詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

面影

2004年10月25日 | 90.1.8~95.7.17
テレビに映る顔の中にその影を追う
街の中でその影を追う
昼も朝も深夜もその影を追う
面影を
ただ一つの星のように

益々の悪化への歯止め
別に好転はしない
ましてや進歩など
誰も先へ走りたがって誤解を好む
わたしは
初めから白けている

わたしはチルチル ミチルではないので
青い鳥を探しはしない
自らの思いが幻をつくり
白日夢の中で幻は終りを知らず
それは探すものではなくて
思いが存在する限り湧いて出る
感情の呼吸

だから無いと死ぬのよ
チルチル ミチルほど健康ではない
おぞましい醜悪なナルシズムでいい
自らが生む幻を白日夢に展開させて
その影を追う
面影を
ただ一つの星のように

95.7.17 am2:08




虚空の中の幻影との会話

2004年10月25日 | 90.1.8~95.7.17
今帰ってきてただいまを言った
誰もいない虚空の中でわたしは朝も昼も夜も話をしている
幻影を見ている
それを幻影と位置付けている
幻影に心奪われるのはよくないとそれを拒否するとわたしは停滞する
飛散する
飛散するより幻影でも心を向けていられるものがあった方がいい、と思う
幻影はいつまで幻影でいてくれるのか、と思う
幻影のままにしておくのは今までの繰り返し
幻影を別のものにするにはそれを消すこと
でも飛散する
飛散の状態は苦し過ぎる
幻影を見ることに躊躇うのを止めてしまうか
幻影を見ることに躊躇いを感じない状態にしたらわたしはどう変化するのかしないのか、分からない
繰り返しを止めて飛散もせずにそれは今見ることのできるもう一つのドア
そのドアを開けることにわたしは罪を感じずにはいられない
今のわたしにはその罪の意識が理にかなうものかどうかも判断がつかない
わたしは何もしないうちから自身を摘む
幻影はあまりにも遠くて問いかけることも出来ない
それでもわたしは絶え間なくその幻影を見ている
虚空の中で話しをしている
朝も昼も夜も

95.6.30 pm6:10




感情の同意

2004年10月25日 | 90.1.8~95.7.17
歳をとることに何かを期待するとしたらそれはあまりに御目出度い
そう上手くいったら心理学者はいらないむろん精神科医も必要ない
離婚もない若者以外の犯罪も消えるオ○ムだって存在しない
歳をとって変わるのは肉体のみ
精神はそうじゃない
精神が変わるのはそこに気持ちが働くからだ
大方は良い意味悪い意味取り混ぜて周囲に染まってゆく
気持ちの介入がなければ歳をとっても何も変わらない
精神は年齢によってなどでは変わらない
感情の同意の無いものに
変わる要素は何もない

95.6.20 am11:55



悪魔はわたしを

2004年10月25日 | 90.1.8~95.7.17
悪魔はわたしを食おうと思っている
悪魔はどいつもこいつも出来れば人類全員を出来れば神をも食おうと思っているが
その中の一人としてわたしのことも
食おうと思っている

わたしは神に可能なものなら頼ることをしてみたいものではあるが
わたしは神に属してはいない

わたしは悪魔の傘下に彷徨しているが
食われるのならツバ吐きかけて
悪魔をあざけり笑いながら
死んでやろうと
思っている

95.6.8 pm1:37


山のテレビ

2004年10月24日 | 90.1.8~95.7.17
夫が言う
老夫婦の二人だけ
テレビの中の山ばかりの山を妻は見る
ああ、もう始まった?と彼
日本の名山百山のシリーズだとか
実際には行けないからテレビでも見て行った気になるだけ
と、時間差で同じセリフ

山?
テレビで?
二人で?
見るの?

ああ幾十年の歳月を越えて
かれらはこの静かな時間を分かち合う

こんな落ち着いた時間がわたしにもくるのか・・・
わたしが言う
羨ましい限りです

言ったその言葉から
わたしの日常が剥がれてゆく

95.6.12 am2:50


ふたり

2004年10月24日 | 90.1.8~95.7.17
ふたりぼっちてなに
ふたりになりえるなら
いいじゃない

ふたりしかいない ふたりだけ ふたりぼっち
障害 苦しい 死んだ方がまし

でも
瞳で語れる

支え合う幹

いいじゃない

寂しいひとりより
虚しいふたりより

95.6.9 pm2:30


緑の部屋

2004年10月24日 | 90.1.8~95.7.17
自分が住むマンションのベランダ側の一室を
まるで植物園のように植物でいっぱいにしたからといって
わたしはその部屋の住人には成り切れない

テレビや食卓のあるこちらの部屋から
時々出かけてゆくお客あるいは
隣りのいっぱいの緑を時々
眺める人

せっせせっせと買ってきては観葉植物
コーディネイトして
水をやり葉の手入れをし鉢変えなんかもしたりして
自分で作った一番参加していたい部屋に
わたしは一致し得ない
情緒は緑のさわやかさに介入出来るほど
なってない

わたしの情緒はこちら側の
24時間電気の点いている暗い部屋に横になるか座るかして
自ら出現させた緑一色の隣りの部屋を
おずおずと遠慮がちに眺める
わたしの睡眠は崩れるに任せたままだから
昼も夜も区別なく24時間いつでも電気が点いているのよ
ベランダに洗濯物を干しに行く時は
体の移動と共にこちらの部屋から連続する見えない通路が出来てきて
情緒はただ通行するだけ
洗濯物を干し終わるとここに帰ってきてまた
座る

猫のチャーリーはそれでも緑の部屋を自分の住処の一部と心得ているようで
彼が緑の部屋で座ったり横たわったり眠ったり遊んだり外を眺めたりしている自然体の姿を見るときは
彼に見とれてしまう
嫉妬もする
自分には出来ない緑の部屋への同化を
彼は何事も感じさせないで一瞬のうちに果たす
わたしは気後れしたままいつものように
電気のつけっ放しの暗い部屋から
憧憬の緑を眺めている

95.6.8 pm4:10



青いガラスの森

2004年10月23日 | 90.1.8~95.7.17
青いガラスの森に入ったらわたしは幸せだろうか
青はガラスになるとより青が深みを増し
ガラスは青になるとより透明になる

青いガラスの密集したその空間を見ていると
それはまさしく森
海の深みを有形にした森
空の無限を有形にした森
心象の母胎へ返ってゆく時空
そう
時を超え 空間を超え
無の
空(くう)の
青い青い青いばかりのガラスの部屋へ
返ってゆきたい精神の
あこがれ
青いガラスの森に入ったら
わたしは死んで母なる地球のパーツになれるだろうか緑の森の成分に
それとも
青いガラスの森の中で胎児にまで溶けて
海の青に流れ再び形成され
存在として生まれるだろうかわたし自身に

青いガラスの森に入ったら
うれしい
透明なガラスよりも透明な青が心を抱く
親の顔を知る以前のよりpureな生きものになって
青に染まった空気の粒子に浮かぶ
絶叫は青が眠りに変える
ただ抱かれて眠る
心象の母胎の青いガラスのその清冽な光りの中で
安心する
胎児の以前へ
カエリタイ

95.6.8 am4:20


国道沿いで

2004年10月23日 | 90.1.8~95.7.17
茶色い顔したおじさんが
茶色く汚れた犬を散歩させていた

薄汚いヨレた服を着て
こけた体で歩いてた

6月の初め夕暮れの国道沿いで
運転する車の中からチラと見た

命が繋がっていた
生きた心と生きた心が
無くなりそうなほど存在感の無い1メートルぐらいの短いロープで
しっかりと
結ばれていた
あの犬の信頼感と安心の瞳は
あのおじさんのやさしさ

しっかりと
愛の思いで結ばれていた

ぬくもりが
車内に発散し

わたしの視線は
ひたすらの霧に消える。

95.6.7pm6:10


D.C.のしるし

2004年10月23日 | 90.1.8~95.7.17
重たい
一月を単位に減らしていくだけの
それ以外の意味を持たないこのお金が重たい

銀行の新しい封筒に入れられたそれを見る度
心は30日前の線上の点にガクンと引き戻されて穴が開く
そこはまるで奈落の底で
暗い
灯りが無い
瞬間息が止まる胸が引きつるよ
repeat repeat repeat
決してFineが無い
やっと終わるかとホッとする終止はおろか休符すら見ぬうちに
次のTaktが振り下ろされる
その封筒はD.C.のしるし
30日前のはじめに戻る
また始まる
そして、repeat

内奥の根幹が畏縮する
2592000秒がのしかかる
それしか感じられない
深く
沈む

95.5.27 am10:25



2004年10月23日 | 90.1.8~95.7.17
穴だ
穴だ
エレベーターの中5階へ上がるまでのあの空虚
エレベーターのドアが開き見慣れたドアや壁や通路を目にするときのあの倦怠
エレベーターから我が家のドアまでの何メートルかを歩く時のあの疲弊
穴だ
連鎖連鎖の倦怠の穴
見かけは像の中味は干した大根のように萎びた足を重たく移動させながらあの通路を行き
あの通路を帰り
その時胸の中は何もない穴だ
この世は
現時点より先の時間帯への馳せるたぐいの想いがなければ
人は人らしく生きてはいけない世界だから
ひとりの人間でありながら夢や希望や目標が無い場合
その形態は環状の肉
直径1メートルの大きな穴が
わたしの中に開いている
夢も希望も目標も無いと人はこうなる
夢も希望も目標も無いと生活さえも輪になって
ただ
繰り返し
悪という名の循環
夢も希望も目標も
受け付けない
そういう言葉は言葉自体わたし個人には意味が無い
夢や希望や目標という概念観念が先ず
わたしには無い
観念すら無いものに意味のつけようが無い
ゾッと胸の凍りつくメビウスの冷腸な輪の上を延延と歩き続け
どっと疲れ果てるクラインの壺の中の泥をぬめぬめといつまでも泳ぐ
時間はここで終わる今この時点までしかないそしてリピート
それから先の未来とかいうものの願望的推測は
無い
そういう観念は
無い
夢や希望や目標が無ければ未来なんて在り様が無い
考え様が無い
推考するにもパーツが無い
パーツが無いものは
組み立てようが無い
すっぽりと消えてしまった球状の肉の塊は

神さまがくれた幼児の小さなもみじに
愛はスルリとかわされて
以後
試みるだけ落ちて
今は幻想化した記憶の立ち込めるガスの中で
ミンチになって飛散している
残ったものは
修繕しようもなく固まってしまった環状の肉
未来を臨むファインダーの無い
眼球の取れた屍の内奥
傷じゃあない穴だ
傷も重なればごそっと崩れ落ちて穴になる
穴だ
穴だ
引力を持たない真っ黒い穴が
わたしの中に開いている

95.3.11


切ない光り

2004年10月23日 | 90.1.8~95.7.17
今日はベートーベンのインディーノが
深緑の透き通った水面に揺らいでいる
記憶の箱がチラッと開いて
昔の陽射しが薄く漏れる
年代もののモノラルな音をして
懐かしい
だが鮮烈に
想いの国からやって来る

たおやかなバイオリンの流れに乗って
心静まるアンダンテカンタービレは
どこかへ行ってしまった
わたしはここにいるけど
わたしはここにいない

箱はいつからか箱になってしまって
鍵のないわたしは
俯瞰で箱を眺めている

それでも時たま貝の蓋が少しだけ開くように
細い隙間から一本の光りのすじが
こぼれてくる
セピアな空気の中の
セピアな蓄音機の姿をして
こぼれてしまう

今日はあの美しいベートーベンのインディーノになって
わたしは過去のかげろうを聞く

95.2.27 pm2:18


トロイメライ

2004年10月22日 | 90.1.8~95.7.17

陽が空を焼いて
郷愁の大きな手のひらが星の片側を撫でてゆく
気が付くと営みの上には鈍重の巨大な幕が降りて
人々の心はシーツの柔らかさに向かって流れ出す
鳥はもはや黒い一点の影になって
木は家路への道しるべ
背中の丸くなった街の
火の消え入りそうな夕暮れ
脳の中
トロイメライは流れる
街は心に同化し
西の夕焼けと東の夜の色は強まり
頭の中をカラにする
それは許しの余韻
天空をいざなう愛のぬくもり
想いの瞳は
あの人
うたっているのは、あの人
「もういいよ」
いつかわたしの中にも流れてくるのか

トロイメライ
夕暮れの空
そのあたたかな陽の色
やさしいやさしい
愛の手のひら

95.2.22 am5;00


闇夜の病原体

2004年10月22日 | 90.1.8~95.7.17
わたしに
現実性を投入する時
健康な日常性・社会性を要求する時
心は死へ向かう
自ら現実・日常・社会・対人を排除している時
のたうつようにここに居るが
とても33才のまともな人間の姿ではなく
子供には悪影響を与えるばかり
わたしは
闇夜の病原体です。

95.2.7 am8:30


銀色の顔

2004年10月22日 | 90.1.8~95.7.17
心を守る術を知らないから
陽の降り注ぐ昼のざわめきは
攻撃だ
明る過ぎる太陽を何の臆面もなく無意識に享受して
自分の心の健康さそのありがたさをおそらく知ってはいないであろう人々にとっては当たり前過ぎる活動の時間帯は
わたしの神経をどこまでもチクチク刺し続けて
昼の光りに照らされた人々の眩しい笑顔に
消耗しているエネルギーは更に吸い取られてゆく
外を一回りするだけで気持ちは萎えて
倦怠が胸いっぱい広がる
すぐに疲労してわたしは何より
外界から遮断されたひと気のないこの暗い部屋へ辿り着きたい
ひとつの会話もいらない
人々の顔を見ずにすむこの部屋の昼の孤独に
息を吐く
人々の会話も人々の笑顔も
わたしの心の目には硬い硬い銀色に光るヨロイカブトのぎこちなさで
意味が解からない
笑った顔のその口もとに出来る笑顔のシワの一つ一つは
紐で動かされるあやつり人形の彫刻された刻みのようで
なんと不可解な眺めだろう
笑った顔の中に歴然と位置するその目の裏側には
どれだけのpureな笑顔が存在しているのか
不安で不信でたまらない
何者をも貫き通すその無遠慮な明る過ぎる笑い声を聞いていると
いよいよ訳が解からなくなってただ悲鳴を上げてそこから逃げたい
人々はいったい心の上に何枚の防御服を着ているのか
決して自ら意識の上にはのぼってはこないだろう
だがわたしは相変わらず心をヒリヒリさせて
何も着る術を持たない裸の神経を曝している
この世に在ってこの世に相容れない無防備の神経をどうすることもできずに
心はいつも虚空を見ている

人々の笑顔は本当に銀色だ
銀色同士でいったい何を通じ合っているのだろうか

94.12.20 pm 1:40