Annabel's Private Cooking Classあなべるお菓子教室 ~ ” こころ豊かな暮らし ”

あなべるお菓子教室はコロナで終了となりましたが、これからも体に良い食べ物を紹介していくつもりです。どうぞご期待ください。

ダマスクローズ 79

2020年07月04日 | ダマスクローズをさがして — Ⅱ

      

       パート1、ビジョン1、『神の業(わざ)の書』13thのルッカ写本から。

This illumination introduces Part 1, Vision 1 of Hildegard von Bingen's final visionary writing, the Liber Divinorum Operum" Hildegard completed the ca.1173, but this illumination comes from a 13th century copy known as the Lucca manuscript.

『神の業(わざ)の書』から;

『この作品は、神の姿を詳細にしかも、人間の形で描いたものです。神の燃えるような生命の呼び、創造と創造物の間に起きるさまざまな軋轢、神は人間を神に似せた姿で創られたことをあらわしています。献身的な信仰は神の愛をも包み込みます。これにより、神は三位一体であると理解されるのです。信仰の功徳によって、神ご自身が人間を天国へと導かれるのです。神と隣人の愛は切り離せず、信仰の美徳によって強められます。謙虚な献身をもって神に服し、聖霊の助けを借りることのできた者は、自分の内と悪魔により堕落させられた両方に打ち勝つことができます。天使たちは正義のおこないを喜び、神が全能であることを讃えるのです。

宇宙は神の中に永遠に存在し、神はそれぞれを数、順序、場所、時間で区別して創造されたのです。正義を捨てた悪魔と天使たちは、かつて大きな力を持っていたのですが、彼らの忘恩、高慢のために今のような状態に変えられたのです。だから、天の許しがない限り何もすることができないのです。』

 

ヒルデガルトが書いた絵を4枚見ていただきましたが、如何でしたでしょうか。

ヒルデガルトには予知能力と幻視能力があったと言われていますが、あなたはどのように思われましたでしょうか。幻視した光景をこのような絵にするには彼女にどのような力が働いたのでしょうか。

記憶の底に光景が畳み込まれていなければ描けない絵です。しっかりと、ハッキリと、頭の中にこの光景が刻み込まれていたのでしょう。このことと彼女の病気とは関係があるのでしょうか。子供のころから幻視を体現していたという彼女は、レビー小体型異常の可能性はなさそうですし、驚異的な映像記憶能力の持ち主でもないようです。テンカンによる有形性幻視のせいでしょうか。ともあれ、何をもって彼女に、生涯にわたって『私には幻視、予知能力があると』言わしめたのでしょう。(これから述べる内容に異論のある方もおられるでしょう。しかし私は、人間には予知能力も幻視能力もないと考えています。啓示と思われたのは、単なる思い込みでしょう。絵は霊感、閃きを自分の脳内に蓄積しておき、そのあとは描く過程で沸き起こる閃き(インスピレーション)で絵を完成させたと思っています)

注目すべきは、絵に分厚い金箔を用いている点です。身分の高い貴族出身であったことに強い自負心があったようです。そのことが「幻視能力がある」という思い込みを生涯貫けた理由の一つでもあります。

「因みにヒルデガルトは、神聖ローマ帝国のドイツ王国のマインツ大司教区・ベルマースハイム(Bermersheim)で、地方貴族である父ヒルデベルト(Hildebert)、母メヒティルト(Mechtild)の10番目の子供として生まれ、1106年から同大司教区オーデルンハイム(Odernheim)のディジボーデンベルク(Disibodenberg)にあるベネディクト会系男子修道院ザンクト・ディジボードの近くで隠遁生活を送る修道女ユッタ・フォン・シュポンハイム(Jutta von Sponheim)に育てられます。ユッタはディジボーデンベルク近くのシュポンハイム城の貴族(シュポンハイム伯シュテファン1世の娘)で、兄弟にケルン大司教フーゴー・フォン・シュポンハイム(de:Hugo von Sponheim)がいます。」 (Wikiから)

      

                   プサルテリウム

https://www.alamy.com/stock-photo-medieval-historical-re-enactment-woman-playing-psaltery-music-musical-19332608.html 弦の数が目まぐるしく変化した楽器なので当時のものとは少し形が異なるかも知れませんが、ヒルデガルトはプサルテリウムをよく演奏していたといわれています。

 

しかも当時は、12世紀頃にアイルランド人でベネディクト会系の修道士であったマルクスがラテン語で執筆した異世界幻視譚である“トゥヌクダルスの幻視:Visio Tnugdali” が世に出るなどの幻視ブームの真っただ中でもありました。

『トヌグダルスの幻視』からその一部分を引用すると、『トゥヌクダルスが天使の後を追うと、光に満ちた場所に出た。そこには高い壁があり、その壁で風雨を避ける大勢の男女がいた。天使は、彼らは悪人だが極悪人ではなく、貧者に充分な施しを与えなかったもの達で、数年間にここで風雨を耐えたのちにより良い場所へ導かれると言った。』物語はトゥヌクダルスが発作で倒れてから、天使に導かれて死後の世界を幻視し、目覚めるという異世界幻視譚の構成になっています。

                                

『トゥヌクダルスの幻視』地獄の口 強欲とその懲罰について;守護聖人がトゥヌクダルスに向かって巨大な獣、アケロンの口を指す。片方の巨人は頭を下にした状態で柱のようになっています。

Hell's Mouth, by Simon Marmion, from the Getty ManuscriptBeast Acheron etwa 147

 

『トゥヌクダルスは、山よりも巨大な獣(アケロン)を見る。強欲な者を飲み込む巨大な獣の口は、二人の巨人(フェルグシウスとコナルス))によって支えられており、三つの門のようになっていた。天使が去るとトゥヌクダルスの魂は悪霊たちによって獣の腹に入れられ、さまざまな獣や怪物による攻撃、悪霊の打擲、炎、寒さ、悪臭で拷問を受けた。トゥヌクダルスが罪を思い知ると獣の外に出され、天使と再会した。』 

     

St Patrick tramples on a snake in Purgatory, in St Patrick’s Purgatory. England, 1451. British Library, Royal MS 17 B XLIII, f. 132v. 悪魔と魂に囲まれた聖パトリック。15世紀半ばにイギリスで出版。Royal 17 B. XLIII、f.132v から引用しました。

 

又同じ頃、1186年から1190年の間には、聖パトリキウスの煉獄譚 ( Tractatus de Purgatorio Sancti Patricii、中世ラテン語で記された幻視譚 ) が出ます。

「聖パトリキウスの煉獄」は、臨死体験を通して、異界を訪問し、無数の悪霊の襲来、灼熱、悪臭、寒冷、虫、蛇、猛獣が跋扈する煉獄で、執拗な拷問と懲罰を受けた後、甘美にして至福の天国を見学し、現世へと帰還する物語です。

 

ヒルデガルトが再び注目を集めたのは、彼女が亡くなってから実に760年を経た第二次世界大戦時です。『薬草学の書』がオーストリアの軍医ゴットフリートヘルツカ( Gottfried Hertzka、ヒルデガルト医学の創始者. 1913/10/12—1997/3/6 )により再評価されることにより世に出たのです。一時は名を知られていたヒルデガルトですが、幻視を誰も体現することはできません。亡くなればすぐに忘れ去られるのは当然のことだったのでしょう。

 

 

 


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