初めて
正味1時間を歩く
それは確かな
奇跡
過去20年近くに及ぶ隠遁厭世引篭り生活の
足も身体も心も何も可も寝たきりの老人のようになってしまったわたしの
まごうことなく
奇跡
黙々と
視線は下に
亀のごとく
誰よりも遅い
不安定な身体
もっと不安定な
足
攣りそうな
足
痛い痛い、足
汗ばむ額
汗ばむ上体
暖まっていく
左手
冷たい空気の
絵のような気持ち良さ
吸い込まれるような
夜の公園の
冷たい
快感
初めて帰りに買った缶ビールの350ml
美味しい
心に染み渡る
快感
歩くことで得ることのできた
わたしの、快感
20年越しの
快感
動くということの
奇跡
心が動いた
もらった
勇気
気づかされた
わたしにも自信というものが
有るということ
歩く
奇跡
わたしの
奇跡
感謝
しています。
2013.12.5 pm10:04
初めて
外周だけを歩く
テニスの人等の声や
サッカーの人等の声や
わたしを追い越す人の靴音や
車の行き交う音や
その
音だけをただ聞きながら
黙々とうつ向いて
歩く
本当に、ゆっくりと
一歩一歩噛み締めるように
歩く
そのベンチの一点を目指して
歩く
休んでいる間
吐く息の白く
眼鏡の曇ることに
気付く
汗は冷たい空気に紛れ
なんて心地のいい
攻撃の西日もとっくに終わり
外灯に薄ぼんやり浮き上がった夜の公園
次に休んでいる時
ああ此処にコンバスを置いた絵を描きたい
と思う
構図をイメージしてみる
色をイメージしてみる
いらないものはカットして・・・
何回目かの外周の後は
ベンチに座らずそのまま帰る
その人に
貰った自信をお守りとして胸に固く握り締め
わたしは今日も
歩くことを
しています。
2013.12.3 pm7:31
夕以降
夜に押し潰されつつも地平ギリギリの猛々しく露わな西空の緋色
星一つ大いに輝く
黒が覆う木々の傘々
無風の芝の上の
こんな季節でも草いきれの匂う
ウォーキングの男
子犬の散歩の女
頭の中のピアソラの
コントラバヒシモ
刺す光戦の皆無
わたしの安堵
好んで歩く
芝の上土の上
くねくねとよろよろと
のろのろと
何回目かの
草いきれ
匂い立つ
こんな季節なのに
毎日毎日多くの人等に踏まれ疲れているだろうに
カサカサと鳴る枯れ草の
わたしの胸に楽しい
音
それは
歩くわたしの足が敢えてさせている
音
カサカサ カサカサ
何回も
何回も
そして最後の草いきれの匂う
健気
夜の
公園。
2013.11.30 pm11:09
歩く鳩と
すれ違いました
頭の中流れていたのは
モーツァルトのディベルティメント136の第一楽章とYou'd be so nice to come home toと涙そうそう
どんぐりを踏みました
芝生の中に紛れて沢山落ちていて
いちょう吹雪が胸に当たりました
今日も強風の嵐だったので
あまりに激しい風速の時
わたしの足では歩を進めることが叶わず
そしたら停滞の時間と同じ分
土砂降りの風に空無に全身浸っていられて
冷たいのも無も好きなわたしは
快感
腹筋使って超ウィスパーで歌
口ずさみました
大音量の風の音にかき消され
わたしの秘め事になりました
枯葉だらけの土の上に
身体を横たえてみたい衝動を抑え
独りの秘め事が
胸を透きます。
2013.11.30 am0:48
枯葉が自発した意思を撒き散らし怒涛激流の上流さながら集団でわたしの身体に押し寄せて来た |
激しい雨の中
何年ぶりか十年ぶりか十何年ぶりか歩く
傘は
半分傘の役目に満ちず
手や腕や服や足や靴の中まで雨水に濡れて
滲みて
雨霞で
街の
看板やらもよく見えずに
どこかに入ってちょっと休もうかなんて
思いながら行き過ぎ
痛む足は
一歩
更に一歩
僅かに行き交う人らの誰よりも遅く
雨音は
この胸を打ち
他を消し
幼い頃よりの積年の孤独は深く目の前を水色の同心円に開かれる
嗚呼
わたしは
雨
只中
その激しさ
この身で感じることの出来ているリアルその実感に
嬉しい
雨の
水の
冷たさに
楽しく
わたしは
人並みの
事をしていますよ
雨の
激しい
冷たい
全部を感じて
わたしは
ここを
歩いて
います。
2013.10.20 pm 9:11
手元にあるのは大中小の三つの木の箱
購入した他人の描いた絵
電話線越しの実のない音
人が買った部屋
人の金で買った服
人の金で買った食べ物、水
劣化を猛スピードで転げ落ちるわたしの骨の周りの劣化を猛スピードで転げ落ちるわたしの肉
使い物にならないわたしの足
使い物にならないわたしの手
著しく欠如したわたしの社会性と
全く皆無なわたしの生産性
そして生後一週間でゴミ置き場に捨てられていた
わたしの愛する三匹の猫たち
どれほどの体たらくを貪って毎日横たわっていようと
ホームレスになるよりは良い
ホームレスになったら
君たちにご飯をあげられない
自分の分を拾う手数も
わたしはアッサリ放棄しそうだ
その方が
楽だから。
2013.7.1 pm1:45