホーム

心情も身上も置いて
ドアを出た
公園には
充分過ぎる程

色が着いていた。

2013.11.29 am 1:42


2013年10月20日 | 空の森 2013

激しい雨の中
何年ぶりか十年ぶりか十何年ぶりか歩く

傘は
半分傘の役目に満ちず
手や腕や服や足や靴の中まで雨水に濡れて
滲みて

雨霞で
街の
看板やらもよく見えずに
どこかに入ってちょっと休もうかなんて

思いながら行き過ぎ
痛む足は
一歩
更に一歩
僅かに行き交う人らの誰よりも遅く

雨音は
この胸を打ち
他を消し
幼い頃よりの積年の孤独は深く目の前を水色の同心円に開かれる

嗚呼
わたしは

只中
その激しさ

この身で感じることの出来ているリアルその実感に
嬉しい

雨の
水の
冷たさに
楽しく

わたしは
人並みの
事をしていますよ

雨の
激しい
冷たい
全部を感じて

わたしは
ここを
歩いて
います。

2013.10.20 pm 9:11


ホームレスになれない

2013年07月01日 | 空の森 2013

手元にあるのは大中小の三つの木の箱
購入した他人の描いた絵
電話線越しの実のない音

人が買った部屋
人の金で買った服
人の金で買った食べ物、水

劣化を猛スピードで転げ落ちるわたしの骨の周りの劣化を猛スピードで転げ落ちるわたしの肉
使い物にならないわたしの足
使い物にならないわたしの手

著しく欠如したわたしの社会性と
全く皆無なわたしの生産性

そして生後一週間でゴミ置き場に捨てられていた
わたしの愛する三匹の猫たち

どれほどの体たらくを貪って毎日横たわっていようと
ホームレスになるよりは良い
ホームレスになったら
君たちにご飯をあげられない
自分の分を拾う手数も
わたしはアッサリ放棄しそうだ
その方が
楽だから。

2013.7.1 pm1:45