詩のノォト fossil in blue

生涯にわたる詩のブログ、生と死に揺らぐ詩、精神の暗く重い音のない叫びの詩

石。

2015年12月23日 | 深い海 2015

わたしに一つ、石をください
手のひらに乗せて、温かく握れるくらいの
白い
石を

きみの手から直接
わたしにください
できればその
海辺で

彼の人の思い出も
きみへの敬愛も
わたしは同時にその白い石に込めて
抱きしめたい

二つの爽やかな旋律が
それぞれ自由に線となり、踊り、流れ、宙に弾んで
水色の、白の、軌跡を
わたしは目を細め眺める

潮の香りも
頬をなぞる心地の良い風も
雲間からもれ差す淡い光りの一筋も
みんな青色の音の要素になってわたしは安堵し、前へ

石をください
わたしに、石を
それは変わらない
愛の塊り。

2015.12.24 am0:17






 

 

 


依るもの

2015年11月13日 | 深い海 2015

巡り続ける血が無ければ腐敗するただの肉の塊なのに
嗚呼なんて温かく柔らかく愛しい体なのだろう

小ちゃいだけの丸い肉なのに
抱いた瞬間誰よりもわたしを心底温めてくれる

その温かさに触れている時は思考も要らず
思い煩いも感情の軋轢も確執もトグロが絡まりあって石化した自身の圧力に押しつぶされてペチャンコに潰れたカタチの無い時の止まった自分という一枚の紙も
悩みも迷いも苦悩も絶望も暗黒も
要らない

要らない
なんにも要らない

ただ温かく
柔らかく
無垢な体と魂が確かに存在している
血が巡っているというだけで

わたしは抱きながらいだかれる
触れ合う皮膚を介在して伝わるのは本能の慰めだ
言葉も要らず
眼を見つめ合い感じ合い了解し合う

わたしを拠り所にするその小さな命に
わたしが依る

わたしはいつだって
抱くものが欲しいらしい
自分がいだかれたいが為に

温かく
柔らかく
無償の
魂だ。

2015.11.13 am4:16


ループ

2015年09月15日 | 深い海 2015

終わっているのに現状を維持してゆく
終わっているのに

微塵の漏れもなく知り尽くしている
終わっていることを

鉛に同化して
重い
手も、足も、身も、心も

圏内も
外も
時間も
身も
心も
もう
終わっている

ただ経過を重ねて
カレンダーの日かずを消化してゆく
永く先の見えない
消耗

死ぬまでの緩慢な
道行き

その中での
一日の中のほんの少しの時間
コンバスを弾いている
座っているだけのわたしの元へ勝手に寄って来る猫たちとそれぞれに小競り合いをして
触って
一緒に寝る

思い返せば三つの頃には
終わっていた
それからの50年以上でわたしは疲れた
人生ということに

三つの頃に既に
今と変わらないわたしが居た

終わっているのに続けて来た
終わっているけど続けて来た

随分とやってきた
50年以上も
わたしという個においての
浮き草のような
人生
という泡沫を

終わっているということと子供時代が始まる前にしっかりと脳で感受して
そのまま今日のこの時点まで

飽きた
もう
うんざりも百乗だ

悔いなどという立派なものはわたしの辞書には無い
始まる前に終わっている者に
プロセスもピリオドも無い

全てはテレビ画面を横切る走査線上の一点にしか過ぎず
延々と
繰り返す

糞みたいな
果ての無い
ループだ。

2015.9.15. pm6:15

 


 


硬い部屋

2015年09月14日 | 深い海 2015

生き急ぐオンナはたったそれだけのことで嬉しい
人知れず涙ぐむ
風速一センチに満たないフィールドの揺れに独りで落ちて
もう、これでいいかも、とさえ思い
涙ぐむ
誰も知らない
当人でさえも

生き急ぐオンナの生態はヨレヨレで
指一本の刺激で倒れこむ
本来外の世界へなど出られないはずを意識でハッキリ自覚した上で敢えて晒さざるを得ない
充分過ぎ誰よりも解っている
たとえ時速一センチのアテンションでさえ
いっそ殺してくれと言いたくなる程に

笑顔で
耐える

生き急ぐオンナの自意識は一瞬で砂と埃と光源の無い地中深くのコンクリートの箱に変貌するいつまで経っても風雨に剥き出しのテラテラのアンテナ
0.1ミリの風圧で壊れる

求めるのは
孤独
絶望
セルフネグレクト

緘黙沈潜の
面消去

だって
ベテランだもの
筋金
凄いもの

生き急ぐオンナには孤独も絶望も自虐も安堵に過ぎず
人生の営みが終わる時を夢み
人生分の一日を終わらせるため

全てを無視して
横たわる。


2015.9.14 pm11:58


愛の夢 O lieb

2015年07月28日 | 深い海 2015

                   詩 ao
                   曲 リスト

O lieb O lieb 死の涙降り 終(つい)え逝くから
O lieb O lieb 遅き思い 嘆きの前に

ひと筋でも 光りあれば
その胸を開けて 悔いなく 愛の中へ

O lieb O lieb 命短く 終え逝くから 
O lieb O lieb 生きてる今

ただ その 愛を生きて

2015.7.27 am11:50


体現

2015年07月22日 | 深い海 2015

ポトポトポトポト落ちる肉
溶けて流れて床に着く
落ちないように上を見る
痺れた感から芽が伸びる

それはやっぱり身の丈15センチにしかならないライムグリーンの二葉
日の出と共に草臥れて頭のテッペンから蒸発した粒子が空に向かって上がっていく

青い青い空ですか
広い広い空ですか
生を無にする空ですよ
人を蒸発させるだけ

休息の無い脳と
休息出来ない心臓と
休息を学習しない内奥と
休息を遺棄した此処

キャパは
一本の縫い針が刺さっただけで弾ける
ビニールテープでペタペタ ペタペタ
剥がれては貼り剥がれては貼り

元の姿は
直径7ミリの角の無いシールになって
地面に溶けて
一体化して

誰にも復元出来ない
それで続けるだけ
石が溶けるのは
焼かれて死ぬ時だけです

見上げる空は永遠でしかなく
歩けない足は心にプレスされ
痛い痛い
ただの肉の塊。

2015.7.22 pm3:00










幻惑の月

2015年06月05日 | 深い海 2015

ちょっと狂いそうな
真っ赤な月
真っ赤な月と帰った


肥大して
気味悪く
気持ち悪く
美しく
幻惑

入りたい
覚えたい
記憶の
辺縁か
中心か

座りたい時に
腰掛けたい
椅子は
一脚で

一緒に
眠れればいい
添い寝して
いだかれて
撫でられて
子供にならせて

既に
消えて・・・。

2015.5.31 am0:45


哀しい月

2015年05月02日 | 深い海 2015

青い月と帰りました
疾風に顔突っ込んで

なんて美しい
暗黒の空の点の、ガラス越しの青い月

ほんの数分の
破綻へ向かう道行き

同行
絶望

孤独と絶望は
生きる浮き草

それがないと
きっと

こんな不甲斐ないキャパは
破裂

虚空の
月見る。

2015.5.2 pm1:34