もうすぐ8月。
この時期になると、必ず思い出す人がいる。
同い年の、それはそれは素敵な女性。
ずっと前の夏。
私は、いろいろなことがありすぎて、
苦しみぬいていた。
そのときに「久しぶり~、元気?」と、
かかってきた、彼女からの電話。
不思議なことに、昔から、
彼女にだけは、素直に話せた。
時には、何年と会わないこともあったのに、
声を聞いた途端、胸につかえた思いを、
片っ端から吐き出せた。
まだ携帯なんてなかったから、
電話機の横にべったりと膝を抱えて座り込み、
受話器のコードを指でもてあそびながら、
私はぼそぼそと彼女に話をした。
彼女はただ、聞いてくれた。
そして、聞き終わったあとは、
またたわいもないお喋りをした。
でも、気がつくと、
心が軽くなっていた。
彼女は不思議な人だった。
普段、行き来がないのに、
なにか私が困ったり苦しんだりしていると、
びっくりするほど、ぴったりのタイミングで電話をくれた。
そして必ず、私の心を緩めてくれた。
彼女がいなくなって4年。
亡くなったのは春なのに、
思い出すのは決まって、夏。
彼女の闘病中、
どんな言葉を送ればいいのかと、
PCの前で悩みに悩んだ。
そのままの気持ちを伝えたら、
別れの言葉に聞こえそうで、
「死」という言葉を、わざと遠くに押しやって、
知らんぷりして、元気のいいメールを送った。
きっちりと自分の死と対峙して、
戦っている彼女に比べて、
なんてだらしなく、勇気がなかったんだろう。
あなたは立派すぎたのよ。
もっと、わがままに、みんなに迷惑かけて、
泣いたり怒ったりしてよかったのよ。
それで2人して、
どーしようもない迷惑ばあさんになって、
さんざん長生きしてやればよかったのよ。
元気なころ、私は彼女によく、
「私の守護神さま!」と言っていた。
実際、困ったときに必ず現れる、なんて、
神業としか思えなかった。
「お互い様じゃない」と笑っていたけれど、
本当に彼女は守護神だったのかも、と、
思うときがある。
そして、
そろそろ私に頼るの、やめなさい。
なんて、消えてしまったのかも、と。
ってことは、きっと今も見てるんだろうな。
笑いながら。
もっち・・・変わらないなぁ、って。