詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

依るもの

2015年11月13日 | 深い海 2015

巡り続ける血が無ければ腐敗するただの肉の塊なのに
嗚呼なんて温かく柔らかく愛しい体なのだろう

小ちゃいだけの丸い肉なのに
抱いた瞬間誰よりもわたしを心底温めてくれる

その温かさに触れている時は思考も要らず
思い煩いも感情の軋轢も確執もトグロが絡まりあって石化した自身の圧力に押しつぶされてペチャンコに潰れたカタチの無い時の止まった自分という一枚の紙も
悩みも迷いも苦悩も絶望も暗黒も
要らない

要らない
なんにも要らない

ただ温かく
柔らかく
無垢な体と魂が確かに存在している
血が巡っているというだけで

わたしは抱きながらいだかれる
触れ合う皮膚を介在して伝わるのは本能の慰めだ
言葉も要らず
眼を見つめ合い感じ合い了解し合う

わたしを拠り所にするその小さな命に
わたしが依る

わたしはいつだって
抱くものが欲しいらしい
自分がいだかれたいが為に

温かく
柔らかく
無償の
魂だ。

2015.11.13 am4:16


CONTRABASS

2015年11月10日 | 音の前 contrablue

わたしを底の底で慰めるのはやっぱり
その音に他ならない
愕然とする程に

その音の中に心身を浸し
わたしという泡沫の粗末な霊長目ヒト科の生き物の内奥までもが
弾け散る光りの粒子と共に開け放たれる

その音が
根の深すぎる
絡まり合い過ぎる
八重幾重に重なり合った硬い質量さえ感じる最早魍魎と化したわたしの人生のあらゆるガラクタの
一番下に圧縮されたか細く弱く消え入りそうになりながらも辛うじて一本の琴線を
満たす

涙に潤われて一つ
大きな息をする

まるで
未熟過ぎる子供さながら
その音のたおやかな丸みから滲み出た細い細い一条の雨粒の軌跡に魅入られて
わたしはまだ生きていていいんだよねと
確認できる

・・・ わたしはまだ 生きていていいんだよね ・・・

そう
生きていていいんだよ

だってこんなにも
その音が好きだから。

2015,11.10 am6:31