台風体験記。
9月24日(土) 未明から激しい雷雨。短時間に9月1ヶ月分を上回る雨量だが、七夕豪雨に比べると8割り程度。午前6時、雨は止んだがむかいの公園ののり面が崩壊しているのを発見。この日は囲碁クラブがある予定だったが、会場の公民館に災害対策本部(袖師地区)がおかれているものと思って、中止にする。囲碁クラブのMさんが土砂崩れ見学ついでにうちに寄って自家製野菜をたくさんプレゼントしてくれた(あとで調理に悩む)。やがて断水していることに気づく。台風の最中に断水を予想しなければいけなかった。テレビでもラジオでも静岡市の被害状況はまったく報道されない。ネットでもほとんど取り上げられていない。断水がいつまで続くのか、市役所の見解はどうなっているのか。
追:台風直後で目の前が土砂崩れしたというのにこの日はZOOMがいくつかあり、それを全部受講し終わって行動を開始したので出遅れてしまった。こんなときでも勉強したいという気持ちが強く、世間が大騒ぎしていることに気づかない。結局人間は自分の心で識ったことしかわかりえない。
午後3時から清水区内の9箇所で給水車が来るということで、2時半ごろに行った人がいて、車が来たのは3時半、そのころには長蛇の列になったそうだ。私は午後5時に行ったときに諦め、再度6時に行って3時間並んで水をもらい、夜道を自転車でふらつきながら12リットルの水を運んで帰る。トイレの水は浴槽の残り湯を使うのでしばらくは持つ。洗濯はできないし、お風呂に入れない、茶碗も洗えない。飲料水は備蓄のペットボトルがある。
追:給水車情報は公式には一切なく、友人からの電話によるのみ。この段階でしっかりした人はみなポリタンクやペットボトルの買い出しに大移動している。
25日(日)断水が深刻になる。いちばん困るのは市役所の動きがまったくわからないこと。あとで知ったのだが、静岡市長の言い分として、初日は自分が市長として市役所に詰めていなくてはならず、日曜日に興津川取水口の現場を視察して状況を知ったとのこと。ここで丸一日無駄な時間。
追:うちの前の土砂崩れなどささやかな事件で、ちょっと足を伸ばせば床上浸水の壊滅的被害を受けたところがあちこちにあった。断水はきついがそれはいつかは解消するけれど浸水被害はたまらない。
26日(月)市役所はこの日ようやく対策会議の第1回目を始めたらしい。遅すぎる。自衛隊の救援要請が出され、県、国、と進んだ。たぶんこの日の夜中から火曜日の未明にかけて自衛隊が取水口の詰まりを徹夜で除去してくれたのだろう。この作業をもう1日早くすることは可能だったはずだ。もし葵区に断水があったら清水区とは対応が異なっていたのではないか。市は人力では難しい、重機が入らない、などと言い訳しつつ、自衛隊はたった6時間半でやってしまった。さっさと自衛隊にお願いすべきだった。しかも役所は見通しがまったくたたないなどと言うものだから、不安にかられて昼間、葵区の実家へ車で出かけ、ありったけの容器に水を入れて持ち帰る(65リットル)。日曜日の時点でみなさん葵区へ買い出しに行ったらしく、水タンクなどはみんな売り切れているという。月曜日も道路は買い出しの車で渋滞している。
27日(火)葵区の幼馴染から、入浴と洗濯をどうぞとお誘いを受け、お言葉に甘えてふたりで出かけ、さらにお昼をご馳走になり、夕飯のお弁当までいただいた。あれ以来初めてシャンプーをすることができた。じつはこの日水道栓から水が出てくることに気がついた。まだ工業用水らしいが、とにかくトイレ用などの生活用水が使えさえすれば助かる。2日後には実家でお風呂をもらう予定だったが、水が出てきたのでもうだいじょうぶ、と辞退した。
夕方、うちから市へ土砂崩れがあったことを通報した。真ん前のお宅は二世帯住宅で何人もいるはずなのでうちから言うのは遠慮していたのだが、他に深刻な現場がたくさんあって手が回らないのか、警察、消防、自治会、いずれも音沙汰なしで心配になってきたのでおせっかいながら電話をかけたところ、30分後くらいには市役所がやってきた。
追:水が出るというだけでどんなにありがたいか。これからは大きな地震や台風があったときはすみやかに浴槽に水を張り、生活用水を貯めること。冷凍食品の買いだめはしない。飲水の確保は義務。助け合いの精神が大切。
28日(水)このころ混乱したのはネットでの注文したものが届いたり届かなかったり。災害見舞にあちこちから支援物資をネットで注文していただいたのだが、とくにAmazonがちょっとおかしい。Aさんが送ったという水3ケースがAmazon側から配送が難しいのでキャンセルされてしまったという。Bさんからもポリタンク、台車、簡易シャワーを送ったつもりが、キャンセルされたという連絡が入る。ところがこれらはこのあと、三々五々結局配送されてきたのだ。Bさんの分は全部受け取ったけれど、Aさんの水は、キャンセルされというので別途おうちCOOPで3ケース自分で注文したし、水道も復旧しつつあるのでいまさら不要。それなのに、土曜日までに1ケースずつバラバラに届いて3回も受け取り拒否するはめになった。配送トラブルはすべてヤマト。日本郵便は問題がなかった。Amazonでいうところの「キャンセル」は「すぐには出荷できない」という意味かもしれない。ご近所で井戸水のあるところから、どうぞ使って、と言われ、本当に助かった。
追:佐川急便は、センターそのものが水に浸かって、車も荷物もやられたらしい。届かないわけだ。
29日(木)夕方興津図書館に本を借りに行ったとき、給水車を発見。だれももらっている人がいない。日頃からポリタンクを車に積んでおく必要性を感じる。
30日(金)家族から支援物資のポリタンクが届いたので、これを持って興津公民館へ行ったら、また給水車(川崎市水道局)が来ていて、係の人もたくさんいて、ご親切にポリタンク2つとさらにサントリー天然水1ケースをもらって、車に運んでいただき大助かり。土砂崩れ現場の補修作業が本格的に始まる。
追:せっかく遠いところから給水活動のために来てくれたのに、テレビでも新聞でも何も報道しないので知らない人がほとんどではないかと思う。
10月1日(土)。土砂崩れ現場、遊歩道に人が通れるように土砂を取り除き、土のうを積んだ。フェンスなどはまた別の施工業者が担当するそうだ。
床上浸水や道路が決壊したところもあるので、このあたりは全然ましなほうで、災害と言えるかどうかもわからないけど、断水はまったく想定外。水が出ないのはこんなに困るものだとは。熱海の土砂災害に比べると、震度8と震度4くらいの差があると思ううが、教訓として得たことは、日頃からの人付き合いの大切さ、水対策など。床屋さんも和菓子屋さんも歯医者さんもみんな水道が使えないので休業だった。やっと長い1週間が終わった。
ぐだぐだと愚痴を連ねてしまったが、頭はボーッとしているし、少しは勉強をしなければならないと思い直す。災害時、まったく学習意欲をなくしていた。色即是空。疲れたのでしばらく休養します。